第7話 逃げ切れたと思ったのに、何故か山賊に誘拐されてナイフを突き出されました

私は夢を見ていたのだ。


王宮の舞踏会だった。


私はピンク頭に大階段の上から突き落とされたのだった。


「ええええ!」 また突き落とされたの?


そして、振り返ったら、そこにはピンク頭と一緒にハロルドがこちらに向かって笑っていたのだった。


嘘ーーーー! ハロルドもピンク頭の手下だったんだ!




「わあああああ」

私は大声を上げて飛び起きていた。


そして、そこには大声にびっくりしたハロルドがいたのだった。


「わああああ!」

もう一度私は驚いた。ハロルドの顔が近すぎたのだ。今突き落とされた私を笑っていたイケメンの顔のドアップを、いきなり見せられて私はギクッとしたのだ。


「な、何だよ! 一体!」

自分に悲鳴をあげられて、ハロルドは驚いて言った。


「起きたら、いきなりあなたの顔が目の前にあったから」

私は咄嗟に言い訳する。まあ、それも事実だし、こいつがまだピンク頭と繋がっていると判ったわけではない。


「本当に、お前な! あまりにも長いこと気を失っているから、心配になって見ていたんだよ」

ハロルドがぞんざいに言ってくれる。


まあ、今はそういうことにしておこう。でも、こいつがピンク頭の手下だったら、最初から終わっているんだけど・・・・いやいやいや、私はこいつは安全だと思って縋ったのだ。こいつを信じるのは大前提。もし、違ってたらその時はあっさり諦めよう。


私はそう思うことにした。



「山賊は?」

「お前が障壁で大半を弾き飛ばしたんだろうが」

私の問にハロルドが答えてくれた。


そうだった。


「後の残党は見える限り俺たちで掃討した」


ハロルドの答えに私はホツとした。


火を囲んで4人の男がいた。生き残った騎士達が合流してきたのだ。確か、年配の男がトムで後はビリーとジャックだった。


10人いた騎士も3人になったのだろうか?


そう思った時だ。


グーーーー!


私のお腹が盛大に鳴ったのだった。


「お前な。今まで寝ていて、起きたらこれかよ」

「仕方がないじゃない。お腹が空いたんだから」

ハロルドに、私が真っ赤になって言い訳する。


「飯ができたところで起きるなんて、よほど食いしん坊なのか?」

誰かが何か言っているけど、何一つ反論できない。


「本当に仕方がないな」

そう言うと、ハロルドが雑炊をよそってくれた。


「うわあ、ありがとう」

私はそれを手に取るとぱくりと食べた。


「美味しい」

私はこんな美味しい雑炊を初めて食べた。


「すごい、めちゃくちゃ美味しいんだけど、誰が作ったの?」

私が皆に聞くと


「俺だ」

ハロルドがボソリと言った。


「嘘! 凄い!」

こいつは剣も出来て魔術も得意、その上、料理まで出来るのか。


と思ったところで自分と比べてしまった。


私は剣も魔術も駄目。障壁は完璧だが、3分間しか使えなくて、料理もこのイケメン、ハロルドよりも使えない。ひょっとしてこいつ家事炊事も完璧なのか・・・・。


ガーン。私はハロルドよりも出来ることが何もない。少しの間ショックのあまり固まってしまった。


「どうした、キャサリン? スプーンが止まっているぞ。何か問題があったのか?」

「ううん。何でも無い」

あんたのスペックの高さにショックを受けたとは口が裂けても言えなかった。


火の傍で、私が寝て私の周りを男どもが囲んで寝てくれた。


さっき気絶して起きたところなのに、私は疲れ切っていたのか、あっさりと寝てしまった。


それも熟睡してしまったのだ! 本当に馬鹿だった。




そして、ゆらゆら揺られて目が冷めた。


ここはどこ?


なんか変だ。目が覚めるが、声を出そうにも、猿轡を噛まされていて何も話せない。


それに後手に縛られているのだ。


そして、ズタ袋みたいなものに入れられていて、何も見えないのだ。


どうやら馬車に乗せられて運ばれているみたいだった。


ひょっとしてハロルドに裏切られたのだろうか?


でも、それなら、山賊と戦う必要なんて無かったはずなのに。ハロルドはちゃんと戦ってくれていた。




それやこれや考えているうちに、馬車が着いたみたいだ。


「ご苦労だな」

「本当に苦労しましたぜ」

その声はどこかで聞いた声だ。確かトムだったか。



私はズタ袋から投げ出された。


「痛い」

地面に肩から打ち付けられて、痛さで呻いた。





「ヒューーー」

「結構いい女じゃないか」

毛むくじゃらの男達が私を見て卑猥な声を出した。現場は篝火が焚かれた洞窟の中だった。


何日も風呂に入っていない、男達の異臭がする。私は山賊の男達に囲まれていた。


「流石に公爵令嬢ともなると見た目も綺麗だぜ」

「可哀想に、これから俺たちのものでヒイヒイ泣かされることになるんだ」

「案外、そっちの方がヒイヒイ喜ぶかもしれないぜ」

ドット下卑た笑いが洞窟内に響いた。


ええええ! このまま傷物にされて娼館送り一直線なわけ?


私の頭は恐怖心で一杯になった。


そんな時だ。頭目と思しき男がナイフを出したのだ。


私の目がそれを見て恐怖に震えた。


「震えてやがるぜ」

頭目はそんな私を見てにたりと笑ったのだ。


そして、次の瞬間、男はそのナイフを私に向けて突き出したのだ。


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