第2話 入部試験 前編
「今日は夜にかけてよく晴れるでしょう」
僕は比較的に晴れよりは曇りの方が好みだ。小さいときは晴れてほしいと思っていて、何よりうんどうかいなどのイベントがある時は家族の誰よりも晴れを願っていた。だが、高校生にもなると晴れていると何故か気分がちょっと下がってしまう。理由としては、眩しい日差しを浴びるとだと思う。まぁ別に浴びたくないから外に出たくない訳では無い。そんなドラキュラと違って日差しを浴びると砂になってしまう体質では無いから、晴れになった日はついてないと思うだけ。それに比べて曇りは日を浴びないし、気温もちょうど良いから好きである。ほんと、毎日が曇りだったらドラキュラも生きていけるのに。まぁそんなことはどうでもいい。問題は今日の日程だ。学校に行くのは別に大丈夫なのだが、今日は休み明けの授業だけあって、眠くなる授業が多い。まぁうじうじしててもしょうがないし、着替えるか。今日はお父さんが朝早く仕事に行ったので、リビングで着替えても大丈夫だ。僕はそう思い、着替え始めた。うちの学校は制服がしっかりとあって、男子は下は黒のズボンに上は白の長シャツにネクタイと言う、なんともビジネスマンらしからぬ服装となっている。冬になると各々で上に羽織って良いらしいので、スーツだったり、パーカー風などのジャンパーを着るのだが、ある時にスーツ風の格好で登校していた生徒の一人がある会社の人に普通に挨拶されたと言う。挨拶ならまだしも、会社には慣れたか?などの後輩と先輩の会話になったらしい。まぁ無理もないな。ネクタイは各々好きなもので良いらしいので、僕は青っぽいネクタイにしている。生徒のなかには赤だったり緑だったり、時には柄がついているネクタイをつけている生徒もいる。人それぞれのあれなので僕が口出しを出来る立場ではない。
着替え終えると、僕はリビングのテーブルの上にある食パンを食べ始めた。近くに置いてあった、ハムも一緒に挟んで食べた。僕はシンプルなものが一番美味しいと思っている。そう思い食べ進めていると、すぐに食べ終わってしまった。食べるのが速いのか?僕は食べ終わった食器を流し台に運んで、手を洗った。いつでも清潔でいたいもんだ。手を洗い終わって時計を見ると、もう家を出ないと学校に間に合わない時間になっていた。
「やば!急がないと怒られる!」
急いでバックを持って、テレビと部屋の電気を消して、もう一度家の水道や電気を確認し、大丈夫だと分かったので、玄関で靴を履いて、家を出た。出た瞬間に日差しが僕を照らした。スポットライトぐらいに当たっている。僕が主役か?外に出たらミュージカルに繋がっている訳ではあるまいし。やべ、急がないと。僕はそう思いだし、自宅の車置き場にある自転車に乗り込んで、学校に向かった。この街は近くに海と大きな山がある自然に恵まれたところになっている。なのに都会と田舎の中心にある。自分でも意味が分からん。ほとんどが田舎だと思っているので、僕も昔から田舎だと思っている。学校は海沿いの近くに建てられていて、もうすぐ夏休みに入るのだが、夏休みに入ると、海辺には学生が多くて、出会いの場となりつつあった。僕には疎遠だけど。すると、海辺を走っていると、学校が見えた。あれ?よく見ると校門の辺りに人だかりが出来ていた。校門の方に近づいて、近くの男子生徒に聞いてみた。
「すみませーん。これは何の人だかりですか?何かあったんですか?」
すると、その男子生徒が声をおさえてこう答えた。
「あ~何かね、風紀委員がある生徒に乱れているって説教しているらしいの。しかもその生徒も自分が先輩だから良い気になるな的なことを言って、それに風紀委員がカチンときたらしくて、で、今でも口論しているわけ」
「な、なるほど」
そう説明されて、僕は近くに行くと、声が大きく聞こえる。
「あなたは反省の色が見えません!髪色も服装も違反ですよね?今すぐ直してきなさい!」
「うるさいな~。じゃあ聞きますけど~?生徒手帳には一文字もこの髪色も、服装の違反が書かれてないんですけど?別に悪く言うつもりはないけど、これって学校の責任なんじゃないですか?」
「な!?またそんなこと言って、何度も言わせないでください!一階の渡り廊下に貼ってある風紀委員が作ったポスターを見てませんね?ちゃんと学校をよくするために、身だしなみはしっかりとしてくださいと書いてますけど?見てないとは言わせませんよ?認めてください」
「ふーん?じゃあそれは学校側には認められているんですか?私聞きましたけど、あれって勝手に作ってるらしいじゃないですか?それってまるでここにいる私たちがあなた達の言いなり、奴隷といっても過言じゃないですよね?特に風紀委員の会長さん?どう思います?」
すると、見るからにメガネをかけて黒髪で、中学生かと言わんばかりの、制服を着ている女子生徒がその女子生徒に向かって歩いていった。
「ほーう?あなた面白いこと言いますね?まぁ確かにあのポスターの件は認めましょう」
「か、会長!」
「あなた達は黙ってて」
すると、場が静まり返った。
「へー?会長さん認めるんですか?じゃあ今すぐにでもあのポスター剥がしてくださいよ?」
すると、会長が一回深呼吸をしてその女子生徒にこう答えた。
「それは・・・出来ませんね」
「何故よ!だってそっちが個人で作っているのよね?何故剥がせないのよ?理由は?」
「それはね、あなたが原因なんですよ?」
「は?私が何したのよ?」
「ある時学校に一本の電話が来たらしいわ。その内容を言うとね。この学校は特に問題が起きてないから凄いですねと言う始まりだったわ。その後にある女子生徒の身だしなみは大丈夫なのですか?と言う事をいいだしたらしいの。もちろん私も後で先生に聞いて、調べてみたらあなただったのよ。その後も同じ内容の電話が後を耐えないらしいのよ?だから私達はしっかりと話し合ってあのポスターを作ったのよ。いい?あれは言ってしまえばあなただけに向けて作ったポスターなのよ?なのにあなたがいつまで経っても直さないから皆に迷惑をかけているのよ?いい加減意地を張らないで直したらどう?ね?」
優しいトーンでそう会長さんが言った。すると、その女子生徒が怒りをこらえたような顔をしている。
「な?!もういい!二度とわたしに関わらないで!ふん!」
そう言って、足取りを重くしたような感じで校舎の方に向かってしまった。その後会長さんもため息をついて校舎の方に歩いていった。すると周りで見ていた生徒達も慌てて校舎の方に歩いていった。僕も早く向かわないと。そう思って僕は自転車を押しながら自転車置き場に向かった。自転車置き場にはもう既に数台が止められていた。止められないかと確認すると奥の方が空いてあったので奥まで自転車を持ってて無事自転車を置けた。校舎の方に向かうと先ほどの騒動があったこともあって、人だかりになっていた。僕はすいませんと言いながら人の間をすり抜けって下駄箱に向かった。無事に下駄箱の方に行くと、靴を履き替えて自分の教室に向かった。僕たちは二年生なので校舎の二階になっている。ちなみに三年生が一階で、一年生が三階となっている。僕は早歩きで階段を上っていって自分の教室に向かった。二年生は全てで三クラスで、僕は二組に入っている。僕は階段を上って、渡り廊下を見ると、まだ友達同士で会話を楽しんでいる人が所々にいた。良かった。間に合ったみたいだった。僕は歩いて教室に入っていった。すると、教室の中でも話し声が聞こえてくる。別に悪くない。僕は静かな方より、騒がしい方が落ち着くからだ。すると、後ろから、声が聞こえた。
「おはよう翔くん!元気そうだね~」
振り返ると、舞さんだった。
「おはよう舞さん。舞さんこそ元気そうだね」
「もちろん!元気が一番!朝から運動したら気持ちよくて~」
「へぇ~運動しているんだ。何の運動したの?ランニング?それとも体操?」
「もおー、私そこまで年取ってないよ?違うよ。うちの庭見たでしょ?バッティングだよ。バッティング。うちの庭にバットとボールがあったでしょ?見てなかったの?」
「あれ?そうだったっけ?よく見てなかった。ごめんよ。しかしバッティングかー。僕も結構好きなんだよね。野球とは」
「そうなの?!意外だねー。じゃあ今度一緒にやろうよ。うちでさ」
「うん。今度やろうね。あ!もうチャイムなる。早く席に着こうか」
「そうだね。じゃあ放課後でね」
そう言い、お互いに自分の席に着いた。そして席についてしばらくしてから担任の先生が入ってきた。二組の担任の先生は女性の先生で、最近入ってきたのではないかの噂が出てきているほどの若さを誇っている。その美しさに何人もの生徒が虜になっていた。
「はい。皆さんおはようございます」
「おはようございます」
「はい。皆さん良い返事ですね。今日は通常の日課になっています。休み明けで疲れが残っている人も頑張ってくださいね。では終わります」
そう言って、先生が教室を出ていった。もうすぐで授業が始まってしまう。まぁ頑張るか。
授業をいやいや受けてついに来てしまった放課後の時間。授業があったからなのか、元気があまりない。その状態のまま、昨日舞さんに言われた通りに部活動に参加しないといけない。舞さんが入っている、探偵部の部室は三階の一番左の方にある、小さい教室が部室だと言っていた。僕はその教えをたどりに、三階に上って、一番左の方に向かった。そこに着くと、探偵部と書かれたプレートがドアに掛かってあった。僕は深呼吸をして、勇気を振り絞ってドアを開けた。
「失礼しまーす」
ドアを開けると、本棚が多くあって、それだけ本がつまっていた。横に長い机の上には資料のようなものがきれいにまとまっていた。
「あ!翔くん遅いよー。ほら座って!」
「それでは失礼しま~す」
僕は舞さんの向かい側のパイプ椅子に座った。何故だか落ち着かない。
「さて。それでは改めて説明するね。ここはあらゆる事件の解決をモットーに行っているの。まぁまだ解決数は少ないけどね。けど!翔くんが入ってくれるから、もう先生にあれこれ言われることはないからね。さぁもう一つの問題は部長なのよね~。もう少しで来るから待っててね」
そう言って、少し待っているとドアを開ける音が聞こえた。
「あ!お帰・・・」
「舞。聞いたよ?その子でしょ。新しい部員って?私はまだ認めてないからね?」
そう聞こえたので振り返ると、黒髪のロングで、服装は黒を基調にしたセーラー服に、下はミニスカートとストッキング?みたいなものをはいている。
「もー。そんなこと言わないでよ。あ、翔くんこの子が部長です。ほら挨拶」
「あ、日高翔と言います。よろしくです」
「よろしく。私は部長の深島遥と言います。遥でも深島でもどっちでも良いですよ」
「はぁ。よろしくお願いします。深島さん」
そう挨拶をすると、深島さんが手に持っていた資料を机に置いて、僕の方を見てきた。
「さて。早速本題に触れるけど、あなたはこの部活に入ってくれたのは実に嬉しいわ。ただ、この部活は軽い気持ちでは足手まといになるのを分かってほしいわ。だからあなたのような生半可な感じで来られるとこちらもはっきり言って迷惑なのよ?入ってくれたのは嬉しいけど・・・」
「遥!そんなこと言わないの。翔君だって覚悟は出来ているし、ちゃんとしているよ。遥こそ部員が三人になって嬉しいでしょ?正式にしっかりと活動出来るんだよ?ね?」
舞さんがそう言うと、深島さんがため息をついた。そしてある提案をしてきた。
「はぁー。じゃあこうしましょ。別にあなたを追い出す気はないわ。ただあなたのやる気を見てみたいの。なので一つ課題を出す。それはね、今私達が苦戦している難事件をあなた一人で解決できたら、正式に認めるわ。それが条件よ」
「難事件ですか?しかも一人で・・ですか?」
「ちょっと遥!あの事件は私達でも無理だったのに、それを翔君一人でやらせるのはさすがに無謀だって。しかも何でこんな条件を?」
「何故って?私達が今まで解決した事件のなかで何個もあったでしょ?ひとりでも解決したのがあったでしょ?それを新人だから一緒にやろうって、それは甘えじゃない?さすがに舞からの頼みであろうともこの事は、私と翔くんの問題よ。さて、翔くんはどうする?受ける?受けない?」
僕は考えた。受けないとこの部活からは追い出されて、一人になってしまう。それは嫌だ。せっかくの居場所だ。
「分かりました。受けます。ただこちらからも一つ頼みがあります」
「ん?何でしょう?」
「もし解決できたあかつきにはちゃんと認めてくださいね?それが条件です」
「ふん。良いでしょう。まぁ解決出来たらの話ですけどね。せいぜい頑張ってくださいね」
僕は決意を固めた。これから僕の普通じゃない日常が始まる事になってしまった。
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