第10話
「何から話そうか。……私たちに孫がいると知ったのは、ケインの遺書を読んだ時だった。忌まわしいケインとハインリヒの決闘の末、ケインが命を落とした後のことだ。決闘のことは、既に知ったのだろう?」
「はい。グルーデスト公爵家で暮らしていると、公爵家の使用人にふさわしい態度を取り続ける者だけではなく、ふいに私に対する嫌悪感を滲ませる方や、逆に妙に親愛の籠った目線の方がいました。失礼ながら様々調べると同時に、その方たちに根気よく話しかけ、聞けた話を繋ぎ合わせることでかなり真相に迫れたと思います」
嫌悪感を滲ませた使用人は、ローズのことをケインを殺した敵の娘と思っている者。
感情的にではあるが1度口を割った後は止めどなく全て話してくれたので、ケインが死んだ時の状況がよくわかった。
「極秘中の極秘で、我が家とミュゼラン公爵家が全力で揉み消したんだ。だから、外部には漏れていないよ。ケインの死は、不慮の事故ということになっている。しかし、使用人はどうしてもね」
「決闘の原因は、私の魔力検査の結果と聞きました」
「ローズは悪くないわ。親がしでかしたことを、子がどうすることができるというの。貴女はただ、光属性魔法の素養を持っていただけなのよ」
光属性魔法の素養。
それは、グルーデスト公爵家が代々受け継いでいるものだ。
グルーデスト公爵家本家や分家以外にも稀に持つ者が現れるが、詳細な調査で血筋を遡るとグルーデスト公爵家と血縁関係の祖先が判明することが多く、全くの無関係の者が持つことは、リディエンダ王国内では滅多にない。
それは闇属性魔法の素養を代々受け継ぐミュゼラン公爵家も同様だ。
「ローズには素養無しとすることにしたのは、光属性魔法の素養ありと公表すれば、醜聞が表沙汰になることが間違いないからだな」
「ごめんなさいね、ローズ。まさか貴女が酷い目にあわされるなんて、思ってもいなかったの。5歳の貴女は、とてもかわいがられているようだったから……」
親愛の籠った目線の使用人は、決闘のことだけではなく、その原因も知り、ローズがグルーデスト公爵家の血を引く娘だとわかっている者であった。
かなり根気よく話しかけないと話のきっかけすらも与えてくれなかったが、5歳以降のミュゼラン公爵家でのローズの扱いを話すと、懺悔のように話してくれた者がいたのだ。
「5歳の貴女はケインではなく母親によく似ていたし、漆黒の黒髪黒目はまさしくミュゼラン公爵令嬢だと思ったわ」
「だからこそ母親はハインリヒの子だと油断していたのだろうし、魔力検査結果はハインリヒにとって青天の霹靂だっただろうな」
使用人によると、母親とケインはリディエンダ王国魔法学院時代からの付き合いだと、遺書には告白されていたようだ。
遺書は決闘前に急いで書いたもので、どのような結果になろうとも、長年ハインリヒを裏切っていた自分が悪いのだとも記されていたそうだ。
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