第14話 【ギゼルside】地下牢
「あんたのせいで酷いことになったわ! どうしてくれるのよ!」
「ふんっ。俺の後ろに隠れていただけの癖に、よく言うぜ。俺は俺なりに交渉したんだ」
「私は、あんたが任せろって言ったから従っていただけよ! あんたの交渉があれほど無茶苦茶だったなんて、思わなかったし!」
「ちっ! 後からならどうとでも言えるぜ! うざってえ女だ!」
「 私をうざいですって!? いい加減にしないと、本当にぶっ飛ばすわよ!」
「はっ! 魔力を封じられた『魔道士』に何ができんのか、教えて欲しいね」
「ぐぬぅ……。そう言うあんたこそ、四肢を拘束されちゃ何にもできないでしょうが!」
「何だとコラ!」
「何よ!」
ギゼルとリリサの口喧嘩が止まらない。
彼らは地下牢に投獄されているのだが、見張りの兵士も呆れて見守るだけである。
「……はぁ。どうしてこんな奴と一緒になったのかしら……。カイルがいてくれたら、面倒なことは全部任せられたのに……。誰かさんが追放したせいで……」
「ああ!? 俺が悪いって言いたいのか!」
「当たり前でしょ! カイルはあんたと違って、ちゃんとした人間だったわ!」
「チッ! お前だって追放に賛成してたくせによ!」
「それは……。あんたがここまで無能だとは思ってなかったからよ! 『格闘王』の身体能力に頼り切った脳筋野郎!!」
「何だと!? お前こそ、『魔道士』の魔法攻撃力にあぐらをかいて、後方からブッパするだけじゃねえか!」
お互いがお互いを貶し合う。
カイルがいなくなった綻びは、こうも早く顕在化していた。
「……もういい。このまま一生、ここで過ごすしかないのよ。私の人生、終わった……」
「けっ! 何が終わりだ。まだ終わってねぇよ。ここから脱出して、またカイルを探し出してパーティを組むだけだ」
「はぁ?」
「俺が思っていたよりも雑用をこなしていたことに認めるけどよ。所詮は外れスキル持ちのザコ。また誘ってやったら、ホイホイ付いてくるだろ」
「…………」
楽観的なギゼルに、さすがのリリサも沈黙した。
(あれほどひどく追放されておいて、またパーティを組むなんてあり得ないわ。そもそも、私たちが無事に釈放されるかどうかすら怪しいのに……)
リリサは内心でため息をついたのだった。
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