104.5 (第三者視点・ユーリー)昼下がりの休日出勤、私の周りには問題児しかいない
第七部隊副隊長ユーリー。
それが私の名前だ、市民から憧れる王国騎士団の副長まで上り詰め、美人で頭もよく部下からも慕われているのに、女神様は私に意地悪をしているらしい。
彼氏がいないのだ。
「ゆーちゃん。難しい顔してつまんなーい」
どこぞの
その拍子に手に力がはいり大事な書類のサインがぐにゃっと曲がってしまった。
「セシリア隊長。公務中です」
「でもゆーちゃん、今周りに誰もいないし、仲間もいない時は素でいいって……」
いなければ態度を含めてサボっていい。とはならない。
そもそも、仲間や部下がいてもセシリアはセシリア節を辞めなく普段からこうでしょうに、それにだ……!
「そもそも、せっちゃんが仕事しないから休日の私が駆り出されているんですけどおおおおおおお!」
「うわ。怒った」
「怒りたくもなる、チョーっと強いからって隊長になって私は副隊長のまま。それなのにミリアが抜けてから私の仕事が増えるばかり、恋人もいないし休日は寝るだけの日々に嫌気がさして、今日は徹底的に買い物しようと――」
「え。せっちゃん恋人欲しいの!? あと、たいちょーゆずろうか? ミリア隊長も戻って来たし、もういらないや」
セシリア隊長。もとい仕事中を忘れたセシリアに思いっきり真面目に言われた。
「…………欲しいと言えばいらないかも」
隊長職というのは、そう簡単に上げたり貰ったりはもちろんできない。隊の中で推薦がありそれが認められればだ。
セシリアの時はミリア隊長の推薦もあったし、セシリアは知らないだろうけど私が会議にまででて決定の任を貰って授賞式まで手配した。
「いらないの! むじゅんしてない!?」
「それにミリアは戻ったっていっても第八部隊。隊は違うわよ」
私自身よくわからない。
別にセシリアじゃあるまいし女の子、いやコイツはミリアだけが好きなのか。ともかく同性が特別好き。というわけではない。
恋人が欲しいといっても、変な男は別に要らない。
可愛い男の子が欲しいと言えば欲しいけど、私の周りには変な兵士しかいない。
そもそも兵士になるような人間に可愛い男の子なんてこないのだ。
「えと、名前なんだっけ、アレ……ラッキーくん」
「ラックさんですね」
「そうそれそれ、あの子は!」
だから何だというのだコイツは。
「あの人は女難の相がでてますね」
「うらない?」
「いえ感です。どうでもいいから、せっちゃんも仕事して仕事。私一人じゃ終わんないんだけど。この報告書の期限はなんで5日も前なの」
私が逃げるセシリアを捕まえようとすると、部屋がノックされた。すぐに服装を正し、扉を開けた。
「おや。忙しかったかい?」
「っ!? スタン第二王子」
敬礼をすると、いつもの笑顔で手をふりだす。
「なに。所用でよっただけだ。そう堅くならないでくれ。宿舎にいったら兵舎に行った。と言われてね」
「はっ!」
「んっわかった!」
砕けすぎてるセシリアは後で説教するとして、何用だろうか。
相変わらず第二王子というのにフットワークが軽い人だ。軽すぎて陰口さえ叩かれているというのに。
「確か君たちはラック隊長と仲が良かった……はずだよね?」
「特によくはありませんが、面識はあります」
「えーゆーちゃん、こないだ一緒もごごごごごごごご!?」
急いでセシリアの口を押さえつける。
というか、そういう話は今しなくていい! って何百回注意すればいいのよ!
たとえ仲がよくても無難にこたえればいいのよ無難に。
「仲がいいようだね。それはよかった……済まないが任務というか彼が好きな物を調べて欲しいんだ。こんな話、第二王子の命令で公式で調べさせるわけにいかないだろ? 食べ物や趣味。その何だったら女性関係でもいい。軽いお願い事と思ってくれて欲しい」
これは驚いた。
スタン第二王子みずから隊長とはいえ兵士の好物を聞くだなんて不思議な話だ。
「何。彼とは仲良くしたいと思ってね」
「し、失礼しました」
顔に出ていたのか私は直ぐに謝罪をする。
「とにかく。彼はこの自分に、いや王国から出さない様に、彼は大事な人だからね。さて頼んだよ」
いうだけいうと扉が閉まった。
私とセシリアは顔を見合わせる。
「ねぇねぇねぇねぇ」
「…………黙って」
「スタン第二王子ってラック君の事がすきなのかな? え、でも男同士だよね? こどもできるの?」
「だから、言わないの!」
あんただって、ミリアとの子供出来ないでしょう! と突っ込みたいけど、その突っ込みよりも邪念を想像してしまう。
あそこまで熱心に頼むって、本当にスタン第二王子はラック君の事がすきなのだろうか。
この場合はやっぱりスタン第二王子が攻めで……。
男同士の禁断の愛。
兵士の中ではよくある話で特に第一部隊などは私が知っている噂話が何個もある。
思わず唾を飲み込むと扉が再び開いた。
スタン第二王子の息が切れて、走って来たのか考えられる。
「ハァハァハァ……」
「うわ。本気だ……」
スタン第二王子は私達をみると静かに深呼吸をしだす。
セシリアの言う通り本気なのだろう、他言無用の念押しに来たに違いない。
「絶対に他言はしません」
「ミリア隊長にはしゃべってもいいよね? ね?」
「…………やっぱり二人とも勘違いしてるか。走ってきてよかった……彼の補助魔法。あれを世界平和のために有効活用したい、そのために彼にはこの王国から出たくない様にしたいんだ。と、説明しそびれた」
私とセシリアはもう一度顔を見合わせた。
セシリアがどういう事? と変顔をしているが、私は納得がついた。王国の密書を読んだ事がある。
その中には過去に死なない兵士のつくり方や、肉体強化の魔法などの構想がねられていた。それが実用されれば王国は世界をも征服するだろう。
その中に名前が上がった二人の大魔法使い。
現在では1人は友好な関係でもう一人は表向きは逃亡者である。
まったくこれだから野心家の第二王子は怖い。
世界平和か……たしかに彼を引き留めれば王国の平和は保たれる可能性は出てくる。
「ユーリー副隊長。君は頭の回転が、他の隊長たちよりも速くて助かるよ」
「早すぎて困っています」
「力は武だけではないからね。では頼んだよ……ああ。わかっていると思うが彼には変な事は言わない様に」
扉がしまると、セシリアは。なになにどういうこと? と聞いてくるが、意味が解らないなら説明しないほうがいいだろう。
「ねぇねぇ。スタン第二おうじが受けなのかな!?」
「あのねぇ……話聞いてた!?」
やっぱり女神様は私に嫉妬してるのだ。
私の周りには問題児しかいない。
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