102 補助魔法師サジュリはラックと再会する
色々と疲れた。
というのも、サンドワーム退治は解決した。離れた場所にある巣にいって、サーリアとパトラ様を守るために穴掘って、僕が補助魔法をかけて突っ込んで、とにかく魔剣の短剣で斬って斬って……かなり倒した所で第一目的は終わった。
後は地上に出れないので、パトラ様だけが知っている道を使ってサーキュアーの国に戻り、親衛隊長のアルトさんに見つかって物凄く怒られて……もう一つの目的である取り残されたパーティーの救出するためにまたダンジョンへ戻った。
でそこから、ミリアさん達と一緒に迎えにいって無事に再会して馬車で戻って今は王宮の牢屋にいる。
「いやなんで!?」
なんで牢屋!? 罪人扱いって酷くない!?
あと突っ込みが遅い。というのはこの際考えないでいこう。
アルトさんにお前に会って欲しい人がいる。と、言われて。牢の前についたら押し込められたのだ。
僕は一度だって牢に入れられるような事はしてないよ!? 思わず鉄格子を握ると薄暗い近くの牢から呻き声や叫び声などが聞こえてくる。
恐ろしさのあまり後ろに下がると後頭部に何かか当たる。柔らかい。思わず振り向き手をつくと壁のようだ。
「おやおやおやおや。まさか君もここに入るとは……」
懐かしい声に顔をあげると、僕と同じ黒色の髪。違うのはその長さ。
髪は女性らしいのに女性らしさが少し足りない胸。
薄汚れた白衣にもっとも会いたくないけど会いたかった人。僕の師匠で……名前は。
「今はサジュリと呼んでくれたまえ」
「…………師匠それって本名ですよね? あと僕は何も言ってませんけど」
サジュリと言うのは僕が知っている名前。ことある事に適当な偽名を使っていた師匠であるけど珍しく本名だ。
「おやそうかい? 君。一度もサジュリが本名と言った覚えはないよ」
「え!?」
「それはそうと、初めましてラック君。狭い部屋であるがお茶でも。おやお茶の葉が切れていたね、君。茶を貰って来てくれた前」
ああ。やっぱり師匠だ。
師匠は自身が決めた事は絶対。という行動があるんだ。ある意味常識が通用しない。
「ええっと師匠、ここは牢の中です」
「サジュリと呼んでくれたまえよ? 君のような弟子はもった記憶がない。とはいえだ、師匠と呼ばれるものやぶさかではない。特別に許そう」
「師匠。ここは牢の中です」
「だから? 私は君をもてなすために、お茶の葉を持ってこい。と言ったのだよ?」
一切反論を許さない空気。
僕をもてなすのに僕が動かなければならないとか僕はもう言葉が出ない。
「で、ですよね」
くるっと反転して鉄格子を握る。完全に鍵がかかっていて僕の力では開かない。
むしろ開いていたら牢の意味もないだろう。
くるっと後ろを振り返ると、師匠……サジュリさんが瞬き一つせずに見ているので怖い、動かない人形の用だ。
「師匠! 牢は開きません!」
「君は馬鹿か? いや馬鹿だったねぇ……かわいそうに。君の魔法はなんだい?」
「ほ、補助魔法です……! わかりました! アームマナアップ!」
僕はサジュリ師匠にアームマナアップをかけ……避けられた。必死の形相で僕を睨んでくる。
「何をするんだい?」
「え。サジュリ師匠にアームマナアップをかけて牢を破ってもらおうかと……」
「自分でかけたまえ……聞いているよコーネリートから。中々凄いみたいだねぇ。あれほど目立つな。と言っているのに馬鹿な君だねぇ。アホ。馬鹿。いやもう君死んだほうがいいかもしれないね」
ひどすぎる。
でもこの毒舌が懐かしくつい笑ってしまう。
「でも聞いてください師匠!」
「聞く必要はないね。この私がどれだけ苦労して君の書類を不正して自由にしたと思っているのが172万文字にして百日間かせるしかないね」
あ、やばいこれは説教モードになる。
「ええと親衛隊長のアルトさんが会ってほしいって僕に用事あったんですよね!?」
「ふむ君も中々結論が早い。どこぞの王がもう死んだらしくてね。いや死ぬのかな? でどこぞの馬鹿王子が世界征服を狙っているらしく、そこの王子から兄弟強化を頼まれてね。どうもその弟が歯向かう奴を全員処刑するつもりなんだ死んだ方がいいと思わないかい?」
「うーん」
酷い話だ。
ミリアさんがいつも上に立つ者は守るべき者の事を考えているべきだ。とよく言う。
「そうおもわないかい? いや流石に私も殺した方がいい。は私も言い過ぎた。いっその事去勢した方がいいと思うんだ私は。殺しよりはいいだろ? なぁ愛弟子のラック君」
「えっはい!?」
突然愛弟子呼ばわりして思わず返事をしてしまった。
今まで過去の一度も愛弟子扱いなんてされた事はない。そりゃ一応は弟子と名乗っても怒られた事なかったけど、せいぜい召使い程度の扱いと思っていただけに驚きだ。
「さすがは愛弟子だ。これを王子の股間に塗りたまえ」
僕に白いクリームの入った小瓶をくれた。
いやいやいやいや。
塗らないし、そもそもどこの王子かもわからないのに塗れるわけないし、ぬるっても僕が男性のズボンをペロンと下ろして塗るのはもっと嫌だ。
「あの。僕が塗るよりサジュリ師匠が塗れば……」
「マナオールブースト」
サジュリ師匠が小さく魔法をとなえると師匠の体が光った気がした。サジュリ師匠は突然全裸になると僕に土下座する。
「え! ええ!?? えええ!! ふ、服を。いやまって顔を上げないで師匠見える! 見えるから!」
サジュリ師匠が僕に向けて土下座したままお尻をふりふりする。どどどどうしよう。
サジュリ師匠の年齢は不明だ。不明なんだけど20代後半から30代に見えて何時までも姿は変わらない。
てっきり僕に暴力で訴えてくるかと思ったらまさかの土下座だ。
牢の外からコツンコツンと音がする。
これは駄目だ。
はたから見たら僕が全裸の女性を牢に閉じ込めて土下座させているのと同じだ。僕はそんな変態じゃない!!
「ラック。迎えにき――」
「ラック様そんな牢などリバーに――」
ほら……こうなる。
ミリアさんとリバーが牢まで来ては僕達を見て言葉を止める。
「リバー帰るぞ。ラックは変態らしい」
「ラック様、大人になるんですね。絵日記にするので後で詳細をお願いします」
「まったまったまったまった! ミリアさん待ってこれには深い事情が!」
僕が慌てて叫ぶと、ミリアさんが立ち止まる。
「何だ? 変態のラック」
「ラック様。男は変態ですし気にしない方がいいですよ?」
「変態じゃないから!」
「「………………」」
あれ?
ミリアさんもリバーもなぜか無言だ。
いや、本当に変態じゃないし。
「サジュリ師匠も何かいってく――――ぼっ」
お腹に痛みが走った。
下を見ると拳で殴られており、拳の先はサジュリ師匠で……なん……で……。
「君は本当にバカだろ。初対面の人間に私の名前を伝える馬鹿がどこにいるんだ。そういう約束だろ?」
いやだって……本人が目の前にいるんだし……そりゃいうし……ああ、もうだめだ意識がなくなる。
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