ゆきんこのてぶくろ

ハシバミの花

いち

 きのうのよるからゆきがふったので、まどのそとは雪がつもっていました。

「おそとまっしろだ」

 たーくんが、いました。

「はーっ」

ってガラスにいきをはくと、まどガラスもしろくくもります。

「れっどー、ぶれいくん!」

 たーくんは、おにいりのヒーローをゆびでかきました。


 レッドブレイクンは五人組ごにんぐみヒーローのリーダーです。

 いちばんつよくてカッコいいから、たーくんはレッドブレイクンがだいきなのです。

 赤い手ぶくろをおねだりしたのだって、レッドブレイクンみたいになりたいからなんですよ。


「たあっ、たあたあっ、たあああ!」

 そのままブレイクンファイブごっこです。

 手足をふり回して、おそいかかる敵たちを次々にやっつけます。

「みんな! ぼくのもとにあつまるんだ! ふぁいぶーあろー!」

 部屋にいるのはたーくんとまだあかんぼうの妹だけ。ベッドで天井を見あげてる妹は、もちろんいっしょにあそんではくれません。

「りーちゃんはやくおーきくなってあそぼーねー」

 ベビーベッドのさくにもたれ、ミルクのにおいのするりーちゃんの顔をのぞきながらたーくんは言いました。

「ぼく、れっどがいちばんすきだけど、りーちゃんなられっどさせてあげてもいいよー」

 りーちゃんは、キラキラした目でたーくんを見ています。

「ほら、れっどのじゃすてぃーふぃすと!」

 お気にいりの赤いてぶくろを、りーちゃんに見せてあげます。

「ほら、ここに、ぼくのなまえがかいてあるでしょ。おとうさんが、マジックでかいてくれたんだよー」

 りーちゃんはきゃらきゃらとわらって「んまんまうー」と言いました。

 まっ赤な手ぶくろは、手のこうのところに大きな雪のがらがぬいこまれていて、かわいくてかっこいいのです。

 りーちゃんもたーくんの手ぶくろが気にいったらしくて、小さな手でつかんで、そのまま口にいれてしまいました。

「あーあだめだよりーちゃん。手ぶくろは食べられないよ」

 手ぶくろをとり上げようと引っぱってみましたが、りーちゃん、ぎゅっとつかんではなきません。

 つよく引っぱったら、りーちゃんの生えかけの小さな歯がぬけそうでこわいので、たーくんは

「しかたないなー、ちょっとだけかしてあげるよ」

と、あきらめてそのままにしてあげました。


 そこにお父さんがやってきて言いました。

「たーくん、雪だるまつくろうか!」

「つくる!」

「雪いっぱいふったから、大きいのつくれるぞ!」

「こんなのつくろうよ! こーんなこーんな、ぼくよりもおおきいの!」

 お父さんはたーくんにジャンパーをきせながら、

「たーくーん。手ぶくろは?」

「りーちゃんに、かしてあげてる」

「いいのかい?」

 たーくんは少しかんがえて言いました。

「うーん、りーちゃんだからいいよ」

「そうかい。えらいぞお兄ちゃん」

「うん!」


 二人が部屋をでてゆくのを、りーちゃんがじっと見ています。

 キラキラした目で、たーくんの手ぶくろをしっかりとにぎりしめていました。


近況ノートにイメージイラストあり↓

https://kakuyomu.jp/users/kaaki_iro/news/16817139559115093354

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