第12話
グルーデスト公爵家の庭園が、多くの招待客で賑わっている。
庭園の場所は、ローズとグルーデスト公爵夫妻の3人で、ああでもない、こうでもないと楽しく作り上げた一画の側の広いスペースだ。
グルーデスト公爵夫妻と並んで招待客の挨拶を受けるのは緊張したが、公爵夫人自身がローズに似合うと選んでくれ、公爵も太鼓判を押してくれたたドレスとアクセサリーに身を包んでいることで、気持ちがシャンとする。
ルーカスやリリーの知り合いらしき招待客はローズに意味ありげな目線を送られることがあったが、古くからグルーデスト公爵家との縁があるらしい招待客はおおむねローズにも親しく挨拶してくれて、公爵夫妻の人柄が交流関係からよく伝わってきた。
招待状に記した開催時刻となった時、特設したステージに公爵夫妻とローズの3人で上がった。
そして、公爵が一歩前に進み出る。
「本日はお忙しい中お集まり頂き、ありがとうございます。皆様に発表したいことは、ここにいるローズ・ミュゼラン嬢のことでございます」
公爵の言葉に、公爵夫人に背中をポンッと叩いて勇気をもらった後、公爵の横に進み出た。
「ルーカスが我がグルーデスト公爵家の後継者に決まったとの正式発表後、非公式のまま我が家では様々な重要なことが起きました。皆様が各々どのような噂を聞かれたかわかりませんが、これから発表しますことが正式なものとなります」
グルーデスト公爵が何を発するのかと招待客たちが固唾をのむ中、公爵がしばしの沈黙の後、再び口を開いた。
「まず、グルーデスト公爵家の後継者指名をしておりますルーカスと、ローズ嬢が先だって婚約いたしましたことは、ここにいらっしゃる皆様は既にお聞き及びの方が多いかと存じます。この婚約は、昨日までは確かに結ばれていたものでございました」
公爵の言葉に、招待客がざわめく。
「ここに、ルーカスの有責にて婚約破棄となりましたことを、発表いたします」
よりいっそうざわめきが大きくなり、中にはこそこそとした話し声や、嘲笑が混じっていた。
ローズは視線が突き刺さっていることを感じたが、背筋をピンと伸ばし、顔を上げ、毅然と立っていた。
そこにはもう、痩せ細り、身だしなみが整っておらず、きらびやかなドレスとアクセサリーから浮いていた、かつてのローズはいなかった。
グルーデスト公爵家の栄養のある食事で女性らしい姿となり、黒髪黒目はエキゾチックさを醸し出し、なぜかグルーデスト公爵夫人の面影がある、美しい令嬢が燦然と輝いていた。
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