第5話
両親とリリーとの和解を諦めたローズは、嫌がらせに耐えて使用人として働き、定期的にお茶会に参加させられては嗤われ、ドレスとアクセサリーを奪われる日々を過ごした。
その日々の中で、なぜ自分が冷遇されているのかの情報が集まっていき、理解してからは不安定気味だった精神が安定した。
これまでは理由がわからないまま、ただただ理不尽に耐えるしかないでいた。
しかしこの状況になるにはきちんと理由があり、ローズ自身が悪いわけではないのだと、判断できたからだ。
祖父母と両親は、闇属性魔法の素養が無いことはローズのせいであるかのような態度だが、そんなことあるわけがない。
質が悪くてもかろうじて受けられた5~12歳までぼ教育、使用人たちの陰口、お茶会参加者の噂話。
どの情報からも、属性魔法の素養が本人にどうこうできるもにではないことは、明らかだ。
まともな教育を受けていない子どもでも判断できることを、祖父母と両親がわかっていないはずはがない。
ローズの冷遇の裏には、表に出ていない何かがあるのではないか。
そう思い始めた15歳になった頃、ローズに縁談が持ち上がった。
相手はなんと、ミュゼラン公爵家とは犬猿の仲である、グルーデスト公爵家の後継者のルーカスであった。
使用人たちの噂話によると、ミュゼラン公爵家側から申し込んだ縁談らしい。
ローズは信じられなかった。
正式な教育によってではなく、自力で情報を集めて身につけた冷静な判断力から、ローズにとっての都合を無視してミュゼラン公爵家に利がある婚姻をするか、一生飼い殺しにされるかだと思っていたからだ。
よりによって犬猿の仲のグルーデスト公爵家に頭を下げて縁談を申し込むことも、ライバルに将来闇属性魔法の素養が渡る可能性を許容することも、ローズがグルーデスト公爵夫人になることを良しとすることも、何もかもが信じられなかった。
それに、社交界の準備段階であるお茶会ですら上手くできていないのに、初めは婚約者からだとしても生涯学習の公爵夫人として社交をする自信が、ローズには微塵も無かった。
案外、これがミュゼラン公爵家の、ローズとグルーデスト公爵家への嫌がらせなのかもしれない。
同格の公爵家から迎えたはずの嫁が、社交界で大失敗をやらかして大恥をかくこと。
いや、グルーデスト公爵家がローズの調査を怠るはずがないし、これではミュゼラン公爵家も恥をかく。
全く両親の真意がわからないまま、グルーデスト公爵夫妻とルーカスとのお見合いの日がやってきた。
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