第11話 【ギゼルside】王都への道中

 時は少し遡る。

 カイルがギゼルとリリサによりパーティを追放された翌日のことだ。


「ははっ。こんなシケた街ともおさらばだぜ!」


「まったくだわ! あんな奴が仲間だったなんて、信じられない!」


「足手まといがいなくなった今、俺たちを阻むものは何もない。さっさと王都に行くとするか」


「ええ。それにしても、あの男。本当に役に立たなかったわね」


「全くもって使えねえ野郎だったぜ」


「そうそう。荷物持ちすらまともにできないし」


「まあ、いいさ。次の街では、あいつの代わりになりそうな前衛を探すとしよう」


「賛成! あの男よりも強い人が見つかるといいけど!」


「大丈夫さ。そんな奴はいくらでもいる。『格闘王』の俺に『魔術師』のお前がいれば、加入希望者は殺到するだろう」


「ふふん。それもそうね!」


「まずは王都の冒険者に行って、仲間を募ろう」


 2人は好き勝手なことを言いつつ、道を進んでいく。

 と、そこで、1匹の魔物が現れた。


「ちっ。オークかよ。雑魚じゃねえか」


「しかも単体? ……まあいいわ。私が魔法で攻撃する」


「おう。任せた」


「……ウィンドカッター!」


 リリサが放った風の刃は、的確にオークの足を切り裂く。


「今よ、さっさとトドメを刺しなさい! ……聞いているの!? カイル!」


「バカ! あの野郎はもういねぇよ! ……おらぁっ!!」


 攻撃後にスキを晒したリリサを、ギゼルがかろうじてフォローする。

 そして、オークは息絶えた。


「ったく。攻撃後に気を抜くんじゃねぇよ」


「何よ。それを言うなら、あなたもフォローが遅いのよ」


「オークぐらい、一撃で仕留められねえのか」


「魔力は節約しないと。また出てくるかもしれないんだから。足を攻撃して動きを鈍らせて、後は近接でトドメをさす。基本でしょう?」


「けっ。それだと時間がかかるんだよ。もっとこう、サクッっと倒せれば……」


「はいはい。文句ばっかり。そう言うなら、あんたが最初から前衛として戦って倒せばいいじゃない」


「うるせぇな。俺はパーティリーダーなんだから、ケガでもしたら大変だろ」


「何よ、2人しかいないんだからリーダーも何もないでしょ。女の子ばかり戦わせて、恥ずかしくないの?」


「ああん!? 何だと、こら?」


「何よ、やるの?」


 ギゼルとリリサの口論が激化していく。

 リリサが弱らせた魔物にトドメを刺していたのはカイルだし、このようにパーティ内に不和が生じたときに宥めるのもカイルが行っていた。

 しかし、カイルはもういない。

 カイルが抜けた穴は、彼らが思うよりもずっと大きかった。

 彼らは不穏な空気を纏いながら、王都へ進んでいくのだった。

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