88 ラックの隣は誰がねるのでしょうか
結局ミリアさんの家へと落ち着いた。
家といっても辺境にいる時に住んでいた小屋で宿主がいない間はクアッツルが管理していたとの事。
僕の家は? とクアッツルに聞いたら、僕がいなくなったので取り壊しましたわよ。と……。
少し悲しいが、僕がまたここに住むような事があれば手配してくれるというので、その時は頼むとしよう。
タオルで顔をふきながら室内を見渡す。
女性の部屋にしては殺風景で女性らしさのかけらもない部屋、僕は逆に落ち着く。
リバーとナイは既に台所へいって今日の晩御飯を作ってくれている所だ。
「我々はテーブルで待つとしよう、それにしてもクアッツル。管理を済まないな。またこの家を使うとは思っていなかった」
「いいのですわ。好きでやっているんですもの……いつでもお帰り下さい。で、足のほうは良くなってよかったですし、魔族の娘まで連れて里帰り。と言う事で結局なにがどうなったのですか?」
僕がクアッツルに説明して……いや。僕がミリアさんに説明してミリアさんがクアッツルに説明しなおす。
僕とクアッツルの距離は椅子二つ分なのになんて非効率なんだろう。
「なるほど、だいたい事情はわかりました。これだから人間は小面倒ですわね。とはいえこの森にまで戦火が来るのはとても面倒ですし、辺境貴族の力でも借りればいいのでは」
「もちろん」
あっやっとこっちを向いた。
別に僕を無視していたわけじゃなくて、ミリアさんとの語らいをしたかったのだろう。
堪能したのでこっちを向いてくれたらしい。
「で、結局どんな考えなんですの?」
「どんなって」
「………………まさかラックあなた、考えもなしに戦争が起きそうだからとりあえず現地いって話を聞いてみよう。って何も考えて無い。というんじゃないでしょうね」
まったくもってその通りだ。
ミリアさんからも移動中に何か考えておいた方がいいだろう。と言われて何十日もたったけど何も考えが思いつかないのだ。
「片方の意見じゃほら何もわからないし……。一応王子からは数年に一度王国に入るお金があったらしいんだけど、それの納付がないのでこのままいけば、約束通り領地没収だろうね。って笑顔で」
「じゃぁ簡単ですわね。払えば解決なんでしょう交渉したら終わりですわね」
そんな解決じゃないようなきもするなぁ。
「私もそういう腹芸は得意じゃないしな。第八騎士団はラックの決めた事に従おう」
「騎士団っても二名ですけど……」
これ以上頼りない騎士団もない。
ラックが望めば一般兵の募集も時期を見て募集しよう。って言ってくれているけど、どうせすぐ辞めるんだし募集してもね。
「隊長はラックだ。隊長といえば兵からみたら親よりも上。隊長が白と言ったら黒い物でも白になる」
「いやそれはちょっと無理やりな」
「極端な例」
「ママのほうが隊長みたいですわね」
そりゃ元隊長なんだから当たり前だよ。
「なに、これからラックにも責任感はつくだろう」
「それじゃまるで僕が責任感ないみたいな」
僕が冗談を言うとミリアさんが黙った。あれだけうるさかったクアッツルも黙ってしまった。
「じょ、冗談だよ?」
「…………そうだろう! 私もラックは責任あると思っていたよ」
「そうですわ! なんだかんだで面倒見いいですし」
取って付けた様なお世辞をいわれると悲しくなる。
「ご飯ができました!」
「…………ん」
リバーとナイが二人で料理を運んでくる。僕の顔を見るとリバーは不思議そうな顔をしてラック様? と訪ねてくる。
「あれ。顔が引きつってますけど何かありました?」
「なんでもないよ。それよりも料理ありがとう」
「リバーはメイドですから!」
よくわからないけどお礼を言う。
テーブルの上には簡単なスープをメインにパンなどが並べられた。それを皆で食べ今日はもうおしまいだ。
外は相変わらずの雨で今日はミリアさんの家で寝る事になる。
ここ数日は野宿していただけに天国だ。
「第一回チキチキラックラック様は誰と寝ましょうか選手権ーぱちぱちぱちぱち」
「はい?」
食事をおえ、フライドポテトを摘まんでいる最中にリバーが突然に宣言する。
「いや、適当に床で寝るけど?」
「む……ラックは私が使っていたベッドを使え。隊長だろ」
「いやいや隊長ですけど、ミリアさんの家ですし」
「そうですわ! ママのベッドはこのわたくしがママと一緒に使います!」
「……狭いだろ」
ミリアさんの突っ込みにクアッツルはそんな……と絶望的な顔をしだす。
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