第12話 【ギゼルside】俺たちに紹介できる依頼がない、だとぉ?

「なにぃ? 俺たちに紹介できる依頼がない、だとぉ? どういうことだよ、おい!」


「どうもこうもありませんよ。あなたたちが求めているような高報酬の依頼は、信用が大切です。あなたたちでは……」


「ふざけんなよ。俺たちはCランクだぜ?」


「行商の護衛依頼を受けられてはどうです? Cランク冒険者は重宝されますよ。逆に、貴族様や隊商クラスの護衛任務はあなたたちでは力不足です」


 冒険者ギルドの受付嬢は辟易していた。

 地方からここ王都にやって来たという2人組の冒険者が、依頼に関してゴネていたのだ。


(はあ……。よくいるんですよねぇ。地方で名を上げて、自信過剰な輩が。さすがにここまで酷いのは久しぶりですけど。こういうのは、最初が肝心です。強めの言葉であしらっておきましょう)


「はぁ? 俺たちは以前、ナントカ男爵から指名されて、護衛依頼を受けたことがあるんだがな」


「それは運が良かっただけでしょうね。そもそも、そのナントカ男爵というのは、どこのどなたなんです?」


「……それは、アレだ。あれだよ。ほら、有名じゃないか」


「依頼者の名前も覚えていないようでは、お話になりませんね。よくそれでCランクになれたものです」


「何だと、こらぁ!」


「はぁ……。あなたのようなチンピラをCランクに上げるなんて、地方ギルドの基準はどうなっているのでしょうか……。見たところ魔力や闘気量も大したことありませんし、たった2人ではできることも限られているでしょう。『格闘王』……スキルだけはそれなりですが、果たしてあなたのような人間が使いこなせているかどうか……」


「ちっ! もう我慢ならねぇ! ぶっ殺してやる!!」


「おーおー。職員に暴力ですか? これは問題ですね。衛兵を呼びましょうか? それとも、騎士団ですか? ギルドマスターでもいいですけど。これは困りましたねぇ」


「ぐっ……。もういい! ギルドなんざアテにならねぇ! こうなりゃ直接、ナントカ男爵に交渉してやらぁ!」


「は? ちょっと待ちなさい。仮にもCランク冒険者のあなたが問題を起こせば、当ギルドにもしわ寄せが……」


「ゴチャゴチャうるせぇ! このギゼル様の邪魔をするんじゃねえ!」


 ギゼルは受付嬢の声を無視して、冒険者ギルドを飛び出していくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る