第3話 入部試験 後編
「はぁー。遥ったら、どうしてだろうね?」
舞さんがため息をついている。無理もない。あんなことになってしまったからだな。まさか一人である事件を解決しないといけないんだなんて。
「あの~、早速なんですがとある事件って何ですか?やっぱりうじうじしててもあれなんで、今から行動しとかないといけないんで・・・」
「そうだったよね。ごめん。ふぅ、でね、その事件って言うのは二年生のある生徒の事なんだけど、まぁまずはこの手紙を読んでくれ」
そう言って、舞さんが僕にある手紙を渡してきた。僕は手紙の封筒を開けて、読み上げた。
私の家では花を売っています。ですが最近うちでは売っていない花が届けられるみたいです。どうか探偵部にこの事件を解決してほしいです。
「って書いてありますね。そういえばこの事件って結構有名なんですか?僕のお父さんもこの事を言っていましたから・・・」
「うーんそうなのかな?あんまり聞かないけどね?私も初めてこの手紙で知ったからね。何とも言えないけどね。まぁ問題はこの事件の手がかりなのよ。その花もよく分からないし、出所がおかしいのよ。何でも、いつも業者に頼んで仕入れているから、間違えるはずがないのよね。それなのに何故か売ってない花が届くなんて、おかしいにも程があるわよね。」
「なるほど。では今からそのお花屋さんのところに行きます。何か手がかりがあるかもしれないので」
「そうか。頑張ってね。応援してるよ!」
「ありがとう。ではまた明日」
そう言って僕は部室を出て、下駄箱の方で靴に履き替えて、スマホの方でそのお花屋さんの場所を調べ始めた。調べてみると、学校から意外と距離があり、言ってしまうと僕の家の方が近い。僕は何とか足を進めた。歩いている道中にそのお花屋さんの事を調べてみた。よく調べると、評判はそこまで悪くは無く、どっちかって言うと良い。だが近年新しい花が入ってきたなどの口コミが書いてある。もしかしたらこれが噂の花なのか?そう思いながら進むとお花屋さんに着いた。僕は店のなかに行って、中にいた店員さんに声をかけた。
「あの~ちょっとすみません」
すると、その人がこっちを振り返った。
「はい?なんでしょう。あれ?あなた同じ二年生の確か・・・日高翔君だったよね?」
「はいそうです。あの~探偵部としてきたんですけど~」
「探偵部・・・あ!そうか、確かに頼んだね。やっぱり無理なのかな?前も来てくれたんだけど、無理だったみたいで結局お蔵入りみたいになっちゃったんだよね」
「そうでしたか。ですが最近今回は必ず解決してみせますので。ご安心下さい」
「そうなの?じゃあ期待しようかな。新人クン。じゃあまず説明するから私の部屋まで来てほしいの。ほら来て」
そう言って、僕はその人に着いていった。部屋の中に行くと、リビングと台所が見えた。きれいに片付けたれている。ソファの方を見るとその人のお母さんが座っていた。するとこっちの視線を感じたのかこっちの方に振り返った。そのお母さんがこっちに軽く会釈をしてくれた。僕も慌てて会釈をした。そうしてからその人の部屋に入っていった。普通に白を基調としている部屋だった。僕はその人に座布団を用意されたのでそこに座り込んだ。
「さて、自己紹介がまだだったね。私は三組の山寺優って言うの。優で良いよ」
「あ、よろしくお願いします。優さん」
「早速本題に入るけど、最近知らないお花が届くのよ。しかも業者に頼んでいるのに何故か来るのよね」
「あのその話でひとつあるのですが、そもそもどうやってここにあるお花って発注しているのですか?」
「ん?あ~仕入れね。私のところはさっき言った通りだけど、業者に頼んでいるのよ。しかもちゃんとお花のカタログから丸をつけて頼んでいるの。まぁこんな感じかな」
「なるほど。一つ疑問何ですが、カタログから丸をつけて頼んでいると言いますが、それなら間違えるような事は無いんじゃないですか?」
「うーん私もそう思ったんだけどね、いつもカタログの作業はお父さんがやっているのよ。しかもいつも私達が寝た後にやっているのよ。だから誰も邪魔できないのよね」
「なるほどそうですか。では話はよく聞きました。最後にその花だけ写真を撮って今日は帰ります」
「そう?じゃあ行こっか」
そう言ったら部屋を出て、花がいっぱいあるところに来た。よく見てなかったから分からなかったが、たくさんの花があった。チューリップからラベンダー、そしてキンモクセイまである。やはり花は見てると気分がほんわかする。
「翔君。この花だよ。しかも二種類もあるんだよ」
僕はそう言われて、その二つの花の写真を撮った。よく撮れている。写真家の素質あるのか?
「ありがとうございます。今日はもうこれぐらいにして明日の放課後にまたご報告しますね。ではまた明日」
そう言うと、小学三年生ぐらいの男の子がお店の中に入ってきた。
「あ、お帰り~。お客さん来ているからね」
そう優さんが言っても、その男の子はなにも言わずに家の中に歩いていった。
「こら!挨拶しなさい。全く、ごめんね。うちの弟なんだけど人見知りみたいで」
「弟さんでしたか。まぁ人見知りならしょうがないのかな。何か元気無かったですね」
「あ~何か、これは本人の前では言えないんだけどね、なんか学校で好きな女の子が出来たらしいの。今時は凄いよね。しかも最近は寝不足みたいだよ。夜遅くになにやってんだろうね?」
「え?好きな人。告ったんですかね?」
「いや、そこまでさ、知らないんだよ。まぁあんまり深入りすると怒られるからね。ただでさえ弟はお父さんっ子だから」
「そうでしたか・・・あ、そういえば最後に一つ良いですか?」
「ん?どうしたの?」
「ちなみにお父さんっていないんですか?今日はもしかしたら出かけているとか?」
「んー、まぁ出かけているみたいだね。だから最近は私とお母さんで店番しているの。前まではお父さんも一緒に店番してくれたんだけどね。最近は家を出ることが多くて・・・」
「そうですか。ではまた明日」
「うん。またね」
僕はそう言って、家に向かった。
その夜、僕は今日お花屋さんの方で撮った写真を調べてみた。その二種類のお花が何なのかを調べた。深く調べてみると、詳しく分かった。一つがセントポーリアと言う花だった。そしてもう一つがゼラニウムと言う花だと言うものが分かった。どちらも美しいのだが、一つ引っ掛かる。それがどちらもどういう理由なのかだ。どちらも時期は良いんだが、誰がどういう理由でこの二つの花を選んだのかを知らなかった。まぁ暇だから調べるか。僕はこの二つの花の事を調べた。時期から名前の由来まで、深く調べた。するとあるページに目をつけた。僕はそのページをしっかり読んだ。そして、今日あった出来事を整理した。
「もしかして・・・あ!分かったぞ!」
次の日、いつも通りに授業を終えて、放課後を向かえた。僕は先に探偵部の部室に向かった。
「失礼します」
「あ!翔君。どう事件の方は?」
「事件の方なら大丈夫です。まず二人に頼みがあります」
「ふーん。翔くん。で、その頼みとは?」
「二人にこの事件の見届け人になってほしいです。ちゃんとその目でお願いします」
「ほう。解決したんですね?良いですよ。今は言えば暇なので見ますよ。ね?舞?」
「うん!行こっか。この難事件の真相を」
「ありがとうございます。ではお花屋さんの方に向かいましょうか。話はそこで」
そう言って、三人でお花屋さんの方に向かった。お花屋さんに着くと、優さんが店番をしていた。
「優さん?来ましたよ」
「あ!翔君。そして、舞と遥も。もしかして、解決したの?」
「まぁそうですね。まずお父さんと弟さん、そしてお母さんはいらっしゃいますか?」
「え?まぁ今日は珍しく全員いるけど・・・・」
「では呼んでくることは出来ますか?ご家族の方も関係があるので」
「う、うん。分かった。呼んでくるね」
そう言って、優さんが家族を呼びに行った。そしてしばらく待つとご家族が来てくれた。
「翔君。呼んできたよ」
僕は深呼吸を一回して話した。
「ご家族の皆さんわざわざ来てもらってすみません。えー呼んでもらったのは他でも無く、このお花屋さんで知らない花が来る事件の真相を話しに来ました」
「やっぱり分かったの?!犯人が」
「はい。まず知らない花が来る様にしたのは確かにそちらにあるカタログで丸がつけられているからでしょう。ただ、話はこれからです。大事なのは誰がつけたかですよね?」
すると、優さんのお父さんが、
「確かに。ただ俺は夜遅くに発注の丸をつけているんだ。もしかして俺だと言いたいのか?」
「まぁ確かに普通に考えればそうですね。ただ、この事件の犯人はお父さんではありません」
「何?じゃあ誰が?」
「それは・・・・弟さんです」
一瞬で静まり返った。すると、弟さんが、
「は?僕がやったって言いたいの?何より証拠が無いじゃないか?どうなんだよ!」
「まず一つ目の証拠はあなたが寝不足だと言うこと。優さんのお父さんは家族が寝た後に発注の作業をしていると言っています。おかしいですよね?何故なら寝不足になると言うことは夜遅くに起きていると言うことが原因ですよね?」
「な!じゃあただ単に夜中に目が覚めちゃっただったらどうするんだよ!だったら証拠になんねえだろ!どうだよ!」
「そうですね。確かにこれじゃあまだ証拠が不十分です。ただもう一つあります」
「あ?何だよ」
「それはこのセントポーリアの花にあります。分かりますか?ご家族の皆さん?」
「ん?何だろう?お母さん分かる?」
「さぁ、分からないわ」
「俺も分からないな。これは」
「おい。教えろよ。答えを」
「良いでしょう。答えはこの花の花言葉です。分かりますか?」
「花言葉?何て言うの?」
「セントポーリアの花言葉は「小さな愛」です。意味が分かりますか?」
「小さな・・・愛?何でまたそんな言葉?」
「それは弟さんから聞いてください」
すると、弟さんが焦った顔をしている。すると、お父さんが口を開いた。
「どう言うことだ?説明してくれ」
すると弟さんが、
「それは・・・全てお父さんが悪いんだ!!」
「な、俺が?俺が何したんだ?」
「お父さんは僕の自慢のお父さんだった。いつも優しくてお花の事も家族の事も可愛がっていた。なのに最近は昼間は出かけているし、夜しか会えない。そんな日常にも飽きてきたんだ。だからこういうことをしないとお父さんが見向きもしてくれない。だからだよ。お父さんは知らないんだよ。最近のお母さんの様子を」
「何?どう言うことだ?」
「最近お父さんがいないからお母さんの調子が悪いんだ。いつもは交代で店番をしていたのに、お父さんがいないからお父さんの分まで店番をしているんだ。優だって休みの日は手伝っている。僕だってそうだ」
「そうだったのか・・・」
場が静まっている。
「分かりましたか?そう、弟さんは家族仲良くなることを願っていたのです。ですが、一度に大きな愛をもらったところで受けきれないのです。ましてやそれでストレスがたまる可能性もありますから。だから弟さんはセントポーリアの花言葉にもある、「小さな愛」が欲しかったのです」
「そうか。俺も未熟だったみたいだな。毎日子供の事も嫁の事も考えずに行動してたな。それは本当にごめんな。ただ、俺だって遊びに出かけてたわけでは無いんだ」
「なんだよ?どこに行っていたんだ?」
そう弟さんが言うと、優さんのお父さんが部屋の奥に行った。しばらくすると、優さんのお父さんが出てきた。その手にはある花を持っていた。
「これを見てほしいんだ。この花を知っているか?」
「ん?何だよこれは?」
「これはな、ブルースターと言う花なんだ。これをお前らにプレゼントしようと思ってあちこちに探しに行ったんだ。そしたらあまりにも見つからなくて最後の方は諦めようと思ったんだ。そしたら最後のお店でたまたま見つけたんだ。俺は正直嬉しかった。見つかったことに。だが俺はその反面お前らに悲しい思いをさせていたんだな。悪かった。出来ればこの花と共に許してくれないか?この通りだ」
そう言って、そのブルースターを家族の方に向けて会釈をした。その時だった。優さんのお母さん、弟さん、そして優さんまでが涙を流していた。
「お父さん。私達のためにそんなことをしていたの?ありがとう」
「あなた。あなたは最高の夫よ。ね?そうでしょ?」
「う、ごめんお父さん。僕も言いすぎたよ。これからは家族仲良くしよう」
そう言って、優さんの家族が集まって、抱き合っていた。そうすると遥さんが、
「舞、翔君。私達はこれで帰りましょう。話はまた明日の放課後で」
そう言って、僕たち三人はそれぞれの自宅の方まで歩いていった。何故か心の中が温かくなっていた。
次の日の放課後。僕は恐る恐る部室のドアを開けた。すると、舞さん、遥さんが椅子に座っていた。
「失礼しま~す」
「来たわね。ではちょっとお話をするから座って」
僕はそう言われたので、椅子に座り込んだ。
「さて、早速だけど、昨日の件はお見事だったわ。まさか解決できたなんてね。とんでもない新人だね。私はなんか嬉しいわ」
「ありがとうございます。ん?新人ってことは僕は認められたことですか?」
「え?!まぁそう・・・かな」
「もう遥ったら。そういうことでよろしくね。翔君」
僕は正直嬉しかった。まさかちゃんと入部出来るなんて。すると遥さんが、
「ところで翔君。あの時、確かセントポーリアの花しか言ってなかったけど、もう一つは何だったの?」
「あぁ、あれはゼラニウムと言う花ですよ」
「そうなの。じゃあ何で優さんの弟さんはわざわざゼラニウムの花を発注したんですかね?」
「あーはいはい。それはゼラニウムの花言葉にあったんですよ」
「え?その花言葉ってなに?」
「あれはピンク色でしたね。ピンクのゼラニウムの花言葉は「決意」や「決心」と言う意味があります」
「決心や決意かぁ。そうだとしても何で発注したんだろうね?だって弟さんは家族の愛が欲しかったんだよね?」
「あの花は一本しかありませんでした。もしかしたら弟さんは誰かに思いを伝えるのと一緒に渡す予定だったんでしょうね」
「え?じゃあその渡したい人って?」
「さぁ、誰でしょうね~?」
そう言うと、遥さんが、
「さぁ、舞、翔君。話はそこまで。今日はもう帰っても良いわよ。明日からまた活動するからね」
僕は荷物をもって、ドアの方に歩いた。
「では、二人とも。また明日」
「うん!また明日ね~」
「はい。また明日」
僕はそう言って、部室を出た。下駄箱の方に向かうと、下駄箱の近くに誰かが立っていた。近くに行くと、優さんだった。
「あ!翔君。待ってたよー」
「優さん。どうしたのですか?何かありました?」
「あのね。昨日のお礼を言いたくて、あの後お父さんも店番をしっかりしてくれたからね、お母さんも元気になってくれたの」
「そうなんだ。良かったね」
「うん。ありがとう。あとセントポーリアの花の近くにあった一本のお花が無くなってたの。お母さんに聞いたら弟が持ってったらしいの」
「そうなんだ。うまくいくと良いね」
「え?何が?」
「何でもないよ。じゃあまた明日ね」
僕はそう言って、下駄箱から靴に履き替えて外に出た。すると、
「翔君!待って!」
僕はそう言われて、後ろを振り返った。
「どうしたの?」
「最後に一つ良い?あのお父さんが持っていたお花って何か意味があったの?」
そう聞いてきたので、僕は答えた。
「あの花?昨日の夜たまたま調べてみたんだ。あのブルースターっていう花わね・・・」
僕がそのブルースターの花言葉を優さんに伝えた。すると、優さんがはっとした顔をして、そのあとしばらくしてから笑顔になった。
「そうなんだ。ありがとうね!」
「うん。仲良くね。また」
僕はそう言って、帰り出した。今でも、その花の花言葉がずっと心の中に残っていた。
ブルースターの花言葉は・・・
「幸福な愛」「信じあう心」と言う。
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