第24話 王宮から招待状が来ました

私は夢を見ていた。何故か王宮でハロルドにエスコートされていた。


ハロルドはにこやかに私に笑いかける。そして、私も微笑み返していた。そう、そして、私は何故か白いウェディングドレスを来ていたのだ。ハロルドも白いタキシードだ。


私達は皆に祝福してもらいながら大階段を上がっていたのだ。


そして、大階段を登ると、誓いの言葉を述べる時になった。


神父様がまさに誓いの言葉を述べようとした時だ。


今まで微笑んでいたハロルドがいきなり凶悪な顔に変貌して私を突き落としたのだ。


「嘘!」

私は信頼していたハロルドに突き落とされてショックだった。


スローモーションのようにハロルドが遠くなっていく。その口が馬鹿めと言っていた。あいつ、裏切りやがったのだ。


私はそのまま猛スピードで奈落の底に落ちて行ったのだ。


「わあああああ!」

私は飛び起きていた。


慌てて周りを見回すと、私は辺境伯の館の与えられた客室で寝ていた。


大丈夫だ。夢だ。


起きて判った。


周りを見ると肝っ玉母さんのアデラインさんが椅子に座っていて、驚いて私を見ていた。

看病してくれていたみたいだ。


「何事だ!」

そこにハロルドが飛び込んできたのだ。


「えっ」

私は、私を突き落としたハロルドが目の前に現れてぎょっとした。


「な、何だその目は」

ハロルドが私の怯えた視線に驚いていた。


「何でも無い。夢見ただけだから」

私がムッとして言う。


「夢?、どんな夢を」

「あんたに大階段から突き落とされた夢」

私が言うと、


「いや、待て、そもそも、最初は男爵令嬢を突き落とそうと失敗して自分で落ちて、二回目も自らわざと落ちただけじゃないか。それを俺のせいにするか? それに、2回目は助けてやったぞ、俺は」

ハロルドが言い訳するが、


「ふんっ、1回目は助けてもくれなかったくせに」

「知るか、勝手に落ちてきたのはお前だろう」

「ふんっ、何よ。女性の部屋に勝手に入ってこないで! すぐに出ていって」

私が言うと


「はああああ! 悲鳴を聞いて飛んできてやったのに」

「煩い。さっさと出ろ」

私の理不尽な言葉に龍ちゃんが反応して

「ピイピイ」

「いや、ちょっと待てって」

顔で、グイグイハロルドを押して、部屋から追い出してくれた。


さすが古代竜。小さくても力持ちだ。

「ありがとう、龍ちゃん」

「ピーーーー」

私がお礼を言うと龍ちゃんは胸を張って喜んで鳴いた。



「この度はキャサリン様に置かれましては私達のために、王国と戦って頂いて本当にありがとうございました」

呆然と見ていた肝っ玉母さんが、我に返ってお礼を言ってくれた。


「ええええ? 私は大したことはしていませんよ。最後は龍ちゃんがしてくれたんですよね」

話を聞くと私が障壁で大半の兵を弾き飛ばして、それを龍ちゃんが駆除してくれたらしい。これで当分、スノードニア王国も攻めてこないだろうという話だった。

さすが古代竜、やる時はやってくれるのだ。


私が着替えると、今度は辺境伯のエイブさんが、自ら部屋に足を運んでくれてお礼を言われた。


「いやあ、私こそ勝手に動いてしまって申し訳ありません」

私が謝ると


「いやいや、あそこでキャサリン様が立上っていただけなければ、我が館は完璧にスノードニア王国に占拠されており、下手したら今頃は王都もスノードニアの手に落ちていたかもしれません。我々が助かったのは、それもこれも全てキャサリン様のお陰でございます」

エイブ様が頭を下げてお礼を言ってくれるんだけど。


「もう少し早く、気付いていれば、死者の数も減らせたと思うのですが」

「いやいや、それを仰っていただきますな。全ては敵の策略に気づかなかった我々の落ち度です。あの段階で戦って頂けた、キャサリン様にはなんとお礼を言ってよいやら」

「でも、ハロルドには勝手に動くなと怒られてしまいました」

私がムッとして言うが、


「まあ、若も愛しいキャサリン様が傷つかれるのが怖かったのでしょう」

「愛しい?」

エイブさんの言葉に私が固まってしまった。


「爺、勝手なことを言うな」

ハロルドがムツとして言うが、


「何をおっしゃまいす。今まで若が馬に一緒に女性を乗せたのは初めてなのですよ」

「そうです。若は凛々しいお顔立ちですので女性からは人気なのですが、その女性に対する態度はいつもすげなくて。こんなに女性に対して柔らかい態度の若は、初めて見ました」

エイブさんと奥さんに言われてハロルドはムッとしている。


まあ、ハロルドはロンド王国でも氷の騎士と呼ばれていたから。確かに私に対して優しい・・・・いやいやいや、こいつの馬に乗せられてどれだけ怖い思いをしたことか。絶対にこいつは私を怖がらせたいだけなのだ。


私が心の中でそう結論付けたのだけど、


そう言うと

「まあ、若はまだ子供心が抜けていないところがあって」

「大好きな相手を虐めたくなるというか」

ええええ! そうなの? そんなのされる身にとっては大変なんだけど。


「何なんですか。そのガキ大将が好きな子を虐めるようなシチュエーションは」

私の非難する声に


「ガキ大将か」

「若にガキ大将とは」

みんな非難する私に笑い出したんだけど。


なんだかな・・・・。



魔力切れが治ってやっと私が起き上がって動き出した時だ。


ベルファスト国王から私に、いきなり王宮への招待状が舞い込んできたのだ。


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