桓伊3 怨詩
こうした情勢が醸し出される中、孝武帝が
孝武帝が、桓伊に笛の演奏を求める。桓伊はその命令に対する不快感をおくびにも出さぬまま一曲を吹ききると、笛から口を放し、言う。
「臣が琴の腕前は笛のそれに及びませぬが、笛に合わせて琴にての弾き語りをすることが叶います。弾き語りすることをお認め頂き、合わせて笛の吹き手をひとりお願いできませぬか」
ほう、桓伊の新たな趣向を聴くことができるのか! 孝武帝はすぐさま笛の吹ける妓女を呼び出した。すると桓伊が再び言う。
「申し訳ござらぬ、御府のお方と臣の相性がよろしくないようにございます。臣の抱える奴との相性が良いので、吹かせてよろしいでしょうか」
はははこやつめストレートに言いよるわ、いよいよ孝武帝は上機嫌になり、呼び寄せることを許した。
こうして奴婢が笛を吹き始めれば、桓伊は琴をなで、歌い始める。
なぜ自分の所の奴婢を連れてきたのか? この宴会の儀礼に合わない曲を演奏させるためだった。演目は
為君既不易 為臣良獨難
忠信事不顯 乃有見疑患
君たるは易からず、
ただ臣たるもやや難し
忠心は表には見えず
さらば疑われ厭われるもの
周旦佐文武 金縢功不刊
推心輔王政 二叔反流言
その功績は莫大なもの
忠心より王を輔けんと欲せど
その甚だ切々とした歌い上げぶりは、俯くにせよ見上げるにせよ、実に美しきものであった。いうまでもなく淝水で大功を挙げた謝安を孝武帝が疑って掛かっていることに対する悲哀の表出である。それを聞いて謝安は涙し袖を濡らし、謝安の側に歩み寄って腰掛けると、そのもみあげを撫でさすり「あなたは何と言う、何と言う方なのだ」と言った。孝武帝は甚だ恥じ入った。
時謝安女壻王國寶專利無檢行、安惡其為人、每抑制之。及孝武末年、嗜酒好內、而會稽王道子昏醟尤甚、惟狎昵諂邪、於是國寶讒諛之計稍行於主相之間。而好利險詖之徒、以安功名盛極、而構會之、嫌隙遂成。帝召伊飲讌、安侍坐。帝命伊吹笛。伊神色無迕、即吹為一弄、乃放笛云、「臣於箏分乃不及笛、然自足以韵合歌管、請以箏歌、并請一吹笛人」。帝善其調達、乃敕御妓奏笛。伊又云、「御府人於臣必自不合、臣有一奴、善相便串」。帝彌賞其放率、乃許召之。奴既吹笛、伊便撫箏而歌怨詩曰、「為君既不易、為臣良獨難。忠信事不顯、乃有見疑患。周旦佐文武、金縢功不刊。推心輔王政、二叔反流言」。聲節慷慨、俯仰可觀。安泣下沾衿、乃越席而就之、捋其鬚曰、「使君於此不凡」。帝甚有愧色。
(晋書81-3)
えっち!
だ!!!!!!!!!!!
■斠注
伊便撫箏而歌怨詩曰、
『
桓伊が連れてきた笛吹きの奴婢、名前は
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます