103 家族の裸はそんなに興奮しない
目がさめると天井が見えた。
そりゃそうだよね。
「ラック様おはようございます。いい天気ですね、今日はどのような事をしでかしますか♪ お顔が悪いようですね」
「…………おはようリバー。悪夢をみた……」
リバーがほむほむ。どんな悪夢でしょうか? と聞いてくるのでかいつまんで話す事にする。
「いやー僕の師匠がいるんだけど。なぜか全裸でむちゃくちゃな事を言ってきて、なんで全裸だったんだろう」
「それはとても面白い夢ですね。リバー知ってます。それは欲求不満ですよ♪」
突拍子もない下ネタを言ってくるリバーは今日も平常運転だ。
僕は苦笑しつつも今日の予定を確認する。ええっとパトラ様を牢から出すのにアルトさんにお願いして、ああそうだ報奨金もあるんだっけ。僕としては大金は望んでないけど、皆でわけないとなので、それをどうするか問題だ。
サーリアは『ラック、パトラ女王様とお知り合いなんでしょ? 沢山もらって』っていうし。
グィンは『足を引っ張った、俺達は辞退する。暫くはこの街にいるだろうな』と昨日別れた。僕としては補助魔法をかけたせいでグィン達の足を引っ張ったわけで平和的に等分にしたいし……。
もっと言えば片羽のツヴァイはコーネリート先生がいる巨大な船に行く事が決まっている。そのお見舞い金だって渡したい。
ミリアさんに相談した所、眉をひそめて何か、どこまでば……まで、呟いていたけど承諾してくれた。
たぶん、どこまで倍に増やせるか? と考えていたに違いない。さすがミリアさんだ、報酬を倍にして貰えば二等分出来る、問題はパトラ様がそれを許してくれるかどうか。
「――ま。ラック様♪」
「あっごめん。何の話をしていたっけ?」
「ラック様の師匠が裸な理由を知りたいとかなんとか♪」
ああ。そうだった。
「それは。君が暴力で脅すよりも、君の知り合いが困っているのを見逃せないからだよ。私は君が正式に私の願いを聞くまで裸なんだ。かわいそうだと思わないかい?」
「え?」
振り向くと腰に手をあてたサジュリ師匠が僕を見ては笑顔で喋っている。
健康的な肉体を自慢気に見せていて僕は慌ててリバーの方へ向き直る。
「サ…………ええっと師匠! な、なんでいるの!? いや、は、裸!?」
「君はバカか? 理由を知りたいと言っていたから答えただけで、君は直ぐに逃げるから。いや……逃げるのはいい。私も君には金を溜めたら遠くで余生を過ごした方がいいだろうね。と助言した事もある。
ああ、その話ではなかったね、さらに言うと君は口約束よりも書面に残さないとやる気を出さないからね。君が書類に名前を書かない限り私は常に裸。かわいそうだと思わないかい?」
サジュリ師匠が話終わると、僕がいる部屋の扉が乱暴に開け放たれた。
全員がその方向をみるとパトラ様の親衛隊長であるアルトさんが部屋の中を見ては僕の方に向いて睨んでくる。
「おい! 貴様!! 何をしているんだ何を! こいつを外に出すな。兵士の間で痴女が現れたって」
「僕に言われても……」
「ちっ! お前のせ、い、だ! とにかく服を着させろ、わかったな!」
アルトさんは僕に怒鳴りつけて部屋を出ていった。
僕はサジュリ師匠のほうを向いて裸なのを忘れていたのですぐにリバーに向き直る。
「そもそも何で牢に……」
素朴な疑問を口にすると、サジュリ師匠が背後から答えてくれる。
「いやね。ここの女王は亜人だろ? 亜人と言うのは面白い体質が多くてね、夜に女王の部屋いって、寝ている女王を叩き起こし土下座してウロコを採取していたら、あの男に捕まってね。あんな牢なんて出ようと思えば簡単にでれるんだけど、君がこの国に来た。ってのを知って。君を身元引受人にしたんだ。
君も私に散々言っていただろ? 騒ぎは起さない方がいい。と。女王にはまだ発見されてない竜道を教えて取引は成立していたはずなんだけどねぇ」
「そうなんだ…………」
って事は。
もしかしてサジュリ師匠が迷惑をかければかけるほど僕の責任って事になるのだろうか。
扉が今度は静かに開けられた、入って来たのは高身長で銀髪で――。
「ラック入るぞ、さきほどアルトが怒って歩い……サジュリ様。衣服を着てください」
すぐにサジュリ師匠をみつけたのだろう、僕よりも先にサジュリ師匠に話かけた。
僕としては怒ってるわけじゃなく当然だし、逆に僕が怒られなくてよかった。
「これは第八騎士団副長のミリア様。私も着たいのだけどねぇ。この補助魔法士ラックが着るのを許してくれないだ」
「…………サジュリ様は私よりも上級特権があります、私のような者に敬称はいりません。それよりもラックっ」
怒られた。
酷い話だよね。
「な、何かな。その――」
「はぁ…………ラックはそういう趣味でもあるのか? いくら師匠に甘えたいからといって自分の師匠だろ? ラックのママじゃないんだ。いくら変態だからって服を着させてやるのが普通だろ。リバーだっているんだ」
「いやいやいやまってまってっ! 僕だって――」
僕だってそんな趣味はない。と全力で否定する前にリバーが入ってくる。
「リバーは別に大丈夫ですよ? むしろラック様は女には興味ないかと心配していましたが、考えてもみてくださいミリア様。
ラック様は口を開けばグィン様。ザック様と……こんなにも周りに美人が沢山いるのに男の名前ばっかりです♪」
「………………たしかに。じゃぁラックの気が済んだら話がある。応接室にいるから後できてくれ」
ミリアさんはそういうと部屋から出ていった。いやいやいや。
「まって! たしかにじゃ――」
「ではリバーも邪魔したら悪いので失礼します♪」
部屋の中が僕とサジュリ師匠だけになる。
え?
全裸の師匠だよ?
「ふむ。古文書によると遥か昔には性行為しないと出れない部屋があった。という話があって、限定的な呪いの一つと思うんだ。君はどうおもう?」
「サジュリ師匠、それ今言う事ではないですよね? 後書類下さい……書けばいいんですよね……」
「私としては全裸でも全然かまわないよ。ことある事に君が服を着るのを禁止していると説明するだけだし」
やめて。
本当にやめて。
僕が変態と思われるから、僕は変態じゃないし全裸よりは少し服を着てる方が、タイツだけとか興奮……じゃなかった。そもそも昔のサジュリ師匠ならともかく今のサジュリ師匠には興奮はしない。
師匠は師匠だし家族のようなものだし。
今の僕がミリアさんの裸やリバーの裸を見ても興奮しないのと同じで……だからといって一緒にお風呂は――。
「おーい……話聞いてるのかなー?」
「え? あれ? 何の話してましたっけ?」
「昔から君は考え込む癖は治ってないようだね、もっと自由に過ごした方が人生は楽しいよ?」
全裸のサジュリ師匠には言われたくはない。サジュリ師匠に拾われて僕が何度もあちこちに頭を下げにいったか。
「自由すぎるよ」
「君の方が自由そうで羨ましいよ」
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