96 君は金太郎あめを知っているか……

 グィン達と合流してしばしの休息となる。

 どうも先に入っていた冒険者はグィン達で天井の崩落と鳥型亜人であるツヴァイの大怪我。


 その怪我といえばツヴァイの片羽が無くなっている。煙草をふかしながら僕を見て片腕をあげて来た。



「久しぶりでござるな」

「久しぶりというか、その羽」

「食われたでござる」



 食われたって……僕はサーリアを見るとサーリアの顔がとても不機嫌だ。ツヴァイの事を聞いてみたい。



「またラックなわけ! どうしてついてくるのよ!! 強くなったんでしょ? いつもいつもいつもいつも! 後から来て嫌がらせ!? どうせラックがまた倒すんでしょ!!」

「サーリア! 言い過ぎだ」



 サーリアが文句を言うとグィンが間に入ってくれた。昔のグィンならこうするよね……。

 後、別について行っているわけじゃないし、たまたま倒せた事が多かっただけで毎回僕が倒せるとは思ってもいない。

 そもそもまだ敵をみてないし。

 後、ツヴァイの事を聞きたい。



「今回もそうだけど、別について言っているわけじゃ……それで

ツ――」

「助けられたのは嬉しいけど、ラックじゃない方が良かったわ……」

「サーリア」



 グィンがサーリアを注意すると、周りを見てくる。といってサーリアが休憩所から出ていく。

 いやだから、羽の事を……。



「グィン様。このツヴァイ様の羽はどうなされたのですか?」

「そこに気づくとはさすがにラックのメイドだな」

「いや、僕も聞こうと……」



 リバーまた何かやっちゃいましたかね。と小さく僕に舌を見せてくる姿は確信犯に違いない。



「俺達の任務はサンドワームを倒す事、現場で手に入れた貴重品などは自由に持って帰っていい。という特A冒険者の依頼だ」

「それは凄い」

「…………ラックよ。俺は冒険者になってまだB級であるが、敵の強さ、生存率などの他に何が違いがあるのか?」



 僕だって冒険者だ。依頼にランクが付いているのもわかる。でもザックさんはまだなり立てでよくわからないらしい。


 ザックさんに向き直って軽く説明する。

 例えば同じサンドワーム退治の依頼。

 これがA級とD級があったとすると、A級は現地で手に入れた宝石や謎のアイテム。その辺は自由に持ち帰れる。


 これがD級であれば制限がかかる場合があり。と、いっても殆どないけど……。

 仮に伝説級のアイテム。売ったら何千万もするようなアイテム。こういうアイテムが出たとしたら依頼主やギルドに返還義務があるのだ。


 同じ命、同じ条件で挑んでいるのにもかかわらず。されに報酬もDとAじゃ全然違う。

 この辺をザックさんとリバーに説明した。



「冒険者ってのは規則、規則でめんどうちいですね」

「まったくだな」

「リバーはともかくザックさんは慣れて貰わないと……」



 僕が説明し終わると、サーリアが走って戻って来た。

 なんだろう、僕とグィンを見て僕の手を引っ張った。



「えっ!?」



 もしかして僕とグィンを見比べて僕を頼るって事は、幼馴染として僕を頼ったって事なんだろうか。

 でも恋人はグィンだし、さすがにグィンに悪い。

 そりゃ冒険者ってのはその、恋人同士以外でもよく遊ぶ。と言う話はグィンから聞いた事あるけどさ。

 僕としては付き合うきもないのに――。



「ブツブツいってないでアレ何とかして!!!」

「え?」



 僕が引っ張られた先で前を見ると大きなツタみたいのがみえる。僕が抱きついてももっと大きい抱き枕よりも太い何かは、大きな口? をあけてよだれをだす。

 高さは僕よりも高く、僕の2倍ぐらい上の天井すれすれだ。



「サンドワームよ! ラック! 探していたんでしょ? 後は頼んだわよ!!」

「え!? ええっ!!」



 振り返ったらサーリアは既にいなくて、前を向くと巨大サンドワームが唾液をこぼしている。



「うああああああ。オールマナアップ! オールマナアップ! オールマナアップ!!!」



 オールマナアップの三かけ。

 コーネリート先生は僕の魔法の事を詳しく説明してくれた。

 専門家じゃないから、と前置きしてくれたけど僕の補助魔法は簡単な掛け算らしい。

 1を2にして。2を4にする。4は8にになっているんじゃないとかなんとか。

 僕の身体能力は今一般人よりも8倍以上強くなっている!



 はず。



 それを踏まえて、以前にミリアさんに5回ぐらい重ね掛けしたんですけど、と相談したら。

 あまりかけすぎると、常人なら死ぬわよ? 彼女以外なら死んでるわね。と笑顔で教えてくれた。


 この年齢で殺人犯にはなりたくない。

 冒険者なら殺人しても平気だろう。賊だってしてるんだ。というたまに街の人から話を聞くけど、別に出来るとするは違う。

 生きるために偶然にするのと、故意にするのではちがうし、むやみやたらにやったら捕まって殺されるからね?



「あのー考え事もいいですけど、ラック様もうそろそろ食べられそうですよ?」

「え?」



 リバーの声ではっとすると、僕の目の前にサンドワームの口があった。ねばついた液体が今にも顔にかかる。



「うああああああ!」



 魔剣である短剣を抜いてその頭へと斬りつける。

 短剣は何も手ごたえがなく頭を切り落とすと切った先がしゅわしゅわと再生して新しい顔がでる。



「まるで子供向けのアメのようだな。ラック下がれ!」

「は、はい!」



 ザックさんが僕の前にでて片腕で頭を切り落とす。



 子供向けのアメとは、細長い棒のアメで切っても切っても断面に同じ絵がでてくるお土産用のアメだ。


 短くなったサンドワームの体は洞窟の床へと消えていった。残ったのは冷たくなったサンドワームだったものだけ、悪臭をはなってシュワシュワ溶けていった。



「あ。おわった?」

「ラック……お前本当に強くなったのだな……」



 サーリアとグィンがそれぞれ僕への感想を言いながら休憩スペースから顔を出してきた。

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