五年


[...ANDROID-YEN-02R PLAY MEMORY:REPEAT = HUMAN RIN...5th]



 リンが死んで五年が経った。


 最近はアラーム音より先に目を覚ますことが普通になっていた。

 早いときには夜中に目が覚めることもある。

 不思議な感覚だった。本来アンドロイドの睡眠は機械のスリープ状態に近いもので、意図せず目を覚ますことはない。さらに睡眠量で不調に繋がることもなく、そのことにより行動を制限されることもない。

 けれど私の身体は寝台から起き上がる度に重く感じていた。

 すぐに動き出すことが出来なくなっていた。

 原因は、分かっていた。


 ――リン型アンドロイドとの生活だ。


 繰り返す同じ日々、心を押し殺す毎日。

 それを何年も続ける内に、私の心身に影響を及ぼし始めている。

 今まで内に潜んでいた心の摩耗が身体にも現れ始めている。


 このままこの生活を続ければ、どうなるのだろうか。

 もしかしたら私の心は壊れてしまうのだろうか。

 この身体を動かすことすらも出来なくなるのだろうか。

 ……けれど、そうなると分かっていても止めることはできない。

 リンの声が聞こえないシェルターのほうが私には耐えられない。

 たとえ過去に囚われ続けることになっても、


 今さら私にはもう、今も、未来も、見ることはできないのだから……。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る