97 久々の補助魔法の依頼で僕は頑張りました……

 サンドワーム退治。

 全部ザックさんに任せて終わった。僕は休憩場所で水を飲み一呼吸する。



「これで帰れますね、すぐにツヴァイの羽を治療しないと……」



 僕がそういうと全員の顔が僕を見てくる。

 いや、一人だけ下を向いているのはサーリアだ。そのサーリアが物凄いため息と思われる息を吐く。



「ラック、あなたねぇ……アレで終わりだったら私達はとっくに帰っているわよ! 馬鹿なんじゃないの!?」

「サーリア。ラックにあまり文句を言うのは良くないな。幼馴染なんだろ?」

「元です。グィン……約束したじゃない、責任はとるって」

「そうだな……記憶がなくなったとはいえサーリアはラックではなく俺の恋人だったのなら」

「なら! ではなく事実なの!」



 サーリアとグィンが喧嘩しそうなので僕は気配を消す。こういう時に前に出てもいい事はない。

 それよりも痛そうにしているツヴァイの横に移動して話しかけてみる。



「傷は……」

「痛いでござるよ。方羽が無いでござるし」



 そりゃそうか。

 止血はされているだろうけど、いくら回復魔法でも無いものは作れないか。せめて片方でもあればつけれたかもしれないけど。

 ちらっとグィン達をみるとまだ、あーじゃない。こーじゃない。と話し合っていた。



「あの二人疲れないのかな」

「今に始まった事ではないでござるし。グィンもサーリア殿もあれはあれで本気ではないでござるからな、まるで昔のラック殿とサーリア殿を見ている感じでござるな」

「そうなの!?」



 珍しく口数が多いツヴァイは小さく唸くずと煙草を口にくわえた。簡単な道具で火をつけると美味しそうに煙を吐き始める作業に入った。

 こうなるとツヴァイは僕やグィンが何かを話しかけても話を聞いていなく暫くは放置するしかない。



「ック。聞いているか?」

「ラック?」



 突然グィンとザックさんに話しかけられて前を見るといつの間にか喧嘩は終わっていたらしく、グィンが僕に何かを聞いている。

 リバーをみると小さい咳払いをして説明しましょう。と説明してくれる。

 


「ラック様は聞いていなかったようなので説明しますね。補助魔法、それをグィン様とザック様にかけて欲しい。との事です」

「えっいいの!?」



 僕が驚くにはいくつかの理由がある。

 グィンにいたっては、僕がパーティーに加入した時にかけていたけど、変な気分になるからもうかけるな。と、言われたからだ。

 こっそり小さくかけてはいたけど、それでも補助魔法を嫌っている。


 次にザックさんだ。

 ザックさんは片腕でありながらも僕が補助魔法を使ってやっと勝てた相手。

 さらに貴族だし僕みたいなが気軽に話しかけていい相手ではない。そんなザックさんが僕を頼ってくれる。嬉しいけど恥ずかしい気持ち少し出て来た。



「そこまで強くなる。というのならな」

「殺してやりたい愚弟ではあるが、負けるわけにはいかないんでな」



 うん。二人ともそっくりだ。

 僕は二人を前に立たせて心臓の部分に手を置く。この方法が一番イメージしやすいからだ。

 一応は遠距離でもかけれるけど、本当にかかっていたのか自分でも謎だ。

 だってその場合のイメージが僕の体内にある魔力を相手まで飛ばす。というイメージに切り替わるから。

 直接手をあてたほうが絶対言いに決まっている。ゆっくりと目を閉じた。



「眼を閉じるのか?」

「はい、その方がイメージしやすく効率がいいらしいので」



 ザックさんの疑問に答えると僕は補助魔法をかけていく「マナオールアップ」と、呟きながら。

 僕の中にある魔力をぐるっと一周させて二人に送り込む。



「おお……」

「これは……」

「「凄いな」」



 二人の声がはもって、聞いている僕も嬉しい。



「マナオールアップ……マナオールアップ!」

「あのラック様?」

「マナオールアップ。マナオールアップ!」



 僕の体内が熱くなってくる。

 ぐるっと燃えたような力があふれ出てそれを二人に押し込み続ける。



「ちょっとラック!?」

「マナーㇽアップ……マナオールアップ!」



 声しか聞こえてないけどリバーもサーリアも嬉しそうだ。



「マナオールアップ。最後におまけにマナオールアップ」



 体内の魔力を結構受け渡した気がする。

 軽く息を吐くと僕は二人から両手を離した。二人の嬉しそうな顔が見れるといいな。



「どうかな」



 目を開けて訪ねてみる。

 二人は黙って僕をみて……あれ? 見てない?



「カガ……」

「ギリ……」



 カガギリ? カマキリの一種だろうか? 周りを見渡すもそんな虫は見当たらない。



「女神の力よ、我が魔力に応え奇跡の力をおかし下さい。ハイレアヒール!!」



 え? ええ??

 サーリアが突然回復魔法を唱えた。

 地面に小さい魔法陣が現れると光り輝きその中心にいるサーリアが凄く綺麗に見えた。


 ハイレアヒールはザックさんとグィンを包み込むと光を終えて消えていく。



「ちっ! もう一声。ハイレアヒール!!」



 サーリアが同じ魔法を唱えると魔法陣が足元に現れて光る前に消えた。

 突然崩れ落ちるサーリアを近くにいたリバーが支えるのが見えた。



「かまわないでっ!」

「はぁでも、ふらふらですしサーリア様。魔力のほうが……」

「わかってるわよ。私の魔力が誰かさんより少ない事ぐらい!」



 そうなんだ。

 誰かさんって誰だろう、あっコーネリート先生の事か。



「どーするのよラック!」

「え? 何が……えっと何で怒ってるのかな」



 サーリアに突然怒られて僕はどうしたらいいのか、ザックさんとグィンを見ても壁を見たままで動かない。


 苦い煙草の煙が僕の顔にかかるとツヴァイのほうを見る。



「ラック殿が魔法をかけた後にそうなったでござるな」

「え?」



 慌ててサーリアを見ると凄い怒っている。

 目がつり上がってまるで。



「鬼のようですねラック様」

「……誰が鬼なのよ! どうするのよ。二人とも途中から動かなくなったわよ」

「あっ!」

「あ? 何があっなの!?」



 僕の補助魔法は、詳しい事は知らないけど自分の中にある魔力を他人に渡し、他人の魔力を活性化させて強引に強くするとかなんとか、たしかそんな魔法だ。

 で、その魔法にはかけすぎると副作用があるのを知って。


 元々師匠から1人の人間に対してあまりかけるなって言われていたし。


 多分二人とも今はそよ風が当たっても激痛が襲っているに違いない。



「ええっと」

「ラック様♪ 全部で14回です♪」



 何の数字かは聞いていないけどリバーが嬉しそうに教えてくれた。

 

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