99 一般的常識で覗くのはアウトです
もういやだあああああああああああああ!
僕は心の底から叫びたい。
叫ばないのは叫ぶと口の中にサンドワームの体液が入るから。
どうして入るか、そして僕が叫びたい理由は……説明する前に上から大きい口を開けたサンドワームが襲ってくる。
その首? を狙って魔剣のナイフを走らせた。斬った部分は落ちるんだけどその体液が僕の頭の上からビシャー! と振って来た。
頭を振りまくって紫や茶色の体液を飛ばす。酸でもあるのかベトベトというか、入った事はないけどスライム風呂。というのがあって、それを想像させる嫌な感じ。
それが口から入るんだよ!? 叫びたくもなる。
「ぺっ。ぺっぺっぺ!」
甘かったりしょっぱかったりする。
穴から出てくるサンドワームがいなくなった。
これで終わり? でいいのかな。
巨大な横穴や地下の穴があるので、手前の一つを覗いてみた。
そこは暗く穴全体がぬめぬめしてる。
絶対に入りたくない。
サーリアはまだまだいるでしょ! って怒っていたけど、どうしてわかるんだろう。もしかしたら今僕が倒した個体が全部かもしれない。
いや。きっとそうだ! ………………絶対にこの地下に確認したくないからとかじゃない!
◇◇◇
「で。戻ってきたわけ?」
「…………駄目だったかな?」
怒っているのはサーリアで、僕なりの説明をして今は休憩所まで戻って来た。
ザックさんとグィンは相変わらず治っていなく、床に布を置いて寝かされている。目にはタオルを乗せてあり表情はみえないけど、半開きの口からは呻き声だけが聞こえてくる。おでこに冷たいタオルを置いてありリバーが懸命に取り換えていた。
うん。本当にごめんなさい。
心の中で謝罪してサーリアに向き直る。
そのサーリアは僕を見てはため息をだしてきた。これでも昔は「ラックよくやったわね。私も嬉しいわ」とか褒めてくれた事もあるのに、今は遠い昔のようにも思える。
まだ1年もたってないのに。
「サーリア殿それぐらいで」
翼が1個しかないツヴァイが何時ものように単調に話す。
「そうね……まぁいいわ。ラックよくやってくれたわ」
「本当!? 久々に褒められたきがするよ」
「っ別にほめっ……まぁいいわ……もう帰ってもいいわよ。後は私一人でもできるし」
酷くがっがりしてるように見えるのは気のせいなのかな?
帰っていい。といわれても……ザックさんを置いて帰るわけにはいかないし。
「連れの事? 簡易的であるけどこの場所に結界を張ってあるから、心配だったらここにいなさい」
「うん」
僕が返事をするとサーリアは休憩所からでて消えていく。
トイレかな? サーリアが戻って来たら帰る準備だけしておこう。
………………。
…………………………。
戻ってこない。
別にサーリアのトイレの時間を毎回計っていたわけじゃないけど、こういう時の時間はだいたい決まっている。
「遅いかもしれない、もしかして魔物がまだいたのかな」
「ラック様どうなされました?」
「リバーえっといや、僕が言ったら変態扱いされるかもしれない……」
「ご安心ください、ラック様は変態です♪」
「そうなの!」
リバーに変態と言われて思わず反論したけど、リバーは別に間違えてませんよ? と言うような顔だ。
助け舟のツヴァイをみるも、突然刀といわれる剣を持ち始めたのが見えた。
「え!? どこかいくの?」
「サーリア殿が遅いでござるので様子見に」
「いや、それはまずいよ。女性のその……なんていうか覗くのは」
僕がツヴァイのために必死に考えて説得するとツヴァイも不思議そうな顔をする。
「考え直して欲しい、ええっとほらリバーの手前そんな話はしたくないけど。いくら興奮するからといってその……昔はほらグィンがサーリアの後について行こうとしたのを良く止めたはツヴァイなら知っているよね」
「何の話でござるか?」
「ラック様?」
リバーに向き直る、目があったリバーが喋りだす。
「リバーは一般的などこにでもいる普通のメイドなのでよくわかりませんが、サーリア様はトイレではなく本当に殲滅されたのか地下にいくんじゃないんでしょうか?」
「はい?」
「帰ってこないでござるから、見にいく所でござる、用がないなら某は先に――」
「ラック様が全部倒したといいましたので、すごぶる安全です♪」
待って。
いや本当に!
気づけば走っていた、背後でツヴァイが何かを言っていた気がするけど聞く前に走っていた。
思ったよりもサーリアは早く、追い付くのに時間がかかる。
「ああっもおおおおううう! マナレギンスアップ!」
部分的補助魔法、これで足が軽くなる。
角をまがり先ほど僕が戦っていた場所にいくとロープがあり、その先が穴へと続いているのが見えた。
僕はそのロープを掴むと穴のほうへ……あれ。僕の手が滑る。
先ほどの体液のせいでロープをつかみきれずに一気落ちていく、体全体が浮遊した感覚になり上を見上げても誰もいなく絶望だけが……。
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