第19話 文化災、噴火災、鎮火災(ミクル視点)

「では、三年生最後の文化祭の出し物を決めたいと思います」

「それで何でウチら四人だけなん?」

「えっと話せば長くなりますが……」


 私はケセラさんに分かりやすく説明する。 

 ことの流れの発端ほったんがこうです。

 試験には出ませんが、要チェックですよ。


「昔々、あるところに三十名のクラスメイトがいました」

「いきなり昔話口調になるんやな」

「とあるクラスチェンジによってクラスメイトから村人になった人たちは……」

「ちょいまち」

「……小野小町」

「おもちゃのマーチですわ」


 お三人さんの言うことが変ですね。

 そんな町は地方にもないと思いますが?


「クラスメイトはどこに行ったん?」

「だからクラスチェンジしたんですよ」


 何ヵ月おきにくじ引きという運命により、席替えを繰り返し、少しずつ成長するクラス。

 そのためのクラスメイトですよね。


「はあ……もういいや。話を続けて」


 ケセラさんが頭を掻きながら渋い顔をしています。

 渋柿味の飴でも舐めたのでしょうか?

 まあ、人の好みはよりけりですので、深くは触れないようにしましょう。


「村人たちは炎の出る武器ライターを構えたまま、校舎で椎茸栽培用に陰干ししていたまきに火をつけると、とんでもなく火が燃え広がりました」

「椎茸に罪はないけど、それはあかんヤツやな」


 ケセラさんが腕を組んだまま、うんうんと頷いています。

 はい、放火の罪は重いですからね。


「そこへたまたま近所でドジョウすくいの練習をしていたサラリーマンのおじさんにより、校舎の炎は早急さっきゅうに鎮火されました」

「……そう、サラリーマンはサラリとこう言った」


 さあ、ジーラさんが独特のギャグを織り交ぜてきましたよ。


「……働かざる者食うべからずと」

「ジーラ、それ火を消した方が正しい選択ということですよね?」

「……流石さすが、正解率100%の姉貴は話が分かる」

「リンカはお姉さんじゃないですけどね」

「……そう、ジーラはア○ゾン川から拾われた」

「いつ拾ったのよ‼」

「……ネットという海でポチポチと」

「ネットサーフィンしても妹なんてポチらないわよ!」


 ジーラさんとリンカさんが本当の姉妹のように口喧嘩を始めましたよ。

 まあ、名残惜しいですが、私の話を続けましょう。


「サラリーマンはそれから教職を目指し、体力作りも兼ねて、毎日近所の学校のグラウンドでマラソンの練習をしました」

「いや、不法侵入にならん?」

「実は校長とお知り合いでしたので」

「何かゲームのような設定やな……」


 ケセラさんが頭を抱えながら、こんの脳みそが怖いわとか言ってますが、別に怖い話じゃないですよ?


「そして念願の教師になった元サラリーマンは生徒たちを後ろ盾にして、こう言いました」

「えらい臆病で陰キャな先公やな。それで何て?」

「もう出し物なんて面倒だから、くじ引きで考える相手を選びなさいと」

「そんでウチら四人が選ばれたのか」


 ケセラさんがゲッソリとした顔で私を見ていますが、そんなにイカのゲソが食べたいのでしょうか?

 ぴりりとした七味に絡めたマヨネーズの味が何とも言えません。


「いえ、多数決でも決まらないので私が推薦しました」

「おい、勝手に決めんなよ‼」


 ケセラさん、何で激怒しているのでしょうか。

 第二次創世記(成長期?)で親に反抗する思春期とかですか?


「あっ、違いましたね。先生に対する忠実なしもべたちでした」

「……初期装備なし、金無し、レベル1」

「まあ、そんな状況ならヒモになるしかないですわね」

「……扶養家族が何ちゃら」

「じゃあ、リンカの屋敷の召し使いにしようかしら」

「……飯ならカレー飯がいい」

「ああー、人使いの荒いご主人様ですわ」


 ジーラさんとリンカさんが今日の晩ご飯の話を始めました。

 でも私のお話はこれからです。


「それで文化祭の出し物を決めようと皆さんを呼び寄せたのですが?」

「なるほど、そういうことなんやね」


 答えを見抜けたクラスメイトほど怖いものはありません。

 さあ、真実の口に金貨を握った手をお入れなさい。

(※明らかに詐欺です)


「……猿も木から落ちる」

「ジーラ、それ遠回しにウチがアホということよね?」

「……慣用句に罪はない」

「言葉のあやと言うものですわ」


 ジーラさんを庇う形になるリンカさん。

 その体勢、ツイスターゲームが絵になりそうですね。


「おい、お前ら。後で屋上に来いや」

「……わーい、お弁当に呼ばれた♪」

「リンカもお呼ばれですよね?」


 ジーラさんとリンカさんがとても楽しそうに小躍りをしています。

 そう、その技のキレが見たかったのです。


「まさにア○ヒーウルトラドラーイ! です」

「ミクルちゃん、未成年の飲酒は駄目ですわ」

「……飲んべえは人生の別れ道」


 転校生二人が慌てて止めるのを見て、私も大切にされてるんだと感じました。

 これを機会に養○酒デビューです。


「ああ、そうじゃなくて出し物の話ですね」

「もう適当でいいんちゃう?」

「ならお化け騙しか、葡萄グレープ屋さんですね」

「いや、その二つはおかしいやろ!?」

「ケセラさん、客商売とは騙してナンボの世界です」

「……ほうほう。カキカキφ(..)」

「黙ってメモをとるなやー‼」


 こうして文化祭の出し物は葡萄グレープ屋さんに決まりという案は却下され、パンケーキ屋さんになりましたとさ。  


 さあ、当日はじゃんじゃん、お好み焼きを焼くよー‼

 味はお好みで♪

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