第20話 あんたをこのパーティから追放する! そしてわたしは





「サワ、あんたをこのパーティから追放する!」


「あ、アンタンジュさん? 何を言っているんですか? 理由はあるんですか? わたしは皆のレベルアップを手伝ったり、カエルの皮を売ったり、パーティに貢献してきたじゃないですかっ!」


「サワ、あなたは」


「ウィスキィさん、何を?」


「あなたは、緑色なのよ!」


「ええっ!? そんなの今に始まった話じゃないじゃないですか! ジェッタさん、何か言ってやってください」


「……そうだな。サワは生臭い」


「それ、女性に言っていい言葉ですか!? フェンサーさん、フェンサーさんなら前向きなこと、言ってくれますよね?」


「わたしが思うに、戦闘中に妙なメロディで狂った歌詞の歌を歌うのは、よろしくないですわ!」


「そ、それは確かに……。はっ、いやいやそうじゃない。ターンっ! わたしとターンはバディよね? 永遠の絆よね?」


「儚い」


「誰ですか、妙な言葉をターンに教えたの!?」


「わたくしですわ! 一緒のベッドで眠る時に教えたのですわ」


「むきー!! ポロッコさん、わたしはあなたのメンターですよね? そうですよね?」



「……なんなんです? この茶番」


「パーティ追放ごっこです」


「最後の方は本気っぽかったですよ」


「だって!」


 折角のパーティ追放ドッキリは、ポロッコさんにあっさりと見破られてしまった。



「大体、サワさんが追放されるわけ、ないじゃないですか」


「チっチっチっ、そういうのが追放されるのが面白いところなんだよ」


「まあ、確かに緑色で生臭いのは事実ですけど」


「酷い!」


 まあ、ポロッコさんもこれくらいの冗談を言えるような関係になった。良きかな良きかな。



 ◇◇◇



 わたしがプリースト互助会で教育担当、いや今では『教導担当主任』となって早3か月。2日に一回と週イチでお休みが入るから、そんなペースでやっとこさ、初期40名ちょっとのレベルアップが終わろうとしていた。


 そんなパーティ『クリムゾンティアーズ』だが、みんなレベルを上げていた。


 まずはわたしことサワ。ちなみにスキルは情報量が多すぎるので省略だ。


 ==================

  JOB:PRIEST

  LV :20

  CON:NORMAL


  HP :9+67


  VIT:15+18

  STR:15+25

  AGI:14

  DEX:14

  INT:20+41

  WIS:13+60

  MIN:17

  LEA:17

 ==================


 ついにレベル20に到達した。当然スキルも全部取得。最初に引きが微妙だったWISも、なんとか伸びている。VITとSTRはオマケだ、こんなのは最後に上げればいい。


 なんでレベル10から20までこんなにかかったか、それもまたゲームの仕様だ。レベル10までは比較的軽く、そしてレベル10から一気に必要経験値が大きくなるのだ。レベル20からはさらに。カエル狩りにも、限界だってある。


 そしてあと一息だ。何がって?


 レベル13をマスターレベルと呼ぶ。これはスキルを全部覚えるからだ。だが、そこで終わりじゃない。ここまで設定を説明していなかったけど、スキルは各々『最大9回』までしか使えないんだ。そして、最初から9回使えるわけじゃない。大体3回くらいから始まって、レベルごとに回数が上がっていく。

 つまり、全部のスキルを9回使えるようになるには、レベル13から更に上を目指さなくちゃならないわけだ。具体的には20から25くらい。これを『コンプリートレベル』と呼ぶ。現地では知らないけど、マスターレベルって単語もあるくらいだから、同じかな。



 というわけで、わたしはそのコンプリートレベルに差し掛かっている。多分あと2か3上げればコンプリートだ。そこでジョブチェンジの予定だ。何にするかは決めている。



 次にターン。なんいうか、ド根性でレベル16まで上げてきた。幾らレベルアップが軽いとは言えただ事じゃない。たまにわたしの横でカエルを蹴っ飛ばす作業しかしていなかった気もするが、それはまあいい。


 ==================

  JOB:SOLDIER

  LV :16


  CON:NORMAL


  HP :11+58


  VIT:16+19

  STR:12+27

  AGI:19+20

  DEX:17+33

  INT:9

  WIS:9

  MIN:14

  LEA:19

 ==================


 当然スキルは全部取得した。そろそろ別ジョブでもいいんだけど、本人はコンプリートレベルに持っていく気合いだ。わたしへのライバル心もあるみたい。プレイヤースキルも凄い。



 ◇◇◇



 さて、ここからは巻きだ。


 アンタンジュさん。

 ==================

  JOB:FIGHTER

  LV :13

  CON:NORMAL


  HP :15+53


  VIT:15+18

  STR:16+32

  AGI:14+17

  DEX:14+21

  INT:11

  WIS:11

  MIN:16

  LEA:12

 ==================



 ウィスキィさん。

 ==================

  JOB:WARRIOR

  LV :13

  CON:NORMAL


  HP :12+57


  VIT:15+24

  STR:14+39

  AGI:13+7

  DEX:13+13

  INT:15

  WIS:10

  MIN:14

  LEA:13

 ==================



 ジェッタさん。

 ==================

  JOB:WARRIOR

  LV :13

  CON:NORMAL


  HP :15+61


  VIT:17+27

  STR:17+47

  AGI:11+7

  DEX:14+25

  INT:8

  WIS:11

  MIN:15

  LEA:11

 ==================



 フェンサーさん。

 ==================

  JOB:WIZARD

  LV :13

  CON:NORMAL


  HP :11+41


  VIT:13

  STR:13

  AGI:13

  DEX:14+31

  INT:18+45

  WIS:13+11

  MIN:15

  LEA:10

 ==================



 最後にポロッコ。

 ==================

  JOB:PRIEST

  LV :11

  CON:NORMAL


  HP :10+36


  VIT:15+11

  STR:14+11

  AGI:11

  DEX:14

  INT:8+32

  WIS:12+30

  MIN:14

  LEA:10

 ==================



 ポロッコさん以外は全員レベル13になった。ポロッコさんもレベル11。これはもう『クリムゾンティアーズ』はマスターレベルパーティと言って過言ではない。

 実際、冒険者の酒場やら宿屋らで、噂になっているのだ。この街にはいくつものマスターレベルパーティは存在している。だが元はぐれ者で、しかも女性だけというのだから、これは前代未聞だったらしい。ざまぁ。


 そうして大部屋に集合したわたしたちは、宿屋の食堂へと向かった。



 ◇◇◇



「おい、『クリムゾンティアーズ』だぜ」


「あれがか。ホントに女ばっかじゃねえか」


「目を合せるな。特に犬耳のアレはマズイ。暗闇で後ろからバッサリだ。多分ニンジャだろうな」


 ほほう? わたしたちの噂話かね。いいねえ、こういうのって最高。


「でも、どうやってレベル上げたんだ?」


「噂じゃな、プリースト互助会の鬼教官が、なんかやらかしてるらしい」


「ああ、そういや最近、レベルの高いプリーストが増えたって話だったな」


「そのプリーストを鍛えたのと、『クリムゾンティアーズ』を育てたのが同じヤツらしいんだ」


「おまえんとこも一人派遣されてんだろ? なんで聞かない?」


「聞いたに決まってるだろ」


「じゃあなんで」


「青い顔をして教えてくれないんだ。そこをなんとか聞き出そうとしたら、泡を吐いて倒れた」


「……」


「うわ言でな、『狂気の沙汰』とか『緑の悪魔』だとか『カエルは一生見たくない』だとか」


「どんなレベルアップだよ……」



 ああ、無性に暴れたくなってきた。今日の狩りは燃えそうだ。いっちょカエル記録更新と行こうか。


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