第21話

結城部長に檄を貰ってから

良太は、新規営業先を1ヶ月で

13軒回る事を達成出来た。

その中の2軒は、契約もとれて

まずまずの結果だったが、

これで満足するわけにはいかない。


契約が取れた事だけでもラッキーだったが

実力で取れたとは思っていない。

ちゃんとした知識を活かして

ラッキーではなく当たり前に

契約が取れるようにならなければと

気持ちを引き締めていたのだ。


結城部長の話を聞いていた

同期と後輩にも負けたくなかったが、

みんなもいい結果を残していた。


だが、経験が大事な事はよくわかった。

新規の営業先を回る事にも

緊張はするが

悪い緊張ではなくなっていった。

いい意味で慣れて来たのだ。

経験する事で慣れが生まれる。

良くも悪くも慣れるのだが

悪い慣れにはならない意識を

しっかり持たなければいけないとも思った。



今日は、朝礼の後

営業会議があったので

会社に残り会議に参加した。


今の実績の報告や

今後の方針などを話し合い

取り決めを決めて会議は終わった。


結城部長は、会議の時間も短く

必要以上に長引かせない。

会議をするなら営業回りを増やして

実績を積んだ方がいいと思っていたからだ。


必要な事は、会議だけではなく

仕事中にも伝えれば、

会議の時間を短縮出来るし

仕事も円滑に回ると言ってもいた。

情報の共有のために

色々と忙しく動いているのだ。


会議何終わり営業回りにも行く前に

先輩の一人が


「あぁ楽して稼げねぇかなぁ。」


と、言っているのが聞こえた。

結城部長にも聞こえたらしく

その先輩の方に行き

結城部長は、


「庄司、楽して稼ぎたいのか?」


と、尋ねていた。

先輩の庄司さんは、

急に、

結城部長に聞かれて焦ったのか


「えっ、えっと

楽して稼げればなぁと思いまして。」


と、しどろもどろになりながら答えていた。

すると結城部長は


「庄司!楽して稼ぐなんて目標じゃダメだ!!」


結城部長が、珍しく怒っているのかと思って

みんな固唾を飲んで二人の様子を見ていた。


「庄司!

楽して稼ぐではなく、

目指すなら、

何もしないで稼ぐにしなさい!!!」


と、言っていた。

固唾を飲んで見守っていたみんなも

唖然としてしまったが

思わず笑ってしまった。

確かに楽して稼ぐより

何もしないで稼げた方がいい。


「庄司!この後の予定は!?」


結城部長が庄司さんに尋ねると

庄司さんは、


「新規の飛び込み営業に行こうと思ってました。」


すると結城部長は、


「よし!

今日は俺と一緒に

俺の取引先回りをするぞ!!!

将来、何もしないで稼ぐために

今は必死に働かなければならないんだぁ!!!

準備して行くぞ庄司ー!!!」


結城部長に連れられて、

庄司さんは、結城部長の取引先回りに

出掛けて行った。


結城部長は、

本当にユーモアのある人だし

仕事にやる気を出させてくれる。


良太は、

いつかあんな人になりたいと思い、

結城部長の事を

目標にする様になって行ったのだ。




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