第5話 碧を探して
長年の羽美への想いを断ち切るとようやく私は決めた。その為に、中学二年生の夏、羽美と二人きりで行った思い出の海に来た。
お昼頃には海に着いた。そして、あの時と同じく夕暮れまでいた。
夕暮れによって碧に光る海。それはまるで宝石のようだった。そして、あの子そのものだった。私から見たあの子はこんな風に輝いていた。
碧く光る海を眺め、羽美への恋心を認めたあの日を思い出す。
あの頃が一番楽しかったな。あれが青春だったんだな。
羽美との思い出を忘れるために来たのに、逆に色んなことを思い出してしまう。
羽美に慰めてもらったあの日。羽美の優しさに触れた。きっと、その時に惚れたのだろう。
羽美への想いを忘れるなんて無理だ。
そうだ、この綺麗な思い出の碧い海で全てを終わらせよう。
涙を浮かべながら、海へと向かう。
その時だった。
「奈々!?」
羽美の声がした。
振り返ると、羽美がいた。
幻覚かと思った。
羽美はこう言った。
「奈々……。また会えるなんて思ってなかった。高校の時に急にいなくなったから、心配したんだよ。その時にね、奈々がいなくなって気づいたんだ。私は奈々のことが好きなことに。奈々が側にいてくれるだけで幸せだったことに。奈々が私の初恋なんだよ?」
羽美を見ると、泣いていた。
私はその時、羽美の言っていることが理解できなかった。
「奈々。好きだよ。」
その言葉に私は泣いた。
両想いだったんだ。忘れようとしていたこの想いは忘れなくていいんだ。
嬉しかった。そして、とても辛かった。
長く本当に長い片想いの時間。
私が臆病じゃなかったら。友達から疎遠にならなくて、友達から恋人になれたんだという後悔。
でも……。今は臆病になってはいけない。
今は、ちゃんと私の想いを伝える時だ。
「私は、中学生の頃から好きだったよ。今もずっとずっと好きだよ。」
私たちは碧く光る海を背景に抱き合った。
あの日見た海は一生忘れたくても忘れられないそんな景色だった。
終
碧を探して 長月桂花 @Keika_Nagatsuki
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