第13話

四度目の寝取られを経験した良太は、

次の日出社すると会社の人たちに

目が腫れている事をいじられていた。


「どうした?目が凄いことになってるぞ?」


いじられていた中に上司までいた。


「昨日ちょっと色々ありまして…」


と、嘘をつけない良太は、

濁しながらそう言うと、


「熊谷、彼女と別れたんだろ!?」


図星だったので


「なんでわかったんですかぁ?」


叫んでしまった。


「あっ」


と、口を押さえたがもう遅い。


上司はニヤっと笑い、


「よしお前ら!

今日の夜は空けとけよ!!

熊谷の慰め飲み会だぁ!!!

もちろん熊谷は奢りだ!」


上司が良太のために呑みに

連れて行ってくれることになった。


その場にいた他4名も一緒に。


「俺たちの分も奢りっすよね?」


と、一人が聞くと


「お小遣い制の俺が出せるのは

熊谷の分だけだな!!!」


ドヤ顔で上司が言っていた。

他4名は、ブーブー言いながらも

みんな来てくれることになった。


上司の名前は


結城部長


30代にして営業部長にまでなった

やり手で仕事も出来る優秀な人だった。

部下からの信頼も厚く

みんなに慕われていた。


良太も、営業の仕事を始めてから

いつも助けてもらっていたのだ。


良太が入社した時は、

まだ課長だったのだが

その当時の滝田部長が

不慮の事故で亡くなってしまった。

滝田部長も仕事が出来、

良太達にも優しく

信頼されていた人だったので

悲しくてたまらなかった。


滝田部長の代わりに結城課長が

部長に大抜擢されたのだ。


結城部長は、

仕事もでき、会社からも部下からも慕われて

綺麗な奥様と可愛い子供が二人と

絵に描いたような人生を送っている。

そんな人だったのだ。



良太は、

結城部長と出会ったことにより

男としても

人間としても

成長していくのであった。




今日の仕事が終わり


結城部長と共にみんなで呑みに向かった。

幸い明日が休日の為

たっぷり呑めると

みんな張り切っていた。


良太は、


「俺の励ます会ですよね?」


と、みんなに確認したくらい

忘れられていた。


「そ、そうに決まってるだろ!

なぁみんなぁ?」


棒読みで結城部長が言っていた。

みんなも


「わわ忘れるわけないだろ!

なんでも聞いてやるぞ!」


と、棒読みだった。


解せぬ、解せぬが仕方がない。

良太は、諦めてついて行くことにした。


居酒屋に着き、

お疲れの合図でみんな呑み始めた。


みんなはそれぞれ

結城部長に会社の愚痴を言っていた。


昔は、上司のありがたいお話を聞くのが

飲み会だったのだが、

今は逆なのかもしれない。


結城部長は、

みんなの愚痴を聞きながら

的確なアドバイスをしていた。


そんな中、

ようやくみんなは、

今日の趣旨を思い出してくれたようだ。


みんな顔を見合わせて、


「良太!大丈夫だぞ!

女なんて星の数ほどいるんだから!!」


と、励ましとけばいいみたいな言い方で

同期が言ってきた。


それを皮切りに

みんな励ましの言葉とも言えない事を言っていた。


結城部長が、


「熊谷、彼女となんで別れたんだ?」


と、一番話さなきゃいけない事を聞いてきた。


昨日あった出来事

今までの出来事を

端折りながら話した。


みんな引いていた。

引き攣った笑いで

良太を見ていた。


「流石に4回は凄いな…。」


結城部長も良太に同情していた。

すると結城部長は、


「俺も昔な

結婚を考えていた彼女を

寝取られたことがあったんだ。」


結城部長のようなイケオジでも

寝取られる事があるのかと

良太を含めみんな驚いていた。


「俺は1回だけだぞ!

だからなんとなくな、

熊谷がその時の俺と

同じような雰囲気だったからな

彼女と別れたんだと思ったんだよ。」


そのあとは

寝取られた時の話、

どうやって立ち直ったと言う話をしてくれた。


ポジティブに考えれば

確かに次に進める。

良太は、


「ポジティブモンスターになってやる!」


と、心に誓った途端、


「ポジティブに考える事が大事だと

その当時は本当に思っていたんだ!

でもな、

ポジティブだけでも良くないんだよ。

ネガティヴな感情も大切なんだ!

辛い時はポジティブな感情が大事だと思う!

けどな、

楽しい時や上手くいっている時ほど、

ネガティヴな感情が大事なのかもしれないな。

そう言う時は、きっと調子に乗る

いつまでも

上手くいく時間が続くわけではなんだ。

だからこそ、

ネガティヴな感情を使って

調子に乗り過ぎないように

抑えることも大切なんだ!

私生活で言えば

リスクマネジメントだな!

リスク=ネガティヴな考え

起こり得る全ての物事に置いて準備すること。

これをする事で

失敗しても

次の策をすぐに実行出来る。

だからこそポジティブだけでも良くないんだ。

ポジティブが良くないのではなく

ネガティヴも持ち合わせる事が大切なのかもな!

自分の心を守る為にも大事だぞ!」


と、深い話になって

みんなも真剣に聞いていた。


「説教臭くなるから

あとは、楽しもう!!!」


と、結城部長は一気に話を変えて

爆笑を誘っていた。


場の作り方がすごく上手いと思ったし、

ポジティブとネガティヴを

持ち合わせるなんて考えてもみなかったq。

良太は、しっかり理解できるように

これから考えながら行動する様にしたのだ。


帰る時間が近づき、

結城部長が、トイレに行っている間に

みんなもさっきの話をしていた。

一人一人の心にちゃんと刺さっていたようだ。


結城部長がトイレから戻り

帰ることになったので

みんなは会計の準備をし財布を出したが、

会計ののところまで行くと


「会計はもうお済みですよ?」


と、言われた。

結城部長がトイレと言いながら

会計を済ませていたのだ。

イケオジだ!

こんなおじさんになりたい!

みんなそう思ったに違いない。


結城部長がみんなに慕われる意味がわかる。


「ご馳走様でした!!!」


みんなで、結城部長に御礼をして

その日の飲み会は、解散となったのだ。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る