朱序1  夫人城

朱序しゅじょ、字は次倫じりん義陽ぎようの人だ。父の朱燾しゅとうはその武幹から西蠻校尉せいばんこうい益州刺史えきしゅうししを歴任した。


前秦ぜんしんの勢力が拡大していくころ、朱序は使持節しじせつ監沔中諸軍事かんべんちゅうしょぐんじ南中郎將みなみちゅうろうじょう梁州刺史りょうしゅうししとして襄陽じょうように赴任。つまり東晋とうしんにおける西の最前線の総司令である。


苻堅ふけんが息子の苻丕ふひを派出、襄陽を包囲。朱序は守りを固めきり、苻丕の全軍を率いての猛攻を兵糧切れ直前まで阻みきった。固守、賊糧將盡、率眾苦攻之。


さて、苻丕が攻め寄せてきたとき、朱序の母の韓氏かんしは自ら襄陽城の城壁にのぼり状態を見て回った。このとき西北の角が先ごろの攻撃を受けもろくなっていることに気付いた。そこで百あまりに奴婢や城中の女子を引き連れ、その角を斜めに渡すよう、長さ二十丈あまりのバリケードを築いた。前秦軍が西北の角を攻撃したときに果して城壁がくずおれたのだが、人々は改めてその場所にバリケードを築き直した。こうしたこともあり。苻丕はついに引き返さざるを得なくなった。襄陽人はこのバリケードを夫人城と呼んだ。


朱序はその後も幾度となく前秦軍を跳ね返したが、とは言え人々は心身ともに疲弊していく。そんな中、前秦軍が襄陽城からやや撤退。どのタイミングでの再来襲があるかはわからなかったが、ここで人々の士気がやや緩んでしまう。そのような中、督護とくご李伯護りはくごが前秦軍と通じていた。こうした気の緩み、及び内応により、襄陽城がついに陥落。朱序自身もいちど前秦軍にとらえられた。苻堅は李伯護を殺害の上、市中引き回しとした。その不忠を憎んだのである。朱序は一度なんとか脱出を果たし、宜陽ぎようのひと、夏揆かきの家に身を潜めた。苻堅は夏揆が怪しいと見立て、収監。それを知った朱序はすぐさま苻堅の配下将、と言うか息子のひとり、苻暉ふきのもとに出頭をした。苻堅はこうした朱序のふるまいを慶賀し、その罪を不問とし、尚書しょうしょに任じた。




朱序字次倫、義陽人也。父燾、以才幹歷西蠻校尉・益州刺史。寧康初、拜使持節・監沔中諸軍事・南中郎將・梁州刺史、鎮襄陽。是歲、苻堅遣其將苻丕等率眾圍序。序固守、賊糧將盡、率眾苦攻之。初、苻丕之來攻也、序母韓自登城履行、謂西北角當先受弊、遂領百餘婢并城中女子於其角斜築城二十餘丈。賊攻西北角、果潰、眾便固新築城。丕遂引退。襄陽人謂此城為夫人城。序累戰破賊、人情勞懈、又以賊退稍遠、疑未能來、守備不謹。督護李伯護密與賊相應、襄陽遂沒、序陷於苻堅。堅殺伯護徇之、以其不忠也。序欲逃歸、潛至宜陽、藏夏揆家。堅疑揆、收之。序乃詣苻暉自首、堅嘉而不問、以為尚書。


(晋書81-12)




夫人城ー!!!!


……改めてちゃんと読んだら、別に韓夫人がそこに立てこもって戦ったとか、そういうたぐいのやつじゃありませんでしたね。あくまで北西の角の防御力が低いから、そこを増築しただけだ。まぁとは言えここは韓夫人もカッコいいし朱序自身もクッソカッコいいので良し! なんなんだ自分を匿ってくれたやつが捕らえられたから自首って。男前すぎやろもん。

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