107 ラックメイド隊!
綺麗なベッドの上で目が覚めた。
体には何もつけていなくいわゆる裸って奴で、後はとにかく頭が痛い。
「熱は無い……みたい。ええっと……これって二日酔い……なんだよね。なんで?」
自慢じゃないけど僕はお酒に弱い。あと飲むと記憶が無くなったりもする、それで何度か失敗した結果二度と飲まない。と、決めたのにベッドの周りには数本のビンと何故かタルまで置いてある。
「うん。記憶がない、とりあえ――ふえっ!?」
右手に力を入れた、ふに。ペタ。と手のひらに感触が伝わって、どくんどくんと心臓の音が聞こえた。
僕のベッドで隣に誰かが寝ているのだ。
「あわわわわっご、ごめっ――――…………リバー……おはよう」
「はい、全裸のリバーです。昨夜はお楽しみでしたね。と、いうかです、なぜ突然諦めた様な声になるのでしょうか? リバー大変不思議です」
右側で肩から下を隠しているが多分に裸で寝ているリバーが僕を見上げて来た。
諦めもなにも何度もこういう冗談をうけているし、その不本意ながらも裸を見られたり見たりもしたので、不思議と気分は落ち着いてきた。
僕が黙っているとリバーが元気に話しかけてくる。
「普通はラック様のえっちー。から始まって、これはあれですねリバーの裸に興奮した。と、言って襲う奴ですよ♪ どうしましょうラック様は現在フリーですし、ミリア様達と合流前に一回試します? と、言いたい所なんですけどラック様、元気ないですね?」
リバーは隠れている僕の下半身を見て訪ねて来るけど。僕の顔は上だからね、下半身に顔はないからね。
「何度もいうけど僕はロリコンでないし、だってリバー子供でしょ……」
「ガーン! あれほど胸チラやパンモロを見たラック様がリバーに興味を示してくれません」
そりゃ、ちらっと視線に入ったら見る。僕だって男の子だからね。でも、目がさめたら子供が全裸で寝ていても興奮はしないよ。
僕の好みはその、胸が大きくて僕を包んでくれるような人だ。
「所でまだ宿場に――」
確認だ。
サーキュアーの国でパトラ女王に求婚をせめられて政治的結婚である事は明白で……とりあえず変装して逃げた。
最近の境遇に悩んでいたら、悩みが吹っ飛びますよ。とリバーから何かを飲まされたまでは覚えてる。
で、朝になったらこれ。
「――――いる、はずだよね?」
「あっていますよ♪ しいていえばラック様に変装したクアッツル様を守るためにミリア様、ザック様が陽動として動いています。ぐらいですかね? なのでラック様はメイドの姿で過ごしているぐらいです」
よかった。
なんだか1月ぐらい寝ていた気分で色々と寝ぼけている可能性もある、しかも以前の記憶が物凄いあやふやだ。
グィンに追放されてサーリアに振られたのは変わらないけど、細かい所で混乱している。
「ご心配でしたら後日リバーの日記を見せましょう。ラック様がうぶ声を上げた時からつけています、それに過去は所詮過去です。過去が変わった所で未来は変わりませんよ♪」
それはもう日記では無くて観察だ。
「僕には両親がいないからね、うぶ声といっても……って問題はそこじゃなくて、過去が変わったら未来が変わるからね!?」
後はリバーと会ったのは1年ぐらいの間でそれ以前の事を知っているわけが……ない。
バン!!
部屋の扉が突然に開……吹っ飛んだ。
長身であり角を生やしたメイドが黙って僕を見つめてくる。
「うわっ誰!? って………………おはようナイ」
魔族で斬っても刺されても死なない無口なナイが突然に部屋に入ってくる。
頭の角を外せば一応一般的な会話は出来るんだけど、人間以下の弱さになるのが困る。と、いうので角は付けたままである。
僕としてはどっちでもいいかな。
彼女が何で僕達についてくるのかはいまだ持って謎だし、彼女は僕の事をパパと呼ぶ。
「お…………パ……!」
「ええっとおはよう」
「ナイさん、先輩が忠告しますけど部屋はノックをして開けないとダメですよ? ほむ……ノックはしたら扉が吹っ飛んだ。なるほど……だそうですラック様♪」
ナイは無言なのにリバーが通訳してくれると、興奮気味のナイは僕にメイド服を見せつけてくる。
「ラック様が昨夜まで着ていたのはもう破れてますから新しい奴ですね、ナイが夜なべして作ってました」
「なんで?」
「これも変装ですよ」
それは僕も知っている。
「聞きたいのはなんで昨日着ていたのが破けて――」
「ラック様が悲しむのでいえません♪」
いやなんで!?
リバーがそういうといつの間にかメイド服を着てベッドから出ていく、その間にもナイは両手で僕にメイド服を押し付けて鼻息が荒い。
「着るから……」
「…………むふー…………」
ナイが僕の着替えを終わるのを待っているので思いっきり着替えにくい。
だってなぜか裸だし、リバーが察してナイを部屋の外に連れていこうとする、途中で吹き飛んだ扉も応急処置して直してくれた。
「ではラック様先に行っています♪」
「着替えたらいくよ」
逃亡するとはいえ、つらい。
もう僕は20才だよ? 女装は僕の趣味じゃないのに、仕方がなくメイド服を着ると鏡の前に立つ。
目元は前髪でかくして喉はスカーフで隠せば女性に見えなくもない。
「うん。完璧だ」
階段をおりて何時もの店へと向かう、宿を出た所で僕の視界が突然手を引っ張られた。
「うわっ!?」
「静かにしろ! やっと見つけたぞこの駄メイドめ!」
「人違いです」
即座に出る言葉、つかんだ相手を見ると見たこともない中年男性だ。
「普段からメイド服を着たメイドに人違いもあるかっ! 他のメイドが待っているんださっさと来い。こっちだって仕事だからな」
あれ? 他のメイドってリバーとナイだよね。
「もう先にいるんですか」
「……当たり前だ何人もいるから早く来いっていっているだろ!」
怒られた。
それであれば黙ってついて行くのがいいだろう。
なんだろう、リバーもナイも一言いってくれればいいのに。
宿場の出入り口に黒い馬車が止まっていた。
後ろに乗れ。と言われてその後ろに回り込む、中は暗くてよく見えない。
うっすらとメイド服が見えるのでナイかリバーだろう。
「ごめんごめん。二人とも、ええっと待たせたみたいだね」
一声かけて乗ると背中で鍵のかかる音がした。先ほどの知らないおじさんが鉄格子をかけているのだ。
「え?」
おじさんは何も言わないで馬車を発信させた。
「リバー!? ナイ!? これってな。ふえっ!? ――――誰さん……でしょうか」
暗闇で見えなかったけど、あきらかにリバーとナイではないメイド服を着た女性達が僕を見てはとても暗い顔をしていた。
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