第13話 【ギゼルside】おい、ナントカ男爵!

「ふう。無事に王都での用事を済ませられたな。後は我が領地に帰るだけだ。おっと、その前に護衛者を探さねば。手勢は多いに越したことはないからな。……ん?」


「おう、オッサン! ちょうどいいところにいるじゃねぇか。俺たちを護衛として雇わねぇか?」


「……は? ……何を言っているのだ、お主は」


「だから、俺たちを護衛にしろって言ってんだよ。護衛料は金貨2枚でいいぜ?」


「残念ながらお断りだ。そんな金があるのなら、もっと腕の立つ冒険者に払う。お主らみたいなチンピラに構っている暇はない。失礼するぞ」


「ああ!? 待ちやがれ!」


「儂の行く手を阻むか。さっきから無礼な奴だな」


 冒険者は実力主義だ。

 礼儀をわきまえない輩も多い。

 しかし貴族に対してここまで態度が大きい者は、さすがに珍しい。


「いいから、俺たちを雇いやがれ! 前にも護衛してやっただろうが!」


「……? ああ、そう言われてみれば、どこかで見た顔だな。確か、カイル君のパーティメンバーの……」


「やっと思い出したか! ナントカ男爵さんよぉ。だが一つ訂正があるな。俺はカイルのパーティメンバーじゃない。この俺ギゼルが、あいつのパーティリーダーなんだぜ」


「お主がパーティリーダーだったのか? 儂との交渉、他の護衛者との連携確認、それに諸々の対応まで全て彼がやっていたようだが……」


「あいつは足手まといのザコだからな。そういう雑用を全部任せてたんだよ」


「……カイル君も苦労しているようだな。それで、彼は今どこに? 彼と交渉できるのなら、護衛として雇うことを一考してやってもいい。お主みたいなチンピラでは話にならなくてな」


「ああん? 何だと、コラァ! 無能のカイルはなぁ、とっくにパーティを追放済みなんだよ!!」


「彼を追放だと……? 現実が見えていない無能はどちらなのか……」


「はぁ? ワケ分かんねぇこと言ってんじゃねぇぞ。ナントカ男爵さんよぉ」


「……儂の名前は『ゼノ=オルディオス』だ。オルディオス男爵家の当主である。お主にも名乗ったはずだが?」


「はぁ? 覚えてねぇな、んなこと。どうだっていいだろ。それより、早く依頼料を渡せよ。この俺が護衛してやるって言ってんだぜ? 判断がトロいオッサンめ」


「……なるほど。お主は貴族というものを知らないらしい。ならば、これ以上話しても無駄だな」


「なんだと?」


「……者ども! こやつらを引っ捕えよ! 王国貴族を貶める重罪人である!」


「「はっ!」」


「なっ!? 何だよ、お前らは! 離しやがれ! おい、ナントカ男爵!」


「こんなチンピラの顔はもう二度と見たくもない。儂が領地に帰るまで、王都の地下牢に入っておれ。いずれ裁判にかけられるだろう」


「ふざけんな! 俺はCランクの冒険者だぞ! こんなことしたら、タダじゃ済まねぇからな!」


「たかがCランクでずいぶんな口を聞くものだ。まぁいい。貴族への脅迫罪も追加だ。しばらくは日の当たらない場所で過ごすがいい」


 こうしてギゼル、そしてついてでパーティメンバーのリリサは、地下牢へと連行されたのであった。

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