第10話 ダンジョンに潜る事になりました

「若様、どうなさったのですか?女性を泣かしたりして!何をなさったのです」

ハロルドが連れていってくれたホテルのフロントで鉢合わせになった年配の男性にハロルドはいきなり詰められていた。


「いや、爺、これは違うぞ、ちょっと言い方がきつくなっただけで」

ハロルドが必死に言い訳しようとしている。

「言語道断、どのような理由があったとても、若様がこのようにか弱き女性を泣かせて良い理由など御座いません」

良く見ると男性は精悍な体つきで武人だろうというのは一目瞭然だった。でもハロルドとはどういう関係なんだろう?


「それよりも部屋を何とか手配してほしいのだが」

「若の頼みとあれば、何とかいたしましょう」

ハロルドは強引に話題を変えた。

爺と呼ばれた男の人がフロントに掛け合ってくれた。

男の人は色々と掛け合ってくれてこちらに帰って来てくれた。

「若、二部屋あるコネクティングルームを手配しました」

「普通のシングル二つは無かったのか?」

「すみません。魔物討伐で我々が部屋を結構使っておりまして、それしか空きがないみたいで。不味かったですか?」

爺さんが済まなそうに、言ってくれたんだけど。


「キャサリン、すまないがそれしかないようなんだけど」

「無ければツインでも良いと思ってたのでそれで十分よ」

私が言うが、

「若、こちらの女性とはどういう関係なのです」

突然、爺さんがハロルドに詰めて来たのだ。私の発言聞いて、私とハロルドの間の関係が心配になったみたいだ。悪いことした。何もないのに!


「どういうって、まあ俺の雇い主みたいな感じかな」

「今はロンド王国にお勤めなのでは」

「その陛下からの指示でもあるのだ」

ハロルドが適当にごまかしながら話す。

まあ、断罪されそうになった令嬢の国外退去を、見張りに来たとは言えないんだろうとは思うけど。


「あのう、お話し中ごめんなさいね、ハロルド、そちらのお方とはどういうご関係なの?」

気になって私が聞いた。


「俺が元々の出身がベルファストだというのは知っているよな」

「それは知っているけど」

私も噂は色々集められるだけ集めたのだ。何しろ少しの間だけでも命を預けるのだから。まあ、小説には出てきていないから、大した役では無いと思ったんだけど。


「そのベルファストにいる時に色々世話になったのだ」

「私はキャサリンと申します。ケタリング伯爵家の遠縁に当たるんです」

私が挨拶する。

「これはこれはわざわざ恐れ入りまする。私はエイブと申します。ハロルド様の教育係のような事をしておりました」

「そうなのですね。ハロルドには無理言ってケタリング伯爵家まで送ってもらうことになっているんです。でもエイブさんはベルファストの方なんですよね。何故、こちらのロンド王国にいらっしゃるのですか?」

私が気になった事を聞いた。騎士らしき者を多く連れていると言うことは、結構な身分の方だと思ったんだけど、戦争を始めるわけではないと思うけど。


「いやあ、国境沿いにある我が国最大のウエストダンジョンがなにやら騒がしくなっておるのです。冒険者だけでは対処出来ないようなので、ロンド王国にお断りして、騎士で征伐しようと参った次第なのです。こちらを経由させて頂いた方が早く行けますので」

私はエイブさんの話す内容を聞いて、いても立ってもいられなくなった。


「あのう、もし、出来ることでしたら、ご一緒させて頂けれたらと思うのですが」

「はあああ!何を考えているんだ。キャサリン! そんなの足手まといになるだけだろう!」

私の申し出にエイブさんじゃなくて、ハロルドが噛みついてくれた。


「そんなのやってみないとわからないじゃない!」

「少し歩いただけで、靴擦れ起こすような奴が何を言っているんだ」

「山賊は壊滅したでしょ」

「その分洞窟も壊したじゃないか」

「そらあ、洞窟壊したことは謝るけど、30人以上の盗賊やっつけたんだから良いでしょ。あんたよりも役に立ったはずよ」

「なんだと。あれはお前が捕まっていたからだな」

「あのう、国境のアパッチ盗賊団を成敗されたのですか」

私達二人の言い合いに恐る恐る、エイブさんが入ってきた。

「まあ、何とか」

私は謙遜して言った。


「あの山賊団は結構両国でやらかしてくれておりまして、次は両国で征伐しようと話しておったのです」

エイブさんは考えてながら言ってくれた。

「ハロルド様。女性に助けていただくのはあれなのですが、今回は竜の目撃情報もありまして、人手は少しでも多い方が良いのです」

エイブさんが言ってくれたのだ。


「ほら見なさいよ」

私は喜んで、ハロルドを見下ろした。

「いや、爺、こいつは足手まといになる可能性が大きいぞ」

「でもアパッチ山賊団を成敗された貢献度は大きいのですよね」

「たまたまだ」

「ひどい、ハロルドは出てくるタイミングが最悪で、頭目に馬鹿にされただけじゃない!」

「何を言うんだ。俺ももっと出るタイミングを図りたかったのだが、お前の貞操の危機だったからやむを得ず気を引くためにだな」

「はあああ! なに言ってるのよ。丁度、障壁を展開して全員吹っ飛ばそうと思っていた時にあんたが出て来て邪魔したんじゃない!」

「なに言ってやがる。お前震えて何も出来てなかったじゃないか」

「な、何ですって!」

私達は睨みあった。


「まあまあお二人様。雑魚どもは我が騎士団で何とかいたします。最後の大物の時に少しでもお力添え頂ければそれだけでも助かりますので」

エイブさんが、二人の間を取り持とうとして言ってくれた。


「さすが、エイブさんは、ハロルドの石頭と違って話が判るわ!」

私はエイブさんに抱きつかんばかりに手を握って喜んだのだ。

「勝手にしろ!」

何かハロルドは怒っているんだけど。


私も今後冒険者としてこの国で生きていけるかどうかの瀬戸際だ。ここは、ハロルドに逆らってでも、やるしかないと決意したのだった!

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