第18話 伯爵領は破壊されたので、辺境伯領に移ることにしました

私は夢を見ていた。


「ガオーーーー」

なんと龍ちゃんがそのまま大きくなって伯爵領を踏み潰しているのだ。


生意気な伯爵とか、破落戸の男達を次々に踏み潰していくのだ。私は夢の中なので、別に変だともなんとも思っていなかった。


龍ちゃんはそのまま、伯爵の寂れた街並みを踏み潰した後に田畑に歩いていこうとした。


これは良くない。


「龍ちゃん、お座り」

私は寝言で叫んだらしい。


「ピーーーー」

龍ちゃんは不満そうに叫ぶが、私が怒って首を降ると、小さくなって私の胸の中に入って来て寝てしまったのだ。




そして、翌朝目を覚まして、私は唖然とした。


屋敷が瓦礫とかしていたのだ。夢のとおりだ。


そして、寂れた街並みも壊滅していた。



「一体これはどうしたの?」

憔悴しきったハロルドに聞いていた。


「君の頼った、ケタリング伯爵が、ロンドの暗黒街のボスのビル・カーソンに示唆されて、君を襲おうと眠り薬を食事に入れていたのだ。

俺と、エイブはそれに気付いて、動ける機会を狙っていたのだが、その前に、その古代竜が暴れだして、こうなったのだ」


「えっ、そうなの? これ全部龍ちゃんがやったの?」

私が驚いて龍ちゃんを見ると


「ピー」

と胸を張って龍ちゃんが頷いたのだ。


「そうなんだ。龍ちゃんは私を守ってくれたのね」

私が龍ちゃんに抱きつくと

「ピーーーー」

喜んで龍ちゃんも私の胸にスリスリしてきた。


「さすが龍ちゃん」

「ピーーーー」

私が褒めると、龍ちゃんが胸を叩いた。


「しかし、キャサリン、流石にこれはやりすぎじゃないのか」

ハロルドが言うけれど、


「まあ、確かにそうは思うけど、暗黒街のボスなんて、何でここにいたのよ。捕まえられたの?」

「いや、ボスは竜に踏み潰されていた。伯爵夫妻も、ボスが連れてきていた荒くれ者たちも大半は踏み潰された。唯一生き残った1人がそこのケンだ。おい、ケン。何故キャサリンを襲おうとしたんだ」

「ふんっ、知るかよそんなのは」

「ピーーーー」

怒った龍ちゃんがそちらに歩いていこうとする。


「えっ、嘘です。お許し下さい。俺はまだ死にたくないんで」

縄で縛られながら必死に男は這って逃げようとする。


「じゃあ、さっさと応えるんだ」

ハロルドが叫ぶ。


「俺たちは何も聞かされていないんで。そこのキャサリンさんを傷物にして娼館に叩き売るとしか」

男は必死に言い募った。


「じゃあ、お前を傷物にして娼館に叩き売るか。急所を古代竜に蹴飛ばしてもらえばいいか。そうか炎で焼いてもらうか」

面白そうにハロルドが脅すと


「や、止めてくれ。聖女だ。ピンク頭の聖女が親分の女で、その聖女から頼まれたんだ」

「嘘をつけ、聖女は戒律で厳しい修道院に入れられたと聞いているぞ」

「聖女はボスを使って、厳しい奴らを殺すか脅してるんだよ。厳しいなんて昔の話だ」

男の言うことは私にとって衝撃的だった。


「な、何なの。ロンドの国王もいい加減ね。息子とおんなじで、修行させるなんて口だけじゃない。じゃあひょっとして王宮内も、既にあの聖女が支配しているの?」

「そこまではまだ無理だ。聖女が王太子妃になってそうするつもりが、あんたのせいで失敗したって怒っていて、それで死ぬよりつらい目に合わせろって」

「じゃあ、失敗したお前らも死ぬよりつらい目に合わせてやらないとな」

ハロルドが剣を抜き放った。


「ヒェェェェ」

男は悲鳴を上げた。


「どうする、キャサリン、急所をたたっ斬るか」

「そ、それだけはやめてくれ」

「そうか、竜の餌にするか」

「頼む。何でもするから、頼むから命だけは助けてくれ」

男は頭を地面につけて頼んできた。


「まあ、若、この男もここまで言っているのです。いずれは使い道もありましょう」

エイブさんが助け舟を出してくれた。


「ふんっ、少しでもおかしい真似したら、その竜に食べてもらうからな」

「はい。絶対に忠誠を誓います」

男はコクコクと頷いた。


「では、キャサリン様。このままこの破壊され尽くした伯爵領にいても、仕方かありますまい。宜しければ近くの辺境伯領に参られよ」

私はこの建物一つなくなった伯爵領の街を見て、頷いた。


流石にここでは生活は出来ない。辺境伯領の方が人の数も多いみたいだし、冒険者やるならそちらだろう。私はそう思って賛成したのだ。


もっともハロルドもエイブさんもそれは認めてくれなかったけど。


いいもん。絶対になってやるんだから。

私は一人で決心を固めたのだった。


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