卞壼   朽ちぬ死体

卞壼べんこん、字は望之ぼうし。「」ではないことに要注意だ。濟陰さいいん冤句べんく県の人である。いきなり紹介しているが、東晋初期のひとである。


庾亮ゆりょう蘇峻そしゅんを抜擢しようと考えたとき、卞壼は朝会にて言っている。

「蘇峻は狼の子、繋がれて喜ぶものではございませぬぞ。必ずや乱が起こりましょう」

その後果たして、327 年、蘇峻の乱が勃発した。


卞壼は東陵口とうりょうこうに迫りくる蘇峻軍を迎え撃つも、その手勢はわずか数百人。十万を数える蘇峻軍に果敢に立ち向かうも、まもなく敗死した。48 歳であった。ふたりの子、卞眕べんしん卞盱べんくもまた父とともに死んだ。父の死を見て、もはやこれまでと不帰の特攻をかけたのである。


340 年、成帝せいていは卞壼を思い、詔を下した。


「卞壼は朝廷にあってその忠義、恭しさを示していた。その身を凶賊に害されたが、その封地は遠く、秩禄も些少である。これでは残された妻子も十分に主を祀れまい。そのことに慨嘆せずにおれぬのである。そこで卞氏の禄を加増するようにせよ」


その後、安帝あんていの時代に卞壼の墓に盗賊が入り込み、暴かれた。このとき卞壼の髪は真っ白であったが、その顔色はまるで生きているかのようであり、ぎゅっと両手を握りしめ、その爪が手の甲を貫いていた。安帝は錢十萬を支給し、その墳墓を修繕させた。




卞壼字望之,濟陰冤句人也。時庾亮將徵蘇峻,言於朝曰:「峻狼子野心,終必爲亂。」峻果稱兵。壼復爲尚書令、右將軍、領右衛將軍,餘官如故。峻至東陵口,率厲散眾及左右吏數百人,攻賊麾下,苦戰,遂死之,時年四十八。二子眕、盱見父沒,相隨赴賊,同時見害。咸康六年,成帝追思壼,下詔曰:「壼立朝忠恪,喪身兇寇,所封懸遠,租秩薄少,妻息不贍,以爲慨然!可給實口廩。」其後盜發壼墓,尸僵,鬢髮蒼白,面如生,兩手悉拳,爪甲穿達手背。安帝詔給錢十萬,以修塋兆。


(晋書70-1)




卞壼さんの謎の不死身エピソード。いや死んでるけど。このひとかなり剛直だったエピソードが残されてるから、まぁ人々的にはさもありなん、的な感じだったんでしょうね。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884883338/episodes/1177354054885968599

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884883338/episodes/1177354054887513081

https://kakuyomu.jp/works/1177354054884883338/episodes/1177354054890546335

この辺。まぁ面白い人です。お墓のエピソードも面白いけど、さすがにこれは志怪行きですね。

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