晋書列伝

晋書巻34

羊法興  功臣再評価

晋の天下統一に大きく寄与した、羊祜ようこ。彼の功績はしんという国を挙げて称えるべきものとされ、代々の鉅平きょへい侯がその祭祀を継承することになっていた。孝武帝こうぶていの時代の継承者が羊法興ようほうこう。羊祜の兄の五代目子孫に当たる。桓玄かんげんに与していたようで、桓玄が滅ぼされると鉅平侯祭祀も取り潰しとなった。


この事態に対し、荀伯子じゅんはくしが訴え出る。


「臣は聞いております、上古の裁判官である皋陶こうとうを始祖とする国が春秋時代に取り潰しとなったとき、臧文仲ぞうぶんちゅうは深く嘆き悲しんだ、と。またせい伯氏はくし管仲かんちゅうに三百戸の邑を奪われておりますが、孔子こうしはこのふるまいが仁であったと述べています。功が高かればたとい百世代を数えても失われるものでもなく、みだりな賞与を下したところで、それは長続きするものでもございません。


羊祜様は徳高く明察、まさしく国を挙げ称えるべきお方。国中の人々が最も敬い慕う名臣であり、禅譲や平定に至る大いなる功績をお挙げになりましたが、いまやその祭祀の継承者がおりません。かん蕭何しょうかの子孫が絶えた際、一族の別のものに祭祀を継がせました。鉅平国の祭祀も同様の扱いをすべきでございましょう。


一方、広陵こうりょう国の封爵を受けている陳準ちんじゅんの家門は、は、逆賊の司馬倫しばりんの手先として働き、淮南わいなんの地に災難をもたらしたにも拘わらず、臆面もなく大国の封爵を受けております。その後の戦乱によって混乱がもたらされたため、特に処罰を受けることもなく、今なお祭祀が続いております。いま改めて陛下が復帰なされた以上、どうして天下に物事の善悪を示さずにおれましょう。ならば広陵国は廃すべきと考えます。


また衛瓘えいかんは冤罪によって処刑され、このため衛瓘を祀る家門は県公より郡公に格上げとなっております。しかし西晋せいしんの時代、多くの功臣らがやはり悲劇的な死に見舞われております。衛瓘だけが特別扱いとなる理由がございません。そこでその爵位を再び県公に戻せば、賞罰、善悪の公平さが示されることとなりましょう」


しかしこの上奏は聞き入れられなかった。




孝武太元中,封祜兄玄孫之子法興為鉅平侯,邑五千戶。以桓玄黨誅,國除。尚書祠部郎荀伯子上表訟之曰:「臣聞咎繇亡嗣,臧文以為深歎;伯氏奪邑,管仲所以稱仁。功高可百世不泯,濫賞無得崇朝。故太傅、鉅平侯羊祜明德通賢,國之宗主,勳參佐命,功成平吳,而後嗣闕然,烝嘗莫寄。漢以蕭何元功,故絕世輒繼,愚謂鉅平封宜同酇國。故太尉廣陵公準黨翼賊倫,禍加淮南,因逆為利,竊饗大邦。值西朝政刑失裁,中興因而不奪。今王道維新,豈可不大判臧否,謂廣陵國宜在削除。故太保衞瓘本爵菑陽縣公,既被橫害,乃進茅土,始贈蘭陵,又轉江夏。中朝名臣,多非理終,瓘功德無殊,而獨受偏賞,謂宜罷其郡封,復邑菑陽,則與奪有倫,善惡分矣。」竟寢不報。


(晋書34-1)




これは荀伯子のバックグラウンド拾わなきゃだめなやつですね。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054891500185/episodes/1177354054895303802

潁川えいせん荀氏といえば曹魏西晋建国に絡むトップバリュー。ただし東晋ころになると勢いが減じ、列伝されているクラスの人物となると祖父の荀羨じゅんせんが最後。父親の扱いは軽いし、荀伯子自身も列伝の隅っこに「名門の子孫だしのっけとくか」くらいの扱いをされています。


ゲスいアレをキメると、自分の家の扱いが軽いのに、不当に重く扱われてる奴らが気に食わねえ、になるでしょうかね。このひとの発言って結構小物くさいしな……。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る