第28話 伯爵領でその娘にハロルドをかっさらわれてムッとしました

私達は王宮舞踏会に行くために馬車の旅をしていた。王都までは7日くらいだ。


私はハロルドと同じ馬車だった。


前の馬車にエイブさんとその奥さんが乗り込んでいた。息子のアーチボルトさんはお留守番だった。


でも、100騎の辺境伯の騎士に囲まれていく列は壮大だった。


ロンドにいた時は安全で領地が王都から近いのもあって、騎士はついてきてせいぜい10騎だった。それに比べたら断然多い。途中の街での行動も十分に注意するように注意を受けた。

まあ、3分間だけなら私は無敵だし、いざとなったら龍ちゃんもいるし、そう言うとその街を壊滅させるつもりかとハロルドに叱られんただけど。


確かにケタリング伯の領都は壊滅させたかもしれないけれど、古代竜の龍ちゃんにそれ以外を求めるのは難しくない?


そう言うと、スノードニアの辺境伯の領都も龍ちゃんは壊滅してくれたらしい。

攻めてきたんだから仕方がないじゃない。


と私は思うんだけど、


「あんまり国内を壊したくないので、ご自重お願いします」

とエイブさんに言われてしまった。いや、基本的に暴れるつもりはないって。


そう言っても誰も信じてくれないのは何故?


「まあ、今までの実績が物語っている」

ハロルドに言われるんだけど、そんな事無いもん!


私はふくれてしまったのだ。


龍ちゃんと一緒にハロルドは無視だ。



でも、流石に馬車の中でずうーーーーっと無言でいるわけにも行かない。


仕方がないから、外の景色を見ながら、ハロルドにいろいろ説明させることにした。


何でも、今は国内は第一王子派と第二王子派に分かれて争っているらしい。


力が圧倒的に強いのは第二王子派で現王妃様も第二王子派なのだそうだ。第二王子は王妃の子供で第一王子の母は辺境伯の妹だったらしい。現王妃は侯爵家出身で今はその兄が宰相をやっているそうだ。


そこからして違うのだ、とハロルドは言った。


なるほど、ハロルドとしても勢力の弱い第一王子を応援しているらしい。


「判ったわ。どうなるか判らないけれど、私も第一王子を応援してあげるわ」

私が言うと


「それはありがとう」

なんか戸惑った視線で私を見てくるんだけど、何故?


「まあ、いずれ一冒険者になる私が、応援しても仕方がないと思うけれど。どうなるか判らないけれど、父にも応援するように頼んでおいてあげるわね」

私はそう恩着せがましく言ってあげた。もっとも、利にさとい父のことだから、不利だと思えばあっさりと第二王子に付くと思うけれど。



そしてヘリフォード伯爵領に入ったんだけど、そこは大河の傍で、領地はとても豊かそうだった。

広大な穀倉地帯が続いている。

「凄い!」

私はその広大な畑を見て感動していた。


「この伯爵領は凄いわね!」

私が言うと


「ここも、第二王子派だ」

とハロルドが言った。

「ええええ!ここも? 第一王子派ってどこにもいないの?」

「失礼な、第一王子派は小さな領地の領主が多いんだよ」

ハロルドがムッとして言い訳した。


「そうなんだ」

これじゃあ、もう第二王子派の勝ちで決まりじゃない。私はしかし、口に出さないだけの優しさはあったのだ。これからもハロルドには世話にならないといけないから・・・・


あっさりと敵の領内を通過しようとした時だ。


伯爵家から迎えが来たのだ。是非とも一泊していってほしいと。




馬車の車列はヘリフォード伯爵邸へと向きを変えた。


馬車が伯爵邸に着くと、伯爵が自ら出迎えてくれた。

「ハロルド様、立派になられましたな」

伯爵がそう言って、ハロルドを出迎えた。


「ああ、伯爵も、元気だったか?」

ハロルドは挨拶されるとは思ってもいなかったようで、驚いて挨拶を返している。


「娘のカーラです」

伯爵は早速後ろにいた娘をハロルドに紹介していた。


「ヘリフォード伯爵家の娘、カーラと申します。お会い出来て光栄です」

娘はしおらしく挨拶していた。


でもこちらに向ける視線が怖いんですけど。

完全にハロルドを狙う視線だ。


「伯爵、こちらがキャサリン嬢だ」

「冒険者になる予定のキャサリンと申します」

私の挨拶にハロルドは頭を抱えていた。


「冒険者にですか? なかなかユウモアのあるお方ですな!」

伯爵は私の言葉を冗談だと思ってくれたみたいで、笑ってくれたけど、私は本気なんだけど。

エイブさんまで残念な子を観るように見るのは止めてほしいんだけど。


「さっ、ハロルド様、こちらですわ」

カーラはそう言うと私に対してチラッと優位に立ったような目線で見下すとハロルドを連れてあっさりと邸内に入って行った。


な、何なんだ、あの女は!

ハロルドも私を無視するなんて酷い!


それはあの女は私より胸があるけど、ここまで無視する?


もう二度と助けてなんてやらない!

私はプリプリして怒っていた。


「お嬢様は私目がご案内させて頂きます」

そう言ってきた執事をじろりと睨み付けて、執事が思わず飛び上がっていた。

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