第20話 スードニアの辺境伯視点 ベルファスト王国を制圧する作戦が出来ました

私はスノードニア王国の辺境伯、アシュトン・コルリス、ベルファスト王国との国境を守っている。


我が国とベルファストは犬猿の仲で、常に何らかの争いをしていた。ここ10年間でも小競り合いは数限りなく、大きな戦も二回経験していた。


ここ最近は国境を接しているベルファスト王国のバーミンガム辺境伯が、ベルファストの王宮から睨まれており、我が方の攻撃に対しても、援軍が中々来ずに、受け身になることが多かった。


敵の王もばかだ。国内の勢力争いなど、国があってのもの、それが判らぬらしい。バーミンガム辺境伯領が我が方のものになれば、王都まで我々を防ぐものなど存在しなくなるのに!


それなのに中々すぐに援軍を送ろうとしないのだ。



前回の大規模戦でそれを知った我々は、国軍の半分の2万の戦力を用意した。辺境伯の戦力は高々二千、全軍で襲いかかれば問題なかろう。うまく行けばそのまま、王都をも突ける。

敵はそれを知らないのだ。


私は王宮に呼ばれて陛下からこの案を聞いた時に勝利を確信した。


「今回は総指揮をこのオーガストにやらせる。アシュトン、フォローを頼むぞ」

「御意」

私は陛下の前に跪いた。


「我が方の影に王宮で、バーミンガム伯、反逆の兆しありと大々的に噂を流した。第一王子を旗印に兵力を集めているとな」

「それはバーミンガム伯も大変ですな」

陛下のお話に私は笑みを浮かべた。


「本当に、丁度良いことに、第一王子が辺境伯の領地に現れたのだ」

「なんと、それは真でございますか」

「本当に都合の良い事にの」

陛下は笑われた。


これは天運が味方したのだろう。元々亡くなった前王妃の子供である第一王子は王宮から煙たがられていた。確か、ロンド王国に修行を兼ねて騎士をしているのだとか。それが国に帰っているらしい。それも前王妃の親戚の辺境伯のところに行くなど、我らの謀をうまく信じさせるために神が用意してくれたように思えた。


「敵の王都には我がスノードニアから攻撃を受けたと偽の知らせを送り、王都から兵が出た直後に、辺境伯軍が第一王子を旗印に攻め込むつもりだと噂を広めておる」

「その噂の信憑性が高いと信じさせるのですな」

「そうじゃ。これでベルファスト王国の愚か者共は援軍を出すまい」

「そこを一気に攻め込むのですな」

私は陛下の言葉に頷いた。


「そう、そして、今回はそれに更に一捻り加える」

「どのようにですか」

陛下の言葉に私は聞いていた。


「貴様の軍に囮になってもらう」

「我軍2千にですか?」

「一路脇道から辺境伯領に侵入し、田畑を焼くのじゃ」

「脇道からですか」

「2千の軍が田畑を焼くのじゃ。辺境伯も黙ってみているわけには行くまい」

「そうですな」

「おそらく大半の戦力を集めて攻撃に出るじゃろう。そこをオーガストの率いる残り1万5千で、辺境伯の砦を攻める」

「殆どの兵が出払っている砦はひとたまりもありませんな」

「そうじゃ。そして、砦からも軍を出して辺境伯軍をはさみうちにするのじゃ」

「辺境伯軍も挟み撃ちされれば壊滅的打撃を受けるのは必定」

「うまく行けばバーミンガム伯を殺せよう」

「さすが陛下。そうなればもう、ベルファストに怖いものなどありませんな」

私は笑った。


「左様じゃ。そして、そのまま、ベルファストの王都を突く」

「素晴らしいですな」

「うまく行けばベルファスト王国は我軍の傘下に入るしか無くなるのじゃ」


私は陛下の案を聞くに連れ、必ず成功するように思えた。

今回はやれる。そう思えた。


「この作戦がうまく行った暁には、その方の領地も倍にしてやるわ」

「はっ、ありがたき幸せ」

私は再度陛下に跪いた。


「まあ、喜ぶのはこの作戦がうまく行ってからだ。直ちに準備に入れ」

「はっ、して、本軍の方の準備は」

「1両日中には王都を立てよう。兵士たちには南部の魔物討伐にいくと行ってある」

「なるほど、敵を欺くには味方からですな」

私は陛下に頷いた。どう見ても、失敗する要素など無かった。

私は勝利を確信したのだ。


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