101.5 (第三者視点)残されたメイドは働きまくります

 はい、リバーです。

 何て便利な言葉なんでしょうか、


 まぁ、リバーも何の事なのかさっぱりわかりませんけど。


 ラック様がサーリア様のを追いかけて五日ほどたちます。

 もしかしたら死んでしまったのかもしれません。そうするとリバーは将来の安定を取るために新しい就職先を見つけないといけなく大変困っています。


 お姉ちゃんのようにザック様に仕えてもいいんですけど、自由がなさそうですし、その点ラック様でしたら、寝込みをおそわない限り本気で怒る事はないですからね。

 あの時は本気で怒って……いえ、慌てていたようですし。



「おい。メイド!」



 おやおや、ラック様の強化魔法の効果が解けて今朝からやっと体が動くようになったザック様がリバーに用があるそうです。なんでしょう?  快感に変わったのでしたらしかたがありません。



「はい、持って来ました」

「……なんだこれは?」

「見た通りシビンです。どうぞいつものようにザック様はこれにシーシーしてください」

「違う! ラックはまだ戻ってこないのか! 体が動かない時に起きた地震も気になる……まさか生き埋めに……」



 リバーはぐるっと休憩所を見回します。

 リバー達以外には片羽で役に立ちそうにないツヴァイ様と、やはり今日からやっと体が動くようになり、現在は簡易式椅子に座って暗い顔のグィン様しか見当たりません。



「あの。メイドのリバーにそういわれましても」

「ちっ……それはそうだが……お前達姉妹にはその……不思議な……」

「なんでしょう?」



 ザック様が押し黙りました。

 話は最後まで言うべきですね。やはり仕えるならラック様が一番面白いです。

 リバーの感ですが死んではいないと思いますし、最悪頭でも見つかればお姉ちゃんと協力して……。



「おい。メイド!」



 おや、グィン様もリバーを呼んでます。二人が共同で使ったシビンを手に取りグィン様の所へ向かいます。



「どうぞ、この中にしてください♪ あっ別の物でしたら手伝いましょうか? こう見えてリバー、お姉ちゃんから教わってますので♪」

「……断る。それよりもラックだ。体が動くようになったら探しに行く、メイドはツヴァイと地上に戻り応援を呼べ、このさいクエストの失敗は認めよう。名誉よりも友の安全だ」

「おやおや、そこはサーリア様ではないのでしょうか?」



 これは意外です。

 グィン様の恋人であるサーリア様よりもラック様を優先するとは、これが記憶が戻る前には悪行を繰り返したグィン様なのでしょうか。


 夢でも見てるみたいです、少しつねってみましょう。



「なぜ、俺の腕をつねる」

「夢かと思いまして」



 グィン様は私の手をほどきました。しょぼーん。



「サーリアも俺も冒険者だ。最悪の場合ぐらいは常に意識している。でも、ラックは運よくA級とされているが、何かあっては寝ざめが悪い。…………だからなぜ俺の腕をつねる」

「ですから夢かと思いまして……」



 どうやら魔物の擬態、とかではなさそうです。正真正銘にラック様を心配しているのでしょう。これは困りましたねぇ。

 ラック様は走りだす前にいいました。二人を頼んだよ。と。



 あれ? 本当にいいましたっけ?

 言ってなかったような気もしますが、今回は言った事にしておきましょう。


 頼まれたリバーはお二人を無事に生かす事が仕事になります。



「俺の体が本調子に戻ったらすぐに地下へと降りる」

「なるほど。ではゆびきりしましょう。無理はしないと」



 グィン様がリバーを見てほほ笑みました。

 リバーには効きませんが、これがイケメンの笑顔。というやつでしょう。

 ラック様にもこれぐらいさわやかで力強い笑顔があれば少しはもてるでしょうに。


 リバーとしては、ラック様の子供の育成を早くしたいですねぇ……早く誰かを孕ませればいいでしょうに、別にリバーが作ってもいいのですけど、なかなか許可が得られないので残念です。


 リバーはグィン様の小指をにぎります。

 中々に太い指ですね。



「えい!」

「なっ! いいいいいっっ!!」



 完璧に折れた小指を握りしめてグィン様が吠え始めました。泣かないのはエライです。



「どうした愚弟」

「俺を毎回毎回愚弟と……いや、今は……な、何をするメイド!」

「いえ。リバーはラック様からここにいる3人が勝手に動かない様に見張ってますので、勝手に動きそうなグィン様の小指をおりまして動けない様に。と思いまして」

「思いましてじゃなく、ちっポーションはっ」



 グィン様は自分の荷物を探し始めました。

 ないないないない。と慌てています。

 はい、リバーがあらかじめ中身を飲んでおきました。お腹たぷたぶです。



「ザック様もラック様を探しに行くのでしょうか?」



 ザック様はリバーを見た後に首を横に振りました。残るは鳥頭、もといツヴァイ様です。



「ツヴァイ様は無茶をいいませんよね? あっ手巻きになりますが煙草あるんです。どうぞ」

「…………なるようになるでござる。かたじけないでござるよ」



 リバーが夜なべして作った煙草を美味しそうに吸うツヴァイ様は鳥の亜人ですけど、賢いようです。


 これでさえしていなければ花丸なんですけど、いいかげんにどこぞの第二王子様に密告するのは勘弁してほしいですね、まったく。

 ですが、今の所ラック様にも害は及んでないので大丈夫でしょう、当面は動かなくて済みそうです。


 食事に関しては適当に煮込めば何でも食べれるでしょうし問題はしてませんが、後2日もあれば、何とかなると思うんですよね。



 感ですけど。



 小指が折れたグィン様が突然顔をあげました。ザック様も何事かと休憩所の出入り口をみます。



「4人とも……おまたせ…………」



 疲労感が凄いラック様が顔をひょっこり入れてきました。



「お疲れ様ですラック様♪ ずいぶんと疲れたお顔をしてますね。リバーお手製の石の様に堅いパンをどうぞ」

「……ありがとう。色も石っぽいけど本当にパン?」

「石と思えば石ですが、パンといえばパンです♪」



 ラック様は黙ってパンを見つめた後に口にいれました。中々勇気がありますね。


 石じゃないんですよ? 石にそっくりなパンなだけですし。


 所でサーリア様がみえませんが、とうとうダンジョンの地下に置いて来たのでしょうか? あれだけイジメられていたらそりゃラック様も起ったのですかね。それとも口封じに置いて来たのでしょうか。

 嫌がるサーリア様を襲ったラック様はバレない様に、中々に勇気ある行動です。拍手したいです。



「サーリアはどうした? あとメイドなぜ拍手している……」

「グィン? あれ……その手は。えっとマナアームアップっと、これで少しは良くなるとおもうんだけど。ポーションは!? えっないの? ああ、うん。ええっとサーリアならパトラ様と一緒に宮殿にいるよ」



 おやおやおや。

 このラック様の発言にはザック様の顔色が変わりました。



「ラック。俺はお前の事を信用しているが、まさか俺達を置いて帰ったのか?」

「えっ!? ああああああっ違う。違うからええっと、何から説明すればいいんだろう。とにかく二人に怪我がないように、僕は全力を尽くして、なのに二人は喧嘩しながら先に進むし……途中で落とし穴に落ちた僕達はミミズが体中にまとわりついて、とてもえっちできもちわる――」

「私が説明しよう」



 男っぽい喋り方のハスキーボイス。この声はミリア様です。

 ラック様の後ろから休憩所に入ってきました。説明が好きな人で説明しているときはかがやいています。たぶん。



「納得のいく説明なんだろうな」

「サーキュアーの秘宝にかかわるので私も詳しくはしらないのは勘弁してほしい。とにかく二人は無事で王宮の牢屋だ」

「なっ!? 処刑か!」



 グィンさんが驚いています。



「違う、アルト親衛隊長が激怒してな……勝手にいなくなるパトラ様を数日間完全に護衛する。という名目だ」

「そうそれ――――」

「それで上に馬車を用意してある、サンドワーム退治はもう終わり。と言う事だけは確かだ」


 ラック様が続きを喋ろうとしてミリア様に取られました。情けないですラック様。

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