第25話 ベルファスト第二王子視点 策がうまく行かずに父に辺境に飛ばされました。

俺の名はクリフォード・ベルファスト、この国の第二王子だ。父はクレイグ国王で母は王妃のコーデリアだ。


俺以外に男子は第一王子のハロルドがいるが、ハロルドの母は前辺境伯が侍女にお手つきして産ませた子で、庶子だった。そんな女が王妃に成れるわけもなく、当然側室というか妾だった。父が辺境伯の地に遊びに行って親しくなったのだとか。平民の血を入れるなど本当に父はどうしようもない。

それに比べて我が母はアビントン侯爵家の出身でバリバリの貴族だった。当然、貴族たちは俺が継ぐものだと思っていたし、平民の血が混ざっている第一王子が父の跡を継げるわけがない。


それが判っているのか、成人した後は兄はロンドに修行と称して行ってしまった。今はテルフォードの姓を名乗っているみたいだ。


俺は母に英才教育をされて、日々、王太子になるように育てられていた。教師たちからはクリフォード様はとても良くおできになると日々褒められているのだ。

しかし、5年前に18の成人を迎えたが、未だに王太子にはなっていなかった。


何故だ? 父は何を考えている?


確かに兄は武には優れていた。俺は兄の足元にも及ばないだろう。

我が国よりも若干大きいロンド王国でも最強の騎士の名を恣にしていると聞く。


しかし、それがどうしたのだ。平民の血が為せる技だ。


これからは頭が良くないと生き残れない。あの兄のような脳筋では騎士団長をするのが精一杯であろう。


しかし、兄を国王に望む勢力が一部あり、父も中々決断できないみたいだった。


その筆頭がバーミンガム辺境伯だ。


自分の腹違いの姉が母だけに第一王子を押していた。


俺にとって辺境伯は目の上のたん瘤だった。


隣国のスノードニア王国が攻めようとしている情報を知って、辺境伯を見捨てることにしたのだ。

宰相は母の兄のアビントン侯爵だ。なんとでもなる。


それに兄が丁度、辺境伯の領地を訪問しているらしい。


辺境伯に痛手を与えて、うまく行けば兄を葬れる。これほど美味しい事はないと思ったのだ。


俺は直ちにおじと母に相談した。二人共その案は素晴らしいと、二つ返事で頷いてくれた。


俺はこれで兄を葬れたと確信したのだった。




翌日、俺は父に呼ばたのだ。

兄が予定通り死んだかと、喜び勇んで父のもとに行くと



「愚か者」

なんと父はいきなり俺を思いっきり殴りつけたのだった。


「な、何をされるのです」

殴り倒された俺はなんとか起き上がって父を睨みつけた。


しかし、いつもは俺の味方をしてくれる周りの連中も冷たく俺を見ていた。何があったのだ?



「貴様、宰相と王妃と図って、辺境伯に増援を送らなかったそうだな」

父は怒り狂っていた。そんなに兄が大切なのか? 俺は目を見張って父を見た。


「それも、敵国の策に踊らされるなどどういう事だ。貴様、判っているのか? 後少しでこの国を滅ぼすところだったのだぞ」

「な、何を仰るのです。援軍を送らなかったくらいで。所詮辺境の争いでしょう」

俺はきっとして言い切った。

その瞬間だ。俺は更に父に殴り倒された。

「貴様、敵の戦力がいくらだったか聞いていないのか」

父は完全に切れていた。


「あなた」

「お前も同罪だ」

とりなそうとした母を父はきっとして睨みつけたのだ。


「いいか、よく聞け、敵は2万の大軍を率いていたのだぞ」

「に、2万!」

俺は唖然とした。そんな事聞いていない。スノードニアからは小競り合いだと聞いていた。それが2万だと?


「貴様はわかっているのか。お前が援軍を送らなかったせいで、危うく我が国の砦が占拠されようとしたのだぞ。砦からこの王都まで途中に敵を防ぐ砦もないのだぞ。そこに2万の大軍で攻められてみろ。今頃は、スノーディアにこの王都も占拠されていただろう」

父の言うことに俺は唖然とした。


確かに王都の守りは1万しかいないのだ。2万の大軍にいきなり攻められていたら、負けていたかもしれない。


「辺境伯の報告には、貴様が日頃馬鹿にしている兄の活躍無くしては今回の戦いは負けていたとはっきり書かれておったわ」

父は、思いっきり机を叩いていた。


「クリフォード、貴様は今回の責任を取ってこれから2年間、エイブの所に行って一から修行してこい」

「そんな」

俺は唖然とした。兵士の真似事など今までやったこともなく、やれる自信もなかった。


「そんな、あなた、クリフは腕に覚えはありません。そのような所にクリフを行かせるのは」

母が庇ってくれようとしたが、


「貴様らが余計な事をするからこのような事になったのだ。一から国境警備の大切さを身に沁みて感じるがよい」

父は動じなかった。


俺は宰相を見たが、宰相も首を横に振ってくれた。そんな、俺は2年間も兵士の真似事をさせられるのか・・・・俺は唖然とした。




宰相だったおじも内務卿に格下げになった。そのおじが俺の事を強く押せるはずもなかった。


俺は王宮舞踏会を後に辺境の地に修行に行くことが決まってしまったのだ。




「ゆ、許さない。この屈辱、絶対に晴らしてやる」

俺は拳を握りしめて復讐を誓ったのだ。絶対に兄にいつか復讐してやると・・・・。

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