第33話  ハロルド視点2 キャサリンの障壁の凄さに気付きました

そのパーティーで、キャサリンとの付き合いは終わりだと思っていた。とりあえず、助けた形になってしまったが・・・・。


巷では王太子が聖女との恋路の邪魔になったので、大階段から突き落とした可哀想な婚約者の公爵令嬢を助けたとのことで、俺の株は爆上がりした。


いや、それはとても困ったことになった。出来る限り目立たないようにしていたのに、その苦労がパーになった。

その後、ロンド王家からは白い目で見られるわ、聖女からも嫌われるわで最悪だったのだが・・・・


平民やその他無関係な貴族からはの目は好印象になったのだ。ベルファスト王国出身の騎士ハロルドの人気が隣国で上がってしまったのだ。


シェフィールド公爵からは娘を救ってくれて感謝の言葉もないと丁寧なお礼を直接言われた。


「王太子に婚約破棄されたところの娘だが、もし、ハロルド卿がよろしければ、嫁として迎えてやっては頂けまいか」

とまで言われたのだが、それは丁重にお断りした。


あんなじゃじゃ馬キャサリンは俺としてはお断りだ。


公爵は残念そうにしていたが・・・・。


音沙汰なかった父からは一度帰って来いと連絡まで来たのだが、今更帰るつもりはなかった。



しかし、そこへ、遊学する娘のために、ケタリング伯爵家まで娘を送ってもらえまいかと公爵から直々に依頼を受けたのだ。


聖女の周りが胡散臭いらしい。まあ、乗りかかった船だ。ついでに辺境伯の領地でも久しぶりで訪ねようと思った。




婚約破棄されて断罪されそうになったキャサリンは行きの馬車の中ではとてもご機嫌だった。


何がそんなに嬉しいのか判らない。


「殺されそうになった悲劇のヒロインを助けた騎士、ハロルド、公爵令嬢と新しいラブロマンスが生まれるのかも」

キャサリンが独り言を言っているが、


「生まれるか。そんなの」

俺は即座に否定した。こんなワガママ令嬢の相手は無理だ。

まあ、馬車に乗っている限りはそうは思えないが、猫を被っているに違いない。


「すいません。テルフォード様にご迷惑をおかけして。私も命が惜しいので」

キャサリンが俺を連れてきたことにしおらしく謝ってきた。


「本当に襲ってくるのか?」

俺は半信半疑だったが、


キャサリンは聖女が絶対に襲ってくると考えているようだった。

そこまで聖女を虚仮にした自覚はあるみたいだった。

途中でやめれば良かったのにとと言うと、


「私にも意地がありますわ。元々私は殿下の婚約者だったのです。その私をここまで蔑ろにしてくれた罰です」

キャサリンは胸を張って言うんだけど。


「そんなに殿下の婚約者が良かったのか?」

私が聞くと

「なわけないでしょう。あんな女たらし。別れられて清々しましたわ」

「ならもっと前に別れればよかったのに」

俺がいうと、

「そうなんです。本当に私は馬鹿でした」

キャサリンはあっさり頷いてきたのには驚いた。


「世間には私の目の前にいらっしゃるハロルド様みたいな良い人がいっぱいいらっしゃるのに、あんな最低な王太子しか見えていなかったなんて本当に馬鹿でした」

「褒めても何も出んぞ」

俺はキャサリンが俺に対してしなだれかかってくるかと警戒したが、そんなことはなかった。


「でも、あんな騒ぎを起こした私なんて、嫁の行きてもないと思うんです」

「いや、そんな事は」

「じゃあ、ハロルド様がもらっていただけますか」

「いや、それは」

俺が言葉を濁すと、


「でしょう。だから、もう、ベルファスト王国で生きていこうかなと」

「でも、この地でどうやって生きて行くのだ」

「まあねこの国ならば私の噂もあまり流れていないと思いますし、最悪平民として生きていこうかなと」

この娘、冒険者になって生活していくとか訳のわからないことを言ってきた。

そんなの世間知らずの令嬢が出来るわけ無いだろうに。


俺の必死の否定にもキャサリンは頑として考えを変えようとはしないのだが、この娘は本気なのか?






そこへ、山賊共が襲ってきたのだ。それも大軍で。そこまで聖女に睨まれているのか?

俺は命の危機に立ってしまった。それも、継承争いとは関係ないところでだ。本当にキャサリンを護衛するなんて馬鹿なことをしてしまった。隣国に来た意味がないではないか。


そう後悔した時だ。なんと、キャサリンが障壁を展開。何十騎といた山賊共を弾き飛ばしたのだ。


俺はその力に唖然とした。


ここまでの力があるなんて思ってもいなかったのだ。


しかし、その後キャサリンは意識を失った。後で聞くと、3分間しか使えないのだとか。


なんだかなと思わないでもないが、3分間でも、この力は使いようによっては使えるのではないかと思わないでもなかった。


そう、この力がどれだけ凄いかはまだ俺は知らなかったのだ。

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