第9話 ハロルドにおぶってもらって国境の町に着いたら、前世を思い出して泣いていたら、勝手にハロルドが気を使ってくれました!

次に目が冷めた時は洞窟の傍の木の下にいた。


私が気付いて

「目を覚ましたか」

「げっ」

ハロルドの美形のドアップに私は驚いた。


「人の顔見て『げっ』て何だ、げって」

ハロルドが怒って言った。


「御免、いきなり、あなたの顔が目の前にあったのでびっくりして」

しおらしく私は謝った。

「人の顔見て、驚くなよな」

ブツブツハロルドが文句を言っている。

さすがのイケメンも自分の顔見てげって言われたのは初めてみたいだった。


「きゃっ」

起き上がった私は前からポロリと服が剥がれて下着姿になって、悲鳴を上げた。

慌てて被せられていた服を手繰り寄せる。

「それしかないから取り敢えず着ておけ」

それはハロルドの騎士服だった。

大きいけど仕方がない。


「有り難う」

礼を言って着る。

なんか不思議な者を見るように、ハロルドは私を見た。

「どうかした?」

「いや、礼を言われるとは思ってもいなかったから」

「えっ、いくら私でもお礼くらい言うわよ」

「いや、あんたが来るのが遅いから襲われそうになったんだから、服くらい全部寄越すのは当然よとか言われるかなと」

「そらあ、少しは文句が言いたいけど、ここであなたまでいなくなったら伯爵家まで行けないでしょ!」

「確かにそうだな」

そこ頷くなよな! ハロルドの答えに私は少しムカついた。


せっかく王家からせしめた1000枚の金貨は山賊どもと一緒に下敷きになった。馬も全て下敷きになったみたいで、私はとんでもないことをしてしまったみたいだった。


食料も何もかもなくしてしまったので、早急に国境の街まで行かねばならなかった。


まあ、父の名前出せば金くらい、貸してくれるだろう。



私達は二人で歩き出した。


でも、ヒールの高い靴を履いていたので、とても歩きにくかったのだ。

すぐに疲れてしまった。というか靴擦れが出来て足を引きずるように歩いていると、

「どうした?」

ハロルドが声をかけてきてくれた。

でもそう簡単に弱音をはけない。

「何でもない」

私がブスッとして言うと

「足引きずっていて何もないわけ無いだろう!」

「疲れただけよ」

私が言うと


「お前な。そんな体力で本当に冒険者になるつもりなのか?」

ハロルドが馬鹿にしたように言ってきた。


「これは靴が歩きにくいだけでもん」

私はハロルドの文句に反論する。

私の靴を見て、首を振ると、ハロルドは屈んで背中を出してくれた。


「えっ?」

「何してる。早く乗れ」

ハロルドが強い口調で言った。


「えっ、でも」

私は赤くなった。婚約者でもないのに、若い男に密着するなんて・・・・。


「何恥ずかしがっている。このままだと日が暮れる」

たしかにハロルドの言う通りだった。

私は恥ずかしさを押し殺してハロルドの背中にくっついた。


ハロルドは軽々と私を背負ってくれた。

なんかメチャクチャ恥ずかしいんだけど。

私が赤くなっていることなどお構いなしにハロルドは歩き出す。


「うそ、スピードが変わらない」

私は驚いた。


「何言っている。俺は騎士だぞ。ちゃんと日々訓練しているんだ。こんな軽いお前を背負うことくらい問題ない」

なんか、とても、頼もしいことをハロルドが言ってくれるんだけど。


私はハロルドの背中が気持ち良くてそのまま、寝てしまったのだ!


「おい、キャサリン!」

私は揺り動かされた。

「うーん!」

「着いたぞ!」

「あ、有り難う」

頭を振る。思いっきり伸びをした。

「本当に寝やがっていい気なもんだな」

ハロルドが嫌みを言う。

「ハロルドの背が気持ち良くて! 何かお父さんの背中みたい」

「俺はお前の親父じゃあ無いだろう!」

ムッとしてハロルドが言ってきた。


そう言えば、前世の父さん、私がはねられて死んだと知って、大丈夫だったんだろうか? メチャクチャ過保護なところあったから、私が死んだとなったら号泣したろうな! 父さんに悪い事したな。そう思うと涙が止まらなくなった。


「おい、聞いているのか?」

「ごめんなさい」

私が涙声で答えると


「おい! 大丈夫か? そんなにきつい言い方だったか? すまなかった。ついきつい言い方になったみたいで」

私が泣いているのを知って、ハロルドはギョッとしたみたいだ。


私は慌てて泣くのをやめようとしたけど、何故か涙は止まらない!


慌てて口調を変えて私のご機嫌を取って来るんだけど、その度に私が泣き声で答えるものだから、

「金を気にしていたけど、お前を伯爵家に送るくらいは立て替えてやるから。気にするな!」


慌ててハロルドは勝手に自分で話して、自分で何とかしてくれようとするんだけど。


だから泣いているのはあなたのせいじゃないって!

涙ながらに言うから、それがうまく伝わらないみたい。


泣いていたら、いつの間にかおそらくこの街で一番高いホテルに連れて行ってくれたんだけど。



ええええ!


こんな高いホテルは良いのに!


と言っても、

「ここは俺の顔が利くから、俺が泣かした責任とってここは持つから」

って言ってくれたんだけど、私は前世の事を思い出して泣いていただけでハロルドは何も関係ないのに、良かったんだろうか?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る