第3話 エルフの能力と協力
この世界は希望に満ち溢れている。
すれ違う人や色々な種族は––俺に気さくに挨拶してくれる。
そして、俺の事を根掘り葉掘り聞いてくる。
「あー、大丈夫です」
昔によく言ってた田舎のおばあちゃんの家みたいな……凄くお節介だけど、自分を認めてくれているような感覚もあって安心できた。
「さーって、まずは現状確認だよな」
王女のカレンが言っていた“ヤキュウ”というのも気になるが……この世界を全く知らないよりは、知っていたほうが確実に良いと思う。
なので、俺はこの国といわれている場所の郊外まで足を運んだ。
足を運んでる間も––この国は自然が豊かなことを証明するかのように、たくさんの鳥や虫等が音楽を奏でてくれていた。
「案外、小さい国なんだな……」
歩いて1時間もしないうちに、その国の境目にあたる場所まで来てしまった。
隣国や敵国から守るために––普通は壁などを形成し、国が転覆しないようにするはずなのだが……ここにはそんなのは全くなかった。
「あれ…?こんなとこで何をしているのですか?」
地面に書かれている“国境です”という文字らしきものを見つめていると––耳が尖っている、体の大きな女性が俺に話かけてきた。
「あ、どうも」
「どうも」
……エルフ…?だよな。
耳が尖っていて、俺よりも多少身長が高いし……胸でかすぎじゃん。
確か、エルフって人間の寿命の何倍も生きているんだよね?
「…フフ、あまり変な妄想していると嫌われちゃいますよ?」
俺に話しかけたエルフはそう不敵に笑うと、俺の手を取った。
「さ、せっかくなので家に来てくださいな」
「え?」
「この世界に転生されたんでしょ?」
「よくわかりますね」
「フフ、私は何でも知っているんですよ?」
「流石、エルフ……」
そんな会話をしていると、森の中に小さな一軒家が出てきた。
「さ、座ってお話をしましょ?」
「え…あ、はい」
その家へと案内され、座るように促されると––エルフは見た事のないお茶を出し、向かいに座った。
これ…飲めるんだろうか。
「安心してください。貴方の世界では“ダージリン”っていうお茶ですから」
「……俺の心読めるんですか?」
「女性には秘密がある方が魅力的って言いますからね?」
そう言って、エルフは“シーッ”というポーズをとった。
人間がエルフを好きになるっていう漫画とかあるけど……この顔を見たら少し理解できた。
そこからは、俺は自分の口で今までの経緯を話した。
すると、エルフは「……そっか」なんて小さく言いつつ、小気味よい相槌を打ってくれて––俺の口はどんどんと言葉を発していく。あ、お茶も美味しい。
「急にこの世界にクソジジ…あ、おじさんに飛ばされたんですよ。“採用”だの“チャンスをやろう”とか言われて……で、この世界に来たら『応援団長になれ』ですよ?そうじゃなきゃ、国はつぶれるみたいに言われて…」
「…タカシさんですっけ?この世界の事は王女様から聞いているのですよね」
「はい」
「では、私がその応援団に参加しますよ」
「……はい?」
「事実、この国の崩壊は近年で稀に見る程危機的状況です。私自体は森さえあれば生きていけますが……王女や王女の両親様には何度も助けていただいたので、力になりたいのです」
「ありがたいですけど…大丈夫ですか?」
エルフはあまり目立たないように生きていくって聞いたことあるし、第一体格は大きいけど––応援には向かない気がする。
「大丈夫です。私達の能力は……そうだ、タカシさんの世界に変えて話しますね?RPGゲームっていうのがありますよね?勇者、魔導士…色々な種類がいます。勿論、この国にも勇者様達は健在ですけど、そのゲームの世界って“数値化”されたモノと“言語化”された気持ち等がありますよね?」
俺は当時流行ったRPGゲームすらしたことないけど……そんなものなのか?
「“ガンガンいこうぜ!”“命大事に”とか……指示にも近い心情が、そのゲームの鍵となっているわけです。私はその役目だと思っていただければいいかと」
「……?」
「相手の心を読んだり、伝えることができるのが私達エルフの特徴といえばいいのでしょうか」
「なるほど!」
納得した。だから、俺の名前とか色々と知ってたんだね。
でも、応援に向いているの?
「気持ちの共有っていうのは必須ではないですか?」
「確かに必要かもしれません」
「ヤキュウは全ての国で“サイン盗み”というのは禁止されているので、私ができることは限られてきちゃうんですけど」
「でも、力になってくれるなら有難いですけど…」
本当にそんなことができるのか?
『フフ、今タカシさんの脳内に直接語り掛けています……聞こえてますよね?』
うわ、めっちゃ気持ち悪い!
『酷いですね~……まあ、でも私の力はなんとなく把握できました?」
わかりました。
でも、なんでも有りな世界だよな。
「まあ、この世界や各々の国を作った神様の悪戯ですので」
少し苦笑いしたエルフは自らの口で呟いた。
「あ、そうだ。名前聞いてなかったですね」
俺は、今後一緒に働くことになるエルフに名前を聞いた。
「私の名前はイリアと申します」
「イリアさん…よろしくお願いいたします」
日本人らしく、挨拶をする。
すると、イリアさんは「よろしくお願いいたします」と丁寧に返してくれた。
そこからは、ゆっくりとした時間をイリアさんと過ごした。
この世界を創造した神様が変態なこと、ヤキュウっていうのは俺のいた世界とほぼ変わらないこと、国毎に勇者小屋があり所属する形でダンジョンに遠征に行くこと……王女からは聞けなかったことを全て話てくれた。
「あ、もうこんな時間ですね」
そんな時間も終わりを告げる、外は先ほどの晴天から赤く染まっていっていたのだ。
「ああ、帰らなきゃ」
「では、これを持って行ってください」
帰ろうとした俺に、イリアさんは大きな荷物を渡してきてくれた。
「これがあると、色々と便利なので」
不敵に笑ったイリアさんと大きな荷物に困惑しながらも––王女の住む家へと戻っていった。
その時だ––俺の目の前に––転生させた張本人のクソジジイがいたのだ。
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