ヒロインに躱されて落ちていく途中で悪役令嬢に転生したのを思い出しました。時遅く断罪・追放されて、冒険者になろうとしたら護衛騎士に馬鹿にされました。護衛騎士と悪役令嬢の恋愛物語
第32話 ハロルド視点1 キャサリンを強引に助けたことにされました
第32話 ハロルド視点1 キャサリンを強引に助けたことにされました
俺の名前はハロルド・テルフォード、テルフォードは偽名だ。実際の名前はハロルド・ベルファスト、ベルファスト王国の第一王子だ。
俺の母は前辺境伯、エイブの父が侍女に手をつけて産ませた娘で、庶子だった。
父の国王は辺境伯に遊びに来た時に知り合って、婚姻の口約束をしていたのだが、庶子ということで側室にしかなれなかったのだ。そして、母は俺が3歳の時に死んだ。俺はその後、おじである、辺境伯によって育てられたのだ。
そして、俺には異母弟がいた。第2王子のクリフォードだ。母は侯爵家の正妻から生まれた次女で、王妃だった。
クリフォードは、現宰相のおじをもち、サラブレッドだった。庶子で辺境伯の出の母を持つ俺とは比べ物にならなかった。
王位争いは弟を推す勢力が多く、俺では対抗馬にもならなかった。
まあ、元々俺は王位などに付くつもりはなかったが。
成人した時に、母は現王妃に毒殺されたと聞いたときは悩んだが、国を二分する争い事など、国を弱体化させるだけだ。隣国にスノードニア王国という侵略国家がある我が国は敵に弱みを見せるわけにも行かない。
俺は王位争いを避けるために、成人した後は隣国のロンド王国に騎士として仕えることになった。
いつ殺されるか判らない王子という立場をなくせば、騎士の立場は本当に気楽だった。
このまま騎士として、ずうーっとこの国にいてもいいかと思い出した時だ。
王宮のパーティーに出ていたら、階段の上から公爵令嬢のキャサリンが落ちてきたのは。
キャサリンは高慢ちきで有名だった。
捨てておいて、死んでもらってもいいかと、見捨てることにしたら、なんとキャサリンは障壁で自分の体のショックを和らげたのだ。
えっ、こいつ出来る! 俺は改めてキャサリンを見た。
そこで俺から見ても女たらしのどうしようもない王太子が、浮気相手の聖女と手を取り合って、キャサリンに突き落とされそうになったと告発したのだ。
しかしだ。
「キャーーーーー」
そのキャサリンが突如悲鳴を上げたのだ。何なのだこいつは?
俺は唖然としてキャサリンを見た。
「そこの女たらしの王太子と淫乱聖女に大階段から突き落とされて殺されそうになりました」
キャサリンは突如としてそう主張しだしたのだ。
「な、何だときさま・・・・」
王太子が慌てだした。
「ありがとうございます。公明正大な騎士であらせられるハロルド・テルフォード様。あなた様が浮遊魔術を私にかけて頂けなければあの二人に殺されていたところでした」
そう言うとキャサリンは俺に縋り付いてきたのだ。
いや、俺は助けていないぞ。勝手に俺を勢力争いに巻き込むな。それでなくても母国ではやばいのだ。この国では静かにしていたい。
「いや、確かにお前、先程聖女様を押そう・・・・、ギャッ」
正直に話そうとした俺はなんとキャサリンに思いっきり足を踏まれてしまったのだ。
こいつ、何しやがる! 俺はきっとしてキャサリンを睨みつけた。
「人を見殺しにしようとしたあなたは黙っていて」
そうしたら、この女が言ってくれた。そらあ確かに見捨てたけれど、それでもこんな目に合ういわれはない。
「お前、後で覚えていろよ」
俺は頭にきて言った。まあ、こいつも後がないのだろう。俺と同じだ。そこは少し同情の余地はある。でも、俺はなにもしないぞ。
そう思ってみていると、なんとこいつは王太子が浮気していたと周りに証言を取リ出したのだ。でも、それって、今は関係ないのではないか? 今は生きるか死ぬかの瀬戸際だと思うんだが。
王太子は聖女殺害未遂で断罪したいのだ。浮気の証拠もクソもないだろう?
そう思った時だ。
なんとキャサリンは、大階段の上から王太子に突き落とされたのだ。先程の再現だった。
いや、先程はたしかに聖女を押そうとして躱されて落ちてきたのに、今回は王太子にわざと突き落とされたように見せかけて落ちてきたのだ。
王太子も聖女も唖然としていた。
それも皆が見ている前で。俺が見ても王太子が押したように見えた。
これで王太子も言い逃れは出来まい。
一大演技を終えて落ちてきたキャサリンを、仕方なしに、今度は俺は浮遊魔術で止めてやったのだ。
「度々、ありがとうございます。ハロルド様」
キャサリンはウインクして俺の腕の中に飛び込んできたのだ。
言いたいことがないこともなかったが、王太子らは一生懸命に考えた断罪劇をキャサリンにぶち壊されて切れていた。俺としては本来こういうことには関わり合わないのだが、キャサリンが二回も大階段から落ちたことに敬意を払って、認めてやったのだ。
でも、これが俺の運命を大いに変えることになるとはこの時は思いまもしなかった。
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