第四部
106 メイド服の中身は男性用下着です
僕は今サーキュアーの国から離れた場所にある宿場にいる。
街道沿いにあり、商人や旅人、冒険者などが使うため閉店と言う事がない。
といっても暮らすのには便利な土地ではないのでそこまでは大きくない。村をぎゅーっと小さくした感じ。
その一軒の酒場で僕はトレードマークの角をターバンで隠したメイド服姿のナイへとお喋りをしていた。角を外していないナイは聞くのが専門で一方的に僕が喋る感じにはなっているけど。
「――――って。最近楽しいけどつらいんだ。そりゃ僕だって人間だ、生きていくにはお金は必要だし一人では生きていけないよ。でも、最近……ああっごめん。また最近って繰り返しだよね、流石に王になれは僕だって逃げるよ」
ナイは黙って聞いてくれる。逃げるよ。ってのはパトラ女王から実際逃げた話である。
夕方にはアルトさんが待合室に入って来て、僕へと膝をついて明日から新王としてよろしくお願いします。と地の底から唸るような声で僕に忠誠をつくした。
どうやらパトラ女王は本気で僕を王にするつもりらしくアルトさん達では取り消しを出来ないのも把握した。
で、そこからが大変で、ミリアさんは勝手に! と、怒り出すし。
ザックさんは良かったな。と言ってくる。
リバーに関しては王様付メイドってあるんですかね? など疑問形で聞いてくるし。
解決方法な誰も見いだせなく思わず逃げたらどうなるんですか? と口にしたのが間違いだった。いや正解だったのかな?
この1日の事を思い出していると僕の目の前にいるナイが静かに喋ってきた。
「パパ……すぅ……王…………なら…………なぜ?」
ナイはたぶん。パパ王になぜならない? と言いたかったに違いない。息を吸った分、変に聞こえてしまう。
僕は黙って首を振る。
丁度周りには誰もいなく、僕が思った事をナイだけには話してみる事した。
ナイは口数も少ないけど周りに余計な事は言わない。
「無理だよ。パトラ女王が僕を王にしようって話は亜人の女王と人間が結婚すれば王国も見直すでしょうって……話だよね。だったら僕じゃなくてもいいだろうし、パトラ女王だってできれば本当に好きな人と結婚したいでしょ」
アルトさんなんて口から血流すほど僕を睨んでいたし、別に僕はパトラ女王は嫌いじゃない、僕と年齢が近いし彼女の負担がどれぐらい凄いのか想像もつかない。
軽くしてあげれる事があるなら軽くしてあげたいけど。
僕が結婚する事で軽くなるとは思えない。
「ちが……ん……ト……ゲ……姫……パパ……すき……」
たぶんパトラ姫は僕の事が好き。といっているに違いない。
「違うよナイ。好きになろうと努力してるだけで僕と結婚したら国が平和になる。そういう考えで言っただけだよ」
ナイは腕を組んで天井を見上げてしまった。僕もつられて天井を見るが特に何もない。
「………………ん」
「ああ、それよりもごめん。普段喋らないのに疲れたよね」
ナイは首を縦にふったあと横に振った。
「可愛いメイドさん達じゃねえかあ、ずいぶんと荒れてるな。絡み酒かい? 酒の一杯でもくれれば俺も話をきくぜ?」
突然に声をかけられて振り向くと、あきらかに酔っている男性が僕を見下ろしてくる。
「ええっとシラフですし、男です」
「おめえメイド服なんて着て………………変態じゃねえか……」
お酒は一滴も飲んでないよ。別に一滴ぐらいで酔わないと思うけど、僕がお酒飲み過ぎると記憶無くなるし。後、僕がメイド服なのは理由があって……。
「これは仕方がなく着ているのであって、元はリバーっていう子のメイド服なんだけど、あっリバーってのは僕に仕えてくれるメイドさんで――」
「やっぱり変態じゃねえか……自分のメイドの服を着て酒場に来てるんだろ……? まさかスカートの中も女性用か!? 酔いも覚めたわ……よ、寄るな」
中年の男性は僕らを置いて別のテーブルへ行ってしまった。
「行ってしまった……これには深い理由があるのに」
「…………ど……い」
「ありがと……」
ナイはどんまい。とサインを送ってくれた。
僕が変態ではなくて周りが変態なのだ。念のためと言う事でリバーが僕の変装をして。僕がリバーの変装をする。
で、リバーは現在ミリアさんとクアッツルを送りに辺境の森へといっているはずだ。
アルトさんがパトラ女王にラックは辺境へ逃げた。と報告してるに違いない。
多分バレるけど、それを伝えた所、お前が王になるよりはいい。と言われてしまった。
一人残ったザックさんはグィン達にお金を私にギルドに行った。それぞれバラバラで動いた結果、目立たない僕はこうして逃げれたのだ。
僕だってメイド服に青いカツラを着たくない。と抵抗したよ。でも、でも……わかりました。これ以上嫌がる理由は知っています! ラック様は下着も欲しいんですね♪ と、言われた時にはもう諦めて新品のメイド服を着たよ。
ちなみにメイド服はリバーのではなくてアルトさんが調達してきた新品だ。
そんなこんなで一番影の薄いナイとともに脱出できたというわけだ。
少なくともあと数日は僕はメイド服で過ごさないといけない。
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