第5話 ジャガイモ、プチプチ、ゴールデンウィークの潰しかた(ミクル視点)
「ケセラさん、もうすぐゴールデンウィークですね」
「そうやな。4月もあっという間やったわ」
「……強引矢のごとし」
「ジーラ、その言い方はおかしいわよ。それ本当は光陰よね?」
「……自分はいつだって本気」
「「パワハラになるでー‼」」
教室でのお昼休み、四人で仲良く談笑する中、ケセラさんとリンカさんの息の合ったツッコミが炸裂しました。
ジーラさんは……ご無事で何よりです。
「それでケセラさんは何かご予定はありますか?」
「うーん、今年の休みはさ、実家に帰らないといけんのよね」
「もしや、ご家族に付き合って間もない彼女さんの紹介でもするのですか?」
「ちゃうちゃう」
ケセラさんが否定しています。
私の読みが外れましたね。
「……チャウチャウは犬でもある」
「それも違うで」
「……クーンクーン」
「ジーラ、犬の鳴き真似をしても無駄ですよ」
「……Y○utubeの視聴者集め」
「さりげなくスマホでウチを撮影するのやめん?」
ジーラのスマホをケセラが奪って、リンカにパスし、その本人であるジーラの机の中に滑り込ませるリンカ。
スリーポイントシュート。
ナイスコンビネーションとはこのようなことを言うのでしょう。
あまりもの素早い仕草に私は指をくわえて見ることしかできませんでした。
「もしかしたら前世はクノイチだったかも知れませんね」
「……全然前世」
「そんな前世やったら、ウチ今ごろ手裏剣を鞄に入れとるやろうな」
「……ヒトデで代用」
「やらんわ!」
ケセラさんもジーラさんの相談に乗ってあげてお優しいですよね。
「それでどうして実家に帰るのですか?」
「……ハムスター、ハム吉右衛門の供養」「ちゃうわ!」
ケセラさんのお話によると今回はお祖母ちゃんが久々に実家に帰ってくるため、孫娘のケセラさんが率先して面倒を見ることにしたそうです。
ちなみにハムスターは飼っていませんし、吉右衛門という昔ながらの名前も付けないようです。
「……そんなのシルバーウィークでやればいい」
「ジーラ! そんなことを言っては駄目よ。あなただって祖母が帰って来たら優しくもてなすでしょ?」
「……おもてなC?」
「そうよ。ちょっと発音が変だけど」
「……清涼飲料水」
ジーラさんの話を聞いていたらジュースが飲みたくなってきましたね。
今から購買の自販機に行きますか。
****
「うーん、どうしましょうか……」
自販機には私の欲しかった飲み物は売り切れで変わりに炭酸系の飲み物が残っていました。
炭酸、魅力的な言葉ですが、ダイエット中の女性にとっては危険な飲み物です。
「しょうがないですね。今日は炭酸にしますか」
私がボタンを押そうとした横目にジーラさんが教室での私みたく、指をくわえて私の動きを見ていました。
「……いい女は炭酸なんかに
「ジーラさん……」
私はジーラさんと目が合い、二人はしばらくの間見つめ合っていました。
もっともッとトキメクですか?
「ジーラさん、そんなに炭酸が欲しいのですか?」
「……コークハイ」
「普通にコーラで良くないです?」
「……背伸びしたいお年頃」
未成年がお酒に手を出したら背伸びどころか、背筋が凍りそうですけどね。
「所でジーラさんはゴールデンウィークの予定はあるのですか?」
「……リンカと旅行」
「へー、良いですね。どこに行くのですか?」
「……北極星」
「へー、宇宙旅行なのですね」
「……買って安心宇宙旅行」
ジーラさんが映画のチケットを私に見せてきました。
隣街まで映画鑑賞に行くのですね。
「……ちなみにホラー映画」
「なるほど。リンカさんはホラーは大丈夫なんです?」
「……腰を抜かしたことなら何度も」
「全然駄目じゃないですか!?」
私はジーラさんの両手を握って、きちんと説明をしました。
親友なら相手が嫌がることはやらずに相手の意見も尊重してあげることも。
「……ここでの村長は校長先生」
「えっ? まあ校長先生は尊重すべき存在ですが?」
ジーラさんは何を言い出すのでしょう。
突然、校長先生の話になって……。
「お熱いお二人さん、ちょっとどいてね」
そこに私たちの間に割り込んでくるケセラさん。
「えっと、罰ゲームのおしるこはと……」
どうやら彼女も喉が渇いたようです。
目が血走っていて、ちょっと違う様子でしたが……。
「まあ、ウチは嫌やな。貧血という尊い犠牲者が出るから」
「確かにお話が長いですよね」
「……校長の話で一冊の小説が完成」
「「買わんわ!」」
皆さん、今度の連休は色々とご予定があるのですね。
高校最後となるゴールデンウィーク、私も大切に過ごしたいものですね。
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