第4話 クソジジイ悪臭と能力確認
「順応するの早いのぉ~」
俺がエルフのイリアさんの家から出て数分。
俺を転生させた張本人が––缶ビールを飲みながら、俺に近寄ってくる。
「うっ、くせぇ」
「臭いとはなんじゃ」
一歩一歩近寄ってくるジジイから放たれる臭いは……アルコールを大量摂取して、体を洗ってない獣のような臭いだった。
俺はさっきまで飲んでいたダージリン茶を戻しそうになりつつ、ジジイに問い詰めた。
「貴方のせいで、今わけわかんない事になってるんですけど!?」
老人に優しくしろとか言うけど、こんな状況で優しくなんてできるわけないだろ。
ジジイはそんな俺を嘲笑うかのように、酒をもう一度飲み––
「じゃあ、君はそのまま死んでもよかったかの?好きな女子の股を割ることもできないような男のまま、後悔する航海してもいいってことかの?」
「…う」
ジジイは反論できない俺を見て、高笑いをする。
「はっはっは!ワシが面白い話をしてやろうかのぉ」
「…なんだ?」
「君のボロボロになった体を見て、泣き崩れておったぞ。その後、その子は彼氏らしき……ありゃ、体の関係だけかもしれぬ奴じゃがー…連絡を断ったようじゃ」
「……それってつまり?」
「チャンスはあったかもしれぬな」
「マジか!」
辺りは真っ暗な中、俺の声が鳴り響いた。
ジジイはそんな俺を見て、再度酒を飲み––
「ま、この世界を楽しみなされ。この世界の女子も全ていい子じゃろ?」
否定もできないのが悔しい。王女もメイドもエルフもエロ漫画にでてもいいレベルのクオリティだもん。
「まあ、ワシは…そうじゃな。色々な楽しみ方をしたいからのぉ~」
俺が今まで出会った人を思い出していると––ジジイは俺の尻を揉んできた。
「おい!殴るぞ!?」
「おお~怖い怖い」
揉まれたことに驚き、殴りかかろうとする俺との距離をジジイはとり––
「この世界は素晴らしいものじゃよ。それに、おぬしが頑張ればきっとより良い事が起きるはずじゃ」
その言葉を残し、消え去った。
「なんだよ、アイツ…クソジジイめ…」
そう消えた先を見つめながら呟き、尻に残った暖かい感触を自分の手で思いっきり叩いた。
……本当に何だ何だか理解はできない。でも、俺は今やるべき事を優先することにシフトチェンジせざるを得ない。
「……早く帰らなきゃ」
時間はわからないが、きっと19時はとっくに過ぎているはずだ。
朝、王女のカレンに出掛けることを言った際「ルーナに美味しい物作らせておきますので早く帰ってきてくださいね」と言っていたっけ。
……門限とかあるんかな?元の世界では、一人だったから久しぶりに焦る。
「そういえば…」
俺は自身の能力(?)でもある、応援の力を試していない事を思い出した。
この能力って、誰かを応援すればその人や動物とかの力が増す……らしいよね。
近くに……あ、自転車がある。
俺はその自転車を悪いと思いながらも拝借し、ダメ元と思いながら––
「自転車がんばれぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!!いっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
大きな声で叫んだ。
すると、自転車に俺の声が吸収されていき“300”という数字が表示された。
「…これ、漕いだらどうなるんだろう……」
そんな不安ももちつつ、俺は自転車をこいだ。
すると、通常の自転車の速度の倍以上––原付バイク程度の出力で走り出した。
「うぇ!?え?え??」
一瞬だけ、ペダルをこいだだけなのに––グングンとスピードは加速していく。
前の世界では免許なんて持っていない俺は当然焦る……ちびったかもしれない。
それでも、幸いだったのは––誰も歩いていなかったことだ。
俺は、そんな幸運の中で体感15分くらいで王女の家に戻ることができた。
家に着いた今でも未だにドキドキとしている。
ドアを開けると、更に美人の2人が出迎えてくれて––ドキドキは膨張する。
「お待ちしてましたよ~おかえりなさい」
「遅くなってすいません」
「大丈夫ですよ。さ、メイドのルーナの手料理を食べましょ」
手を引く、王女のカレンの顔は人懐っこさがあって可愛く見えた。
食堂へ移動中に、俺は思い出した。
「あ、そうだ。今日エルフから荷物もらってて」
「エルフですか?」
「はい。これなんですけど」
俺は、自転車の荷台から下ろしていた荷物を王女に見せた。
すると、白い布が荷物を包んでいた布の中から現れ––その中身は、大きな鏡だった。
「わぁ!素敵!!」
王女は自身の姿をヒラリと舞うように回る。可愛い。
しかし、その鏡は王女様の姿がドンドンと歪にしていった。
「……はぁ~、やっとつながりましたか」
その歪になった鏡から……エルフのイリアさんが出てきたのだ。
「え!?」「え!?」
俺と王女が初めてハモるくらいに驚いて、尻もちを同時についた。
「ごめんなさい!」
そんな2人の姿を見たエルフのイリアさんは俺達に手を差し伸べた。
「場所をつなげて置いた方が後々便利だと思いまして」
起こしながら、驚かした理由を告げてくれた。
「なるほど……」
何が何かわからないけど、俺の尻の感触が王女のルーナさんの感触へと変わったのでよしとしよう。
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