112 もぐのです
「さて、4人のかわいこちゃん達。あんたたちの仕事はなに? そうドキフお姉様の仕事を手伝うメイド達よ。さぁ復唱しなさい☆」
「どきふおねーさまのしごとをてつだうめいどです」
「どきふおねーちゃんのしごとをてつだうめいどでちゅ」
近くでドキフさんが質問をし、ルシとシルが復唱している声が聞こえる。
でも僕はそれ所じゃない。
僕の大事なファーストキスがこんな、こんな女性みたいな男に奪われたのだ。メイド服の中に入っていたハンカチを取り出して口をふく、口の中に舌も入ったきがするし湖に走って口の中を洗いたい。
夢見る女の子。とまではいかないけど僕だってファーストキスは大事にしたかった。人工呼吸とか誰かを助けるためにキスをするのはそれはカウントはいれない。
でも今回はもうブチューって奴で完璧なキスだから。
…………その一瞬だけ綺麗な女性に襲われて天国に行ったかと思ったのにヒゲはないよヒゲは、それで地獄に叩き落とされた僕の気持ちをわかってほしい。
「うああっ!」
突然僕の髪が掴まれた。
掴んだ手でドキフさんで僕の顔を覗き込んで怒気を含んでいる。
「かわいらしい子☆ 何をしているのかしら?」
「何って口を洗っているんです」
直ぐ近くで、そんな正直に言う? と、サーニャさんの小さい声が聞こえた気がした。
「見ればわかるわ。このドキフお姉さまがキスをしたのにどうして洗っているのかしら? って聞いているんだゴラァ☆!」
「いやだって、ヒゲって事は男なんですよね? 僕のファーストキスがその男は嫌なので――」
「あら。女の子なのに僕って事は、あなたはボクっ子なのね……いいわ君、素晴らしい!」
怒っていたはずのドキフさんが、突然に笑顔になった。
僕の頭から手を放してくれたので尻餅をつく。
「そう、このドキフお姉さまは何時だって心は女の子☆。顔もそこらの女性ようりも女性と思わない?」
両手を広げてくるっと回転してみせてくる。
「でも聞いて!」
まるで劇のように喋りだしたドキフさんはの質問に答えようとしてかぶせられた。顔は本当にきれいなのがずるい!
「聞いてま――」
「でも男と女の違いは、あるかないかの違いしかないのよ。あなたは付いていない、このドキフお姉さまにはついているだけ…………錬金術で取ってしまおうと何度思った事かしら、でも中々に勇気がいるじゃない? 怖いのよ」
「はぁ……」
怖いのはドキフさんの行動です。
「ううん。怖がらなくていいわ、よく見てこの顔を☆ もしかしてかわい子ちゃんあなた、女性らしい顔をしても男とのキスは嫌なのね。
わかる、わかるわ! そう男なんて滅びればいいのよ。それに軽い事故なのよ? 聞いてちょうだい。
ドキフお姉さまは、純粋に女の子同士のキスを教えようと思ったのに、落ち度だったわね……許してちょうだい☆」
まず純粋の女の子のキスを教えてくれるならサーニャさんとさせて欲しい。
ちらっとサーニャさんを見ると思いっ切りにらまれた。
あと、男が滅びればいいなら、まずドキフさんが最初に滅んだら? と言いかけて慌てて口を閉ざした。
「あの…………ドキフ様」
「可愛い小娘二号ちゃん、私の事はドキフ女王様かドキフお姉さまよ。様だけじゃたりない、今度間違えると裸で湖を泳いでもらうわよ。で特別に発言する権利を与えてもいいわよ何☆?」
声をかけたサーニャさんの息を飲む音が僕にまで聞こえてきた。
たぶんドキフさんは本気だ。
「あ、あの。過去におとう……男が仕えた事はないんでしょうか? 後もしも男が来たらどうするんですか……」
「もぐわよ」
語尾に☆もつけずに無表情で答えるドラフさんに誰も口を開けなくなった。
「あらやだ、怯えないで可愛い子猫ちゃん達、この館には男なんていないから、それとも誰が男なの☆?」
僕は全力で首を振る。
ルシも首を振ってくれて、シルは僕を指さそうとしてサーニャさんに腕を抑えられた。
ありがとうサーニャさん。
「今回のかわい子ちゃんは随分とにぎやかね、普段は無口な子が多いのに。ほら安心しなさい。さぁ今日はもう部屋で休みなさい屋敷を案内してあげるわ☆」
ドキフさんが先に屋敷に入り僕達もそれに続く。
ドキフさんの手には紙が握られており、僕達の名前が書かれているようだ。
確認するように僕達の名前を嬉しそうに口にしながら先に進んでいく。
長い廊下を進み最後に押し込まれた部屋は簡易なベッドが5個ほど並んだ部屋で大きな鏡が一つ。テーブルにはパンと飲み物が置かれて窓は見当たらない。
「らっくおにい……おねえちゃん! まどがないのに明るい! すごいすごい」
「うわーパンもあるうルシおねえちゃん食べていいのかな?」
ルシとシルの言葉にドキフさんが凄く喜んで、好きになさい☆ と喋りだしたい。ほんっとうに静かに笑う姿はとてもきれいなお姉さんにしか見えない。
「夜中でもそこのスイッチを押せば明るくなるわ。ドキフお姉さまは東部屋で寝るから朝になったら起こしてちょうだい、そこの時計がなるから時間は平気ね厨房にある食べ物は全部好きに食べていいわよ、ドキフお姉さまの朝食は作らなくていいわ☆」
最後にごゆっくり。と、いうとドキフさんは扉を閉める。
そして外側から鍵を閉められた。
足音が小さくなると、僕とサーニャさんは同時に息を吐く。
「ラックさん! どうして殴らないよ!!」
「声が大きいっ、聞こえるかも」
「っ………………どうして殴らないのよ、あのオカもごごもご」
「あぶない! 万が一聞かれていたら大変だよ」
「気をつけるわよ」
静かに喋りなおすサーニャさん、ルシとシルはパンを食べてはベッドの上でポンポン跳ねている。
「だからいきなり殴っても解決にはならないよ、それに結構良い人かもよ」
「いきなりキスをする人が?」
「……………………」
「何か言ったらどうなのよ、突然無言になるの怖いわよ」
「無かった」
サーニャさんが、何が? と聞いて来た。
そんなのはもちろん決まっている。
「僕はキスなんてされてない」
「は? 何を――」
うん。されてないから大丈夫。
うん。されてないから大丈夫。
うん。されてないから大丈夫。
うん。されてないから大丈夫。
うん。されてないから大丈夫。
「――――ックさん! ちょっと」
「えっ呼んだ?」
気づけばサーニャさんが僕を呼んでいる。
「ええっと、その……と、とりあえず屋敷の中を調査したいから鍵壊してくれる? あなたの補助魔法? というので」
「ああ、ええっと危ないと思ったら偶然鍵が開いていた。って事に」
これは事前に決めていた作戦だ。
僕はマナオールアップを2段階かけて鍵のかかったドアノブを触った。
ひざから力が抜けてその場に倒れる。
「あれ?」
「ちょっと!?」
魔力が吸われた……?
僕はもう一度マナオールアップをかけてドアノブに触ってみた。
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