卞壼   直言のひと   

兗州八伯 卞壼べんこん

 既出:簡文3、庾亮28



王導おうどうさまや高僧・尸黎蜜多羅しりみったらに、

その厳格さを恐れられていた人、卞壼。



王導さまは言っている。


刁協ちょうきょう殿の察しの良さ、

 戴淵たいえん殿の厳格さ、

 卞壼べんこん殿の孤高ぶり!」


……お前割と褒めてないだろ。



ともあれこれまでもその厳格ぶりが

いろいろなところで

あげつらわれていた卞壼さん、

ご自身も人物評価をなさっている。


例えば春秋時代の晋の名士、羊舌肸ようぜつきつ

高位には就いてはいなかったものの、

その広い学識で政策アドバイザーとして

広く尊敬を得ていた人だ。


かれについては、こう言っている。


「その朗々たる様は、

 まるで広々とした邸宅のようである」


立場に依らず、ただ正しいことを言う。

直言の士、卞壼さんにとって

憧れだったのだろうか。



また郗愔ちいんについて言っている。


「郗愔様には三つの矛盾がある。


 上には方正に仕えるが、

 下からのおべっかを好む。


 身を清らかに治めるが、

 はなはだ計算高い。


 自ら読書を好むのに、

 他者の勉強を憎む。


 以上三点である」




王丞相云:「刁玄亮之察察,戴若思之巖巖,卞望之之峰距。」

王丞相は云えらく:「刁玄亮の察察、戴若思の巖巖、卞望之の峰距」と。

(賞譽54)


卞令目叔向:「朗朗如百間屋。」

卞令は叔向を目すらく:「朗朗たるは百間なる屋が如し」と。

(賞譽50)


卞望之云:「郗公體中有三反:方於事上,好下佞己,一反。治身清貞,大脩計校,二反。自好讀書,憎人學問,三反。」

卞望之は云えらく:「郗公が體中に三反有り、事が上に方ぜるも己を佞が下にせるを好む、一反なり。身を清貞に治むるも大いに計校を脩す、二反なり。自ら讀書を好むも人の學問を憎む、三反なり」と。

(品藻24)




卞壼

その直言があらゆるところから恐れられてて面白すぎる人。蘇峻そしゅんの乱で父親共々玉砕して果てた。ところでこの人、名前が「壺」→「つぼ」ではない。「壼」→「宮廷の廊下、あるいは軋みの音」である。割といろんなところで混同されているが、わかるかそんなん。

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