100 幼馴染とダンジョン探索
マナオールアップ!
マナナールアップ!!
「マナオオオオオオーー!! ップ!」
何度も補助魔法を唱えると落ちるスピードがゆっくりになった。
ゆっくりに見えるだけで落ちている事には変わりはないし、自分の体感がそうみえるだけなのは承知の上だ。
何かに捕まらないとともって必死にロープを掴む。
ぬるりん。
「え!?」
落ちる時に触っていたらしいサンドワームの体液。その体液がヌルヌルしていてロープは凄い滑って掴むだけで手から抜けていく。
終わった。
底が見えないほど長い穴。
僕はもう手の打ちようがない。
諦めるのが早いだろ、とミリアさんがいたら突っ込まれるかもしれないけど、どうしようもないのだ。
もうゆっくりと落ちる僕に出来る事はない。
幸運なのは身体強化をかけた補助魔法のおかけで落ちても骨折はたぶんしないだろうな。という所。
これも本当に骨折しないかは保証はないけど。
だって、高い所から落ちたら骨折するかもしれないけど、僕が補助魔法の精度を確かめるために落ちましょう! って本当に骨折したら大変だよ。
僕の周りにはサーリアみたいに回復魔法使える人間なんていないんだしさ。
そういえば僕の魔法もある意味回復魔法に近いのかもしれない。
僕や相手の魔力を上げまくって身体強化、その中には痛みを和らげる効果も――――。
僕の足が地面につくとそのまま転がる、衝撃と痛みはあるけ我慢できる痛みだ。
そのゴロゴロ転がる僕の体が何かに止め垂れた。
細い足が見えて足の先を見ると、とても嫌そうな顔のサーリアと目があった。
「よかった無事……だ…………」
「この状況で良く言えるわね……突然転がってくる物体がくるから足で止めたけど……まさかラックとはね」
パンパンと体の土をほろって立ち上がる、サーリアの横に光球がありダンジョンの中が照らされて楽だ。
「いやぁ、1人で危ないと思って急いで来たんだけど……」
「っ! ほ、本当? ラックの癖に……いいえ。言い方がわるかった、ありがとうラック。普段頼りなく足引っ張っていたのに、そういう変な所は勇気あるわよね」
珍しくサーリアが褒めてくれた。
本当に珍しく僕としても嬉しい、久々に村に戻った気分。あの頃はよく褒めてくれたっけ……。
「もう少し先を確認するわ。ラックの言う通り大きなサンドワームはまだ見当たらないけど小さいのがいるわね、危なくなったらロープを伝ってすぐに逃げるわよ、せいぜい私が逃げる間に守ってよね」
「えっ!」
思わず声をあげると笑顔のサーリアが僕を見る。
見てくれるのは嬉しいしいいんだけど、困った。
ロープ……ロープだよね? 僕がつかんだせいでサンドワームの体液が付いてぬるぬるになったロープ。
絶対に登れないはずだ。
どうしよう。
言うべきか……いや、怒るよねきっと。
「ラック?」
「え?」
「え。じゃないわよ。顔色が悪そうだけどそこまでして私の事心配だったの?」
「僕が守るから!!」
サーリアが立ち止まり、口を開けた後に顔をそむけた。
「行くわよ!」
僕を置いて先に進みだす。
良かった何とか誤魔化した、言えないよ。
帰り道がない。だなんて……他の道を探すしかない、もしくはリバーだ。リバーだったら何とかしてくれる……と、思いたい。
サーリアを先頭に洞窟内を進む、途中なんどもサーリアが帰るわよ。と、いうのでもう少し、もう少し。と引き延ばす。
そのサーリアが振り返った。
最初の笑顔ではなく不機嫌な顔だ。
「い、い、か、げ、ん。帰るわよ。奥まで進みすぎたし、私とラックでは危険」
「いや、まだ奥にボスがいるかもしれないし」
「いたらいたで困るんですけど! あっでもラックがいるか……」
「そう、僕がいるし。もしかしたらサーリアが好きなお宝があるかもしれないし」
サーリアの表情が消えた。
あれ? お宝と聞けばサーリアは何時も嬉しそうな顔していたのに。
腕を組んでは僕を黙って見つめてくる。
「ラック。何か隠してない?」
「えっ!? な、なにも!」
「ラック。何か隠してない?」
同じ問いかけを即答された。
「な、なに――」
「ラック。何か――」
「ごめん! 本当にごめん!」
もう駄目だ。
僕は帰り道のロープがもう使えない事を白状した。全部聞いたサーリアは僕を見ては、笑っている。
「ふふ……あははは、本当おっかしぃ」
てっきり怒鳴られるか蹴られるかと思ったけどどれも違っていた。
「サ、サーリア!? ご、ごめん。恐怖のあまり笑う事しか、どうしようグィンに何て説明すれば……」
「違うわよ。ラックはラックだったって事ね。これでも私もB級の冒険者よ。不測の事が起こったからって慌ててもしょうがないし、別の出口を探しましょうって事」
頼りにしてるからね。と言うと鼻歌交じりにサーリアは歩き出す。
よくわからないけど、怒られなくてよかった。
「僕が、まままっ前に行くよ」
「…………じゃぁお願い」
「え! いいの!?」
いつもなら僕が前に出るというと全滅するからやめろ。と全員から注意されたものだ。
特にサーリアは、ラックは危険な事しなくて大丈夫。と毎回心配してくれてたのが懐かしい。自分で提案したけどあっさり許可が下りたので驚いてしまったのだ。
「いいもなにも。今のラックは前衛よね」
「……後衛だよ」
「はいはい、さっさと補助魔法をかけなおして前歩いてね。私を守ってくれるんでしょ? 魔力は切れてない?」
綺麗に流された。
魔力切れのような疲れは相変わらずない、というか僕は今まで動けなくなるほどまで魔力が切れたことはない。
逆に体力が無くて動けなくなることはあるけど。サーリアとは全く逆だ。
僕が前になりすすむとペッタンペッタンと何かを叩く音が聞こえ始めた。思わずサーリアと顔を見合わせる。
光球の映す先は角になっていて先が見えない、その先から音がきこえてきた。
小さく頷くとサーリアは背中から杖を出して魔法を唱え始めた、光球の大きさが上がりより強く光り輝く。
いざとなればぶつける事の出来る魔法だ。
僕の方も念入りにマナオールアップを唱える、先ほどまで落ちていた魔力が活性化されてすぐに見えている世界が変わっていく。
作ってもらった魔剣の短剣を逆手にもって僕は一気に走った。
人間サイズの何かを押し倒して僕はその首を狙う。何かで腕を弾かれて魔剣が飛んでいく。金色の瞳が僕を見ていて、思わずその手が止まった。
「パトぶばっ!」
補助魔法で肉体強化されているにもかかわらず僕の体が何かに吹き飛ばされた。
パトラ女王の尻尾がペタンペタンと地面を叩いてるのを見て僕の意識は真っ暗になった。
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