第4話 友情
「はい。では授業はここまで。放課後なので各々部活に行くなり帰るなりして下さい。ではさようなら」
そう言って先生が教室を出ていく。僕は先生が教室を出たあとに机の上にある教科書をまとめて片付けてバックにしまい、教室を出た。僕はさっそうと部室に向かった。部室の前に着くと、中から声が聞こえた。何やら揉めている?僕は第一声を決めて、恐る恐るドアを開けた。
「失礼します。元気ですか?皆さん」
我ながら良いと思ってしまった。すると、舞さん、遥さん、そしてとある男子生徒がいた。
「ん?元気だけどどうしたの?」
僕はそう言われて、頬を赤らめた。まさかそんな返しがくるなんて。
「あ、いやそういう訳ではなくて・・・なんか外まで声が聞こえたので何か揉めているのかと思いまして・・・」
すると、舞さんが
「ん?あーこれね!今この子とさスマホゲームで熱くなってて」
そう言われて、手元の方を見るとシューティングゲームで盛り上がっていたぽい。
「あ、すみません。おとなしくしています」
僕は腰を低めて近くにあった椅子に腰をかけた。
「はいはい。舞もゲームやめて。人数も揃ったし、始めるよ」
「えー?もう?しゃあない。この決着はまた明日だね」
二人がゲームを閉じた。そうした時に遥さんが、
「えー今回はこの子の事件らしいです。さぁ説明して」
そう伝えてその男子生徒が口を開いた。
「すみません。僕は一年生の者なんですけど、僕今サッカー部に入っていまして、もうすぐ他校との試合になるんですよ。試合を行うのは良いんですが、その他校と言うのが隣町の春山高校と言う高校でして、その高校のサッカー部のエースと言うのが中野と言って、それはとても強くて、もう高校生でありながらプロからスカウトされる程なんですよ。ただ僕らのチームはそのチームに比べたら弱くてですね、正直勝てる自信が無いんですよ」
その時、僕はふと思った。
「なるほど。まぁ良く分かりました。けどそれって僕らに解決できるものですか?なんなら僕ら関係ないと思うんですけど~」
僕がそう聞くと、その子がこう答えた。
「まぁそう言われてしょうがないですよね。僕も正直そう思いました。ただ問題はそのあとの事なんですよ」
「ん?そのあとって?」
「実はその試合ってのが、相手のチーム的には不利な状況になっているんですよ」
「え?けど相手は強いんじゃないんですか?」
「そうなんだけど、僕も聞いた話なんだけど、今回の試合では春山高校は負けるように言われているらしいんですよ。いわゆる八百長試合ですね」
「はぁ。八百長試合ですか。でも誰がその様に仕向けたんですかね?」
「それをちょっと探偵部の方で頼みたいなと思いまして出向いたんですけど。僕は試合に向けて練習をしないといけないんですよ」
「なるほど。どうしますか遥さん?」
すると、遥さんが和らいだ顔で答えた。
「良いでしょう。その試合までには解決を致しますよ。ただ、万が一に解決出来なくても良いですよね?その場合は?」
「え?まぁそのときはしょうがないので大丈夫ですけど・・・」
「分かりました。では今日のところはお引き取り願います」
「はい。ではお願いします」
そう言って、部室のドアを開けて外にでてからドアを閉めた。僕は遥さんに聞いてみた。
「あの~どうしますか?遥さん?どうやって調べますか?」
すると遥さんが、
「ねぇ二人はどう思う?この事件」
「え?!僕は正直難しいと思いますね。第一証拠が少ないので。舞さんはどうですか?」
「私も~これは事件と言うべきなのかと思いますね。ぶっちゃけめんどくさいです」
すると遥さんがため息をついた。
「二人の気持ちは良く分かった。確かにそうよね。これはパスでも良いんじゃない?」
「え?どういう事ですか?」
「どういう事って、パスよパス。だってこの事件って解決できる未来が無いじゃない?だってもし解決出来たとしても説得するのは多分相手のチームの監督よ?大人の事情に子供が首を突っ込むのも悪くない?あんまりやると学校の評判が下がるわよね?さすがに風紀委員にお世話になるのは御免だからね。私はパスよ。二人はどうする?」
「えー?僕は別にどちらでも。舞さんは?」
「私は・・・ごめん。今日はもう疲れたから帰るね。ごめんね。また明日」
そう言って、舞さんが部室を出た。いつもは元気な舞さんが今日は顔色が悪かった。
「どうしたんですかね?気分が悪いんですかね?」
すると遥さんが呆れたような顔を浮かべた。
「舞はね、こういう意見が分かれたときが苦手なのよ。だから毎回ああやって何か理由をつけて帰ろうとするのよ。今日もそうみたい」
「そうなんですね。舞さんも大変ですね。では、一応今回のは僕が担当しますよ。まぁやれるところまでやるつもりなので」
「そう。・・・じゃあ私も手伝うわ」
僕が突然鳥肌が立った。
「え?!けど遥さんさっき私はパスって言ってませんでした?」
「確かに。私もさっきはダメだと思ったわ。けど冷静に考えてああ言われたからにはとりあえず手を出さないと逆に怒られちゃうわ。なので今回は私も協力します」
「あ、ありがとうございます。では本格的にやるには明日ですかね?」
「そうね。明日から調べるわよ。じゃあまた明日の放課後ね」
お互いに帰る準備をして、出来たら部室を出た。
次の日の放課後・・・僕は部室のドアを開けた。するとそこには遥さんが座っていた。
「失礼します。遥さん早いですね」
「当たり前でしょ?今日からなんだから」
「あれ?舞さんは?」
「あれ?見てないの?もしかしたら昨日のあれが続いているのかしらね」
「あーなるほど。ではやりますか」
そう言って、僕は椅子に座った。
「さて、話を整理するけど結局は相手である春山高校に八百長試合を吹っ掛けた犯人を見つける。と言うのが今回の依頼よ。まぁ今回のはネットの力には頼れないわね。まぁとにかく原因はあっちにあるのよ。行くわよ」
「え?行くって?もしかして・・・」
「何って、春山高校よ。早く行くわよ」
そう言って、僕らは春山高校に向かった。春山高校は近くにあるとは言え、程よい距離がある。なので途中でバスに乗らない限り行くのには時間がかかる。僕たちはバス停まで向かった。バス停の所に着くとちょうど出発する前のバスが停まっている。僕たちはあわててバスに乗り込んだ。
バスが走り出した。バスのなかに入ると遥さんが話しかけてきた。
「さて、まず行ったらそのサッカー部のエースに会いに行くわよ」
「エースですか?監督の方が良いのでは?」
「まずはエースに会って誰に言われたかを聞くの。そこから犯人を見つける。これが一番かな」
「なるほど。ではまずエースを探しますか。でもどこにいますかね?」
「サッカー部のエースでしょ?それならグラウンドで練習してるか部室にいるでしょ?」
「そう・・・ですね、すみません」
気まずくなった。早く着かないかなぁと思っていると、バスが止まった。
「さ、行くよ」
僕は遥さんと一緒にバスを降りた。幸いにも降りると春山高校の目の前に止まった。僕たちは校門の所から校舎の方に向かった。すると近くにいた女子生徒に声をかけられた。
「ねぇねぇ。君達って隣の高校の人でしょ?確か名前は・・・」
すると遥さんが、
「如月高校です」
「あ!そうそう如月。どうしたの?誰待ち?」
「実はサッカー部のエースの方に用がありまして、居ますでしょうか?」
「エース?ああ!中野くんね。確か今は部室に居るから行ってみれば?なんなら案内しようか?」
「良いんですか?ではお願いします」
そう言って、その女子生徒に付いていった。グラウンドのほうを見るとサッカー部が二人一組でパス練習とドリブル練習をしていた。楽しそうだな~と思う。
「ねぇ、二人はさ、付き合っているの?」
突然の質問に僕は言葉が詰まってしまった。
「いいえ。私達は部活の仲間です。別にそこまでの関係ではありませんね」
「そうなんだ。お似合いぽいけどね。私から見たらね」
「そうですか?私は・・・そうは思いませんね」
「まぁ人それぞれだから。ところで確かそろそろサッカー部って試合らしいね。あなたたちの高校と」
「実はその事で話がありまして」
「え?何かあったの?」
遥さんが、その人に一から十まで説明した。するとその人が何か思い出した顔をした。
「そうなんだ。実は私も聞いた話なんだけどある時にサッカー部のエースがそちらのエース?の人とある話をしたらしいの」
「そうなんですか?その話って」
「それが、今度の試合について話をしていたらしいの。私も良く分からないけどね」
「そうでしたか。分かりました。翔くん。メモしといて」
「あ、はい。分かりました」
僕はあわててズボンのポケットに入っていたメモ用紙に今言われた事をペンで書いた。これが吉と出るか凶と出るか。
「さ、着いたよ。ここがサッカー部の部室。いるかな?開けてみるね」
そう言って、サッカー部の部室を開けてくれた中を見てみると意外と片付いていて僕らの部室と変わらないような感じだった。ただやっぱり男子だけあって匂いは・・・まぁいいか。すると一つの椅子にある男子生徒が座っていた。
「うお!?なんだよ。今休憩中だぞ。てっきり先生かと思ったじゃん」
「ごめんね。実はこの人たちがあなたに話があるみたいなの」
「ん?その人たちは?」
「如月高校の人だよ。さ、後はお願いね」
そう言って、その女子生徒が僕たちを取り残して離れていった。
「たく、人任せだな」
すると遥さんが聞き始めた。
「すみません。私達如月高校の探偵部の者です。あなたは中野さんですよね?」
「ああ。そうだけど。探偵・・部?その人たちが俺に何の用だよ?」
「実は今度やる試合について話がありまして、少し良いですか?」
するとその中野さんがハッとした顔をした後に、下を向き始めた。
「別にいいじゃねえか。話すことなんてねぇぞ。俺たちはどっちにしろ負けるんだ」
「ふーん。やっぱり八百長試合ですよね?」
「まぁそうだけど。・・・どうしてもと言うなら話してやる。ただ何があっても責任は取らないぞ?」
「良いですよ。聞きたいのは私達ですし。欲しいのは情報です。むしろ好都合ですよ」
「そうか。まぁ座れ。そこに椅子があるから」
そう言ったので、僕たちは近くにあったパイプ椅子に座り込んだ。意外とふかふかなんだな。
「さて、早速ですがあなたは八百長試合を誰から言われましたか?」
「それは・・・」
何故か言葉が詰まっている。どうしたのだろう?
「どうしました?」
「いや、何でもない。言われたのはそっちのサッカー部の奴だよ。名前も言わずに用件だけ言って帰ってったよ」
僕と遥さんは驚きが隠せなかった。僕は聞いた。
「こちらのサッカー部ですか?何かあったんですかね?」
「知らねぇよ。でも俺はそれを守らないといけねぇんだよ。大変だけどな」
「そうですか、何か弱みでも握られているんですか?」
「実は今回これを守らないと俺はサッカー部を辞めないといけないんだ」
「え?!なぜですか?」
「何故だかな。理由は知らない。まぁ守れば辞めずに済むから俺は全うするよ」
「そう・・・ですか」
すると、遥さんが急に口を開いた。
「私から一つ良いですか?」
「なんだ?」
「その事は監督は知っていますか?」
「いや、言ってねぇよ。お互いに監督に言わないって約束したからな」
「そうですか。では最後に良いですか?」
「おう。良いぞ」
「貴方って彼女いますか?」
「なんだよ。まぁ・・・いるけど」
「ちなみに今いますか?」
「マネージャーなんだけど、今ちょうどグラウンドでサッカー部の練習を見ているから。いるはいるかな」
「そうですか。では今回はありがとうございます。貴重な時間でした」
「おう。まぁ解決を願うよ。こちらとしては」
「では失礼します」
「失礼します」
そう言って、サッカー部の部室を出た。校門の方に戻るとさっきの女子生徒がいた。ちょうどサッカー部の試合を見ていたっぽい。
「あ!お帰り~。どうだった?ちゃんと話せた?」
「はい。だいぶ良かったです。私達はこれにて帰ります。あ、ちなみにサッカー部のマネージャーってどこですか?」
「マネージャー?それなら今あそこの朝礼台の近くにいるよ。ほらあそこに」
そういわれて指を指している方向を見ると少し茶髪気味でポニーテールにしている女子がタオルをまとめていた。
「あの子ですか。確かあの子ってさっきのエースの彼女さんでしたよね?」
「そうらしいね。まぁどちらもいけているからね。あの子も結構男子生徒に人気あるんだよ。可愛いし、頭も良いし」
「そうですか。ではこれで帰りますね。では今日はありがとうございました」
「うんありがとう。またね」
そう言って、遥さんが、校門の方に歩いていった。僕もお礼言わないと
「ありがとうございました。では失礼します」
「うん。またね。翔君」
僕はそう言って遥さんを追いかけた。あれ?僕いつあの人に名前名乗ったっけ?まぁいいか?
バスに乗ると、遥さんが話しかけてきた。
「翔くんはどう思う?」
「え?どう思うって?」
「どうって、この事件よ」
「ああ。これはもしかしたらマネージャー絡みではないですかね?」
「ほう、なぜ?」
「もしかしたらこちらのサッカー部の人があのマネージャーの事が好きで、そしていつしかあっちのエースの人と付き合っているのを知って、そこから生まれた嫉妬であちらのサッカー部に八百長試合を持ちかけたと言う事ですかね」
「なるほどね。けどなぜ八百長試合を持ちかけるの?その場合」
「たぶんですけどサッカー部を辞めさせれば興味が無くなって別れると思ったからじゃないですか?ちょうど試合も見に来ますからね。好都合じゃないですか?」
「なるほどね。ではそうでは無かったら?」
「え?どういう事ですか?」
「ま、今日はいいわ。明日またやりましょ」
そう言って、バスが最初の所に着いたので僕は遥さんを追うようにバスを降りた。
「さて、またね」
「はい。また明日」
そう言って、遥さんが自宅の方に向かった。僕も一回学校の方に戻って、自分の自転車を回収してから家に帰ってった。遥さんが、言っていた
「ではそうでは無かったら?」
とは、何の事だろう?もしかしたら僕の考えは間違っているのか?だとしたら他に何の考えが?まぁ明日考えるか。そう思い僕は家に帰った。
次の日の放課後。僕が部室に行くと、昨日と一緒で遥さんが座っていた。
「失礼します。また舞さんはいませんか?」
「みたいね。まぁ分かりきってたし。では行きますよ。今日はこちらのサッカー部です」
「そうですね。こちらの情報も欲しいですからね。では行きますか」
そう言って、僕らはグラウンドに向かった。幸いにもグラウンドに行くとサッカー部が練習していた。僕らは近くにいたこの前の頼み込んできた男子生徒に声をかけた。
「失礼します。練習中にすみません」
「ん?ああ、探偵部の二人。そういえばどうなりましたか?もう解決出来ましたか?」
「そうですね。まだですねー」
「そうですか。まぁあれでしたらもう大丈夫ですよ」
「え?けどあんなに頼んでいたのに」
「いや~あの時はあんなに頼みましたけど、今冷静に考えてみたら馬鹿馬鹿しいと思ってしまって、ましてや相手の事だからこっちが首を突っ込むのもダメかなと思ったんですよ。もちろん解決して欲しいですけど、あんまりあっちに迷惑かかるなら申し訳ないですが諦めていただいた方が良いのかなと思いましたね」
僕は言葉が出なかった。あの時はあんなに頼んでいたのに今となってこんなことになるなんて。正直になんだよとは思った。すると遥さんが、
「待ってください。あと少しなので聞きたいことがあります。良いですか?」
「お、おう。まぁ今なら大丈夫ですけど」
「ありがとうございます。では早速ですね最近こちらのサッカー部の人が春山高校のサッカー部のエースに会いに行きませんでしたか?」
「ん?ああ。確かそれってこっちのエースだよ。なんか次の試合の挨拶をしに行ったらしいよ。まぁ礼儀が大事だからかな」
「そうですか。では二つ目です。確か八百長試合って監督の耳には入っているんですか?」
すると、その男子生徒が清々しいような顔で答えた。
「いや、多分入ってないんじゃないかな?あ、あれだけど監督にはあなたたちから言わないでね。あなたたちから言っても多分信じないと思うからさ」
「分かりました。では最後に質問では無いですが、エースはどこですか?」
「エース?それならあそこで座っている奴がエースだよ」
そう言って、付いていくと座っていたその男子生徒がこっちを向いた。
「ん?どうした?その人たちは?」
「あ、この人たちは探偵部の者です。ではこれで僕は練習に戻ります」
「おう。では良いぞ」
そう言って、さっきの男子生徒が練習に戻った。
「さて、休憩中にすみません。あなたに聞きたいことがありまして。良いですか?」
「まぁ少しだけなら」
「ありがとうございます。さて、あなたって確かこの前一回春山高校のサッカー部のエースに会いに行ってますよね?」
そう遥さんが聞くと、その人がこちらをゆっくり顔を合わせた。
「どこでその話を聞いた?」
「さて、どうでしょう?私も人から聞いた話なので」
「ふーん。まぁいいや。確かに行ったよ。挨拶だからな。別にこっちの情報は売ってねえよ」
「そうですか。では二つ目です。貴方ってあちらのサッカー部のマネージャーについてどう思いますか?」
「マネージャー?そりゃ羨ましいよ。あんなに美形な子はいないからね。出来れば付き合いたいけど・・・」
「そうですか。では最後に一つです」
僕は最後に何を質問するのか気になった。この質問によって解決できるかが分かるからだ。
「サッカー部の人たちって結構上手いんですか?」
「え?」
僕は思わず声が出てしまった。上手い?どういう事だ?僕は遥さんの近くでささやくような声で、
「遥さん。どういう事ですか?それって関係あるんですか?」
「翔くん。ここは私に任せて」
僕はそういわれたので、黙って見届けることを決意した。
「なんだそういう事かよ。当たり前だろ?サッカー部に入ってくるんだから下手な奴が入ってきたら教えるのも大変だからな」
「そうですか。エースのあなたから見て誰が上手かな~って思いますか?」
「んーそうだな~。けどさっきの奴は他の奴よりは上手だな」
「さっきって、私達といた人ですか?」
「そうだよ。あいつは俺には劣るけど、他の奴よりは比較的上手いな」
「そうですか。では私達は帰ります。ご協力ありがとうございます」
「おう。まぁ良い気休めになったよ」
そう言って、サッカー部の練習に戻っていった。
「さて、どうしますか?一度戻ります?」
「うーん、そうね。一度部室に戻るわよ」
僕たちは部室の方に戻っていった。部室に戻るとお互いに椅子に座った。
「さて、翔くん。改めて聞くけどあなたはこの事件、どう思う?」
「うーんそうですね。やっぱりエースの嫉妬じゃないですかね?結局あの人は相手のマネージャーの事を好きでしたし」
僕はそう答えた。やっぱりどう考えてもこの事件は恋愛事情が絡んでいると僕はにらんでいる。すると遥さんが、
「分かった。じゃあ明日そう伝えましょ」
「え?!大丈夫ですか?もし間違えてたら」
「大丈夫よ。皆が皆同じでは無いのよ?自分の意見を持つのも大事よ。明日は試合前の顔合わせがあるらしいの。私達もお邪魔するわよ」
「は、はい。分かりました」
「ではこれで、お疲れ様」
「はい。失礼します」
そう言って、僕は遥さんより先に部室を出た。どういう事だろう?遥さんは何を考えているんだ?まぁ僕は自分の意見を全うするだけだ。今日は良く寝て明日に備えよう。僕はそう固く決意して家に帰った。
翌日の放課後。僕らはそのまま部室に集まらずサッカー部が顔合わせをするサッカー場に待ち合わせをした。
「すみませーん!遥さん待ちました?」
「いや、私もさっき来たところよ。しかし特殊よね。試合前に一度顔合わせなんて。当日すれば良いものの」
「そうですね。しかも顔合わせだけですからね。可哀想ですね」
「まぁ顔合わせしたあとはそのまま練習できるらしいから本番の様にできるからじゃないかしら?まぁ私達は終わるのを待ちましょ」
「そうですね。飲み物飲みます?」
「そう、私はお茶で」
「じゃあ僕そこのコンビニで買ってきますね」
そう言ってコンビニまで走って、飲み物を買いに行った。飲み物を買って遥さんの方に戻ると遥さんが辺りをキョロキョロしだしている。
「どうしました?誰か待っているんですか?」
すると、遥さんが辺りを見るのを止め出した。
「いや、ただ周りの景色を見ていただけよ。それより飲み物ありがとう。お金は後で返すね」
「いや、良いですよ飲み物ぐらい」
「そう?悪いね」
僕は遥さんにお茶を渡した。だいたい練習が終わるまで一時間はあるので、僕らはそれまでサッカー場がある施設の中で待つことにした。そして一時間後。僕らはサッカー場につなぐ通路を歩いた。
「なんか緊張しますね」
「そう?私はそうは思わないけど」
僕はそう言われ恥ずかしくなった。そう歩いているとついに現場であるサッカー場に着いた。着くと、真ん中ではうちの学校のエースと僕らに頼み込んできた男子生徒、そして相手チームのエースがなにやら話していた。僕は緊張しながらそこの輪に入り込んだ。
「あれ?探偵部のお二人?どうしました?」
そう男子生徒に聞かれた。その後に遥さんが、
「どうしましたって、解決したから来たんじゃないですか?」
するとその男子生徒が、
「え?解決したんですか?それは良かったです。で、どうなりました?犯人は?」
すると、遥さんが
「その前に、あなたたちだけですか?他の人は?」
「ああ、もう帰っちゃったよ。監督も相手のチームの監督とご飯行っちゃったし」
「それなら好都合ですよ。ではお伝えします。では翔くん。お願いね」
そういわれて僕は前に出た。
「えーまず今回は八百長試合を申しかけた人が犯人と言う事ですね」
「そうですよ。それで犯人は?」
そう男子生徒に聞かれたので僕は答えた。
「それは・・・こちらのエースです」
そう言うと、こっちのサッカー部のエースが驚いていた。
「は?俺が?どうしてだよ?第一証拠が無いだろ?」
「証拠はこの前の質問で分かりました。まず第一にあなたはなぜ相手のチームのエースに会いに行ったのか。そこが謎でした。わざわざこうやって顔合わせがありながら会いに行ったのはおかしくないですか?」
するとエースの顔色が悪くなった。
「な?!それは礼儀を持って行ったことで。第一俺には動機が無いだろ?」
「動機ですか。ありますよ」
「は?何だよ?」
「それは相手のエースのマネージャーですよね?」
すると、相手のエースが
「は?どういう事だよ?」
「それはこちらのエースが相手のチームのマネージャーの事が好きだったことから始まりました。そしてあなたはマネージャーが相手のチームのエースと付き合っていることを知って、嫉妬してしまったあなたは今回の試合で負けさせればお互いの関係が崩れて別れると見たんですね?どうですか?」
そう僕が伝えた。すると、エースがうつむいてしまった。
「う。そうか。そうだよ!俺は好きだったんだよ!相手のチームのマネージャーのことがよ!でもよ、最近知ったんだよ。付き合っていることが。しかもそれがサッカー部のエースって知ったときは正直驚いたよ。だから・・・なんだよ」
すると相手のチームのエースが、
「そうだったのか。正直どうしたらいいのか」
沈黙の場となってしまった。すると男子生徒が、
「では犯人はこちらのエースってことですね?じゃあもう八百長試合は無かったことですね?まぁ今回はあれですけど次はこの様な事が無いようにしましょうか?では僕はもう失礼します」
そう言って、帰る方向に歩いていった。すると遥さんが声をかけた。
「待ってください」
するとその人は歩きを止めて振り返った。
「何ですか?もう解決したじゃないですか?」
僕も正直そう思った。
「そうですよ。遥さん。もう解決しましたよ?何かありました?」
すると遥さんが、
「このまま返すわけにはいきませんよ?あなた、いや名前は・・・須崎さんでしたよね?あなた何か隠していますよね?」
すると、その須崎さんが、呆れたような顔をしていた。
「は?僕が何か隠している?冗談もよしてくださいよ。何も無いに決まっているじゃないですか。むしろあるなら言ってくださいよ」
「良いでしょう。ではお答えしますので待ってください」
そう言って、須崎さんが戻ってきた。
「さて、話しますね。今回の事件はエースの単独の行動だと思ってました。ただ違いました。あなたですよね?エースに行かせて八百長試合を進めたのは?どうですか?」
そう言うと、須崎さんが
「何でだよ?僕がわざわざエースの人を使ってまで進めるんだよ?第一僕にだって動機がないだろ?言ってみろよ?」
そう聞かれた時に、遠くのほうから声が聞こえた。
「ごめーん!待たせちゃった!」
声が近づいてきて、姿が見えるとそれは舞さんだった。
「舞さん!?どうして?」
すると舞さんが近くに来てから答えてくれた。
「いやごめん。ちょっと遅れちゃった?」
すると遥さんが、
「舞、グッドタイミングよ。さぁ早速で悪いけどあの須崎さんに話してあげて」
そう遥さんが須崎さんの方に手を向けると舞さんがその方に体を向けた。
「すみません。須崎さん。あなたは確か如月高校に来る前は確か春山高校に居ましたよね?」
すると須崎さんの顔色が一気に変わった。さっきまで清々しかった顔が一気に悪くなった。
「な?!確かに居たけどそれと何が関係あるんだよ?別に無いだろ?」
「それがですね、あなた春山高校の時もサッカー部に入っていましたよね?しかもあの中野さんと一緒でかなりの強者だったらしいじゃないですか?そうなんですか?中野さん?」
「あ、ああ。確かに俺と須崎は頭ひとつ抜けているぐらい強かった」
「そうでしたよね。ただ中野さんの方はその時からプロからスカウトの声がかかってましたよね?それにたいして、須崎さんは声がかかってなかった。それに嫉妬して須崎さんは居心地が悪くなり、学校を辞めてこっちに来た。そういうことですよね?」
そういうことだったのか。一同がそう思った瞬間に須崎さんが口を開いた。
「ふっ、そうだよ。確かに僕は中野にたいして嫉妬してたよ!だから今回試合をすることにあたってうちのエースを使って負けるように仕向けたんだ。そうすれば僕が上だと言う事が伝わるからな。監督にも!」
「そうだったのか・・・」
相手のチームの中野さんが少し暗い顔をしていた。
「須崎・・・悪かった」
中野さんが須崎さんの方を向いて言った。
「な、何だよ!今さら」
「俺は自分の事秤気にしていて、周りの事を考えていなかった。だから辞めたんだよな?俺もお前と練習していた時は楽しかったよ。な?お前も楽しかっただろ?」
「な?!楽しかったって・・・まぁお前とやっていた時は楽しかった。だがそれが何だ。今さら無理だ。修復しようなんて・・・」
すると中野さんが須崎さんの方に歩いていった。
「今から全部やり直そうとは思ってないよ。少しずつで良いからお前とやり直したいとおもっている。練習も一緒にやろう。それでもよかったら許してくれないか?」
すると、須崎さんが泣き出していた。
「ごめん。僕もお前と仲良くしたい。今回したことは全部僕が悪かった。だから、責任は僕が全部受ける。だから!だから!許してくれ。この通りだ」
そう言って、須崎さんが土下座をしていた。
「俺は大丈夫だ。皆は良いか?」
そう中野さんが聞いてきた。
「それはあなたたちで決めてください。私達が決めることではありません。これで私達は失礼します。舞、翔君、行くよ」
そう言って、遥さんが出口の方まで歩いていった。僕と舞さんは後ろを付いていった。
「そういえば、舞さんって裏でちゃんと行動していたんですね」
「ん?そうだよ。遥に頼まれたからね。断れるわけないから」
「ちょっと、言い方悪いぞ」
「てか遥さん、舞さんに頼んでたんですね」
すると、遥さんが少し微笑んでこっちを向いた。
「言ったでしょ?皆が皆一緒じゃ無いの。私だって自分の意見、考えだって持っていんだよ。だから舞に頼んでいたの。良い?事件は裏があってこそなの。そこをしっかり考えないと。ね?翔君?」
ドヤった顔で言われた。正直少しむかつく。
「な?!今回は僕も詰めが甘かったですね。だが次はちゃんとしますよ!次こそは!」
そう宣言すると遥さんが笑ってくれた。
「ふふ。期待してますよ。翔君」
「ちょっと!私も頑張るからね!」
この日の三人での会話は楽しかった。
三日後。部室で僕たちは今まで集まった資料を整理していた。
「そういえば、結局試合はどうなったんですかね?サッカー部勝ちましたかね?」
すると遥さんが、
「ああ、その事ね。なんか結局負けちゃったらしいの。一点差だったらしいの。けど今までの試合のなかで一番の良い試合だったらしいわよ」
「そうなんですか!それは良かったですね」
「そうね。あれからサッカー部の士気が上がったらしいし、部員も増えていったらしいわ」
「そうですか。このまま良くなっていくと良いですね」
そう僕と遥さんが会話していると舞さんが、
「そういえば、最近近くの公園の敷地でサッカーゴールが取り付けられたらしいね。しかも付けて欲しいって言った人がある男子生徒に高校生二人らしいわよ。何でも練習用に付けて欲しいって言ったらしいね。誰だろうね?」
そう舞さんが言った後に僕と遥さんは目があった。そしてお互いに少し微笑んだ。
「ん?何で二人とも笑っているの?」
「いや、何でもないですよ」
「え~?教えてよ!ねぇ翔君教えて!」
「どうしよっかな~?よし、ダメ」
「え~?どうして!教えてよ!」
そう言って、舞さんが、近づいてきた。
「はいはい。二人ともじゃれてないで資料を片付けるよ。ほら手を動かして」
「あ、すみません。ほら舞さんも」
「え~?はーい。やりますよー」
そうして僕たちは資料を整理し始めた。さて、次はどんな事件かな~?僕はこの二人と楽しめているのが嬉しかった。僕は少し微笑んだ。
僕の事件簿 クリーン @kurln
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。僕の事件簿の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます