第27話 ベルファスト第二王子視点2 第一王子の女を人質にして第一王子を誘き出そうとしました。

俺の地位を脅かす、兄は絶対に許せない!


俺は直ちに兄の様子を探らせた。



今回のスノードニア侵攻にして、現地の噂は、兄がいたから敵の大軍に勝てたと兄を称える声が大半だった。


なんでも、いきなりのスノードニアの大軍の出現に対して、兄が大地の神に祈ったら、大地の神の化身が現れてスノードニアの大軍を蹴散らしてくれたらしい。


「そんな馬鹿なはずがあるか」

俺が言うが、


「現地ではその話で持ちきりです。果ては、やはり王太子は第一王子殿下が良いという話まで出ているようです」

「それは兄上、本当なのですか」

母が母の兄の宰相に身を乗り出して確認していた。


「詳しいことは判らんが、そのような噂が民に流れているのは事実だ」

「おのれ、あの女め。ここまでわらわを苦しめるのか」

母は今は亡き兄の母を呪っていた。


「まあ、そう慌てるな。ここはその王子をどうするかじゃ」

宰相のおじが母を抑えてくれる。





今後の予定を見ると兄は辺境伯と一緒に王宮に来るらしい。その途中の都合の良いところで襲わせるのが一番だ。

しかし、辺境伯は100騎の騎士を引き連れて来るらしい。

中々の数だ。それと勝負するには下手したら合戦になってしまってとても目立ってしまう。


「下手したらは誰が指示したか、判ってしまう。それは下策だろう」

おじは言ってくれた。


「それよりも第一王子はロンド王国から女を連れてきたそうです」

おじが言い出したのだ。


何故か兄は、今回ロンド王国から女を一人つけてきているらしい。兄には平民の血が混ざっているから女にも靡きやすいようだ。その女は見た感じはガサツで平民の女にしか見えないそうだ。兄と馬に二人乗りして辺境伯領にやってきたらしい。そんなはしたない女が貴族の女のはずがない。


更に見るからに頭が悪そうに見えるとの報告が入ってきた。


「こうなったらその女をおびき出して、餌にして、第一王子殿下にはお亡くなりになってもらうしかありませんな」

おじが言ってくれた。


「殿下もこのタイミングで何故帰ってこられたのでしょうな。飛んで火に入る夏の虫ですな」

おじが笑って言った。


「ほんにのう! 本当に愚かな男じゃ。わざわざ自ら帰ってくるとは。元々、自分の命を守るためにロンドに出ていったというのに、この大事な時に帰ってくるなど、本当に馬鹿じゃ。母であるあの女に似たのかのう! あの女ももう少し賢ければもっと長生きできたものを」

母が笑った。


「本当じゃな。陛下の寵愛を当てにしてコーデリアに席を譲らなかった、愚かな女じゃったの」

おじである宰相も笑った。


そう、兄の母は私が物心ついた時にはもういなかった。兄が3歳の時に毒殺されたと聞く。どうやら、祖父と母が共同で殺したらしい。


証拠は上がらなかったので、辺境伯が結構うるさく追求してきたが、どうしようも出来なかったのだ。


「辺境伯も大人しくしていれば良かったものを、未だに兄を推すとは愚かなことよな」

「左様でございますな。ついでに兄を守れなかった責任を取ってもらって死んでいただきますか」

「そうすればクリフォードに対抗する勢力もなくなるので、クリフォードの王太子就任も確実じゃの」

俺たちはそう言い合うと笑いあった。


「しかし、辺境伯が指揮する100騎もの騎士とは結構厄介じゃの」

「途中にいる我が陣営のヘリフォード伯爵にやらせましょう。娘を殿下の妃にすると言えば喜んでやましょう」

「あの煩い女を私の妃にか」

俺は煩い伯爵の娘は嫌いだった。それを妃にするなど本来は拒否したかった。


しかし、

「殿下、ここは勝負どころですぞ。なんとしても、ヘリフォード伯爵にやらせるのです。そうせねば未来はございません。ここはその為には殿下に我慢していただくしかございません」

おじがそう言えば

「まあ、クリフォード、事がなった暁には好きにすれば良かろう。好きな女を側室に置くという手もありからの。ここはお前が我慢するしか無いのじゃ」

母までそう言うのだ。


俺としては伯爵の娘は口うるさくて好きにはなれなかった。しかし、王太子になるためには仕方がないのか。

まあ、事がなった暁にはその娘を母を見習って毒殺しても良かろう。

そう思って諦めた。


そう、なんとしても憎き兄に死んでもらうのだ。その為には多少の犠牲は致し方あるまい。

俺はそう思うことにしたのだ。



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