083 混沌の精霊ケイオース様は素っ裸

 自称精霊様が僕の体に顔を擦り付けてくる。

 行為自体は犬猫みたいなんだけど、姿が少女……よりは上か、大人の女性姿なのでとても興奮……じゃなくて大変に困る。



「あの……」

「なんジャ?」



 僕の胸に顔をつけている精霊様は上目遣いに聞いてくる。

 



「涙を貰ったので帰ろうと思うのですが……」

「フム。ではシタクをしよう」



 なんの!?

 精霊の体がとても小さくなって、僕の肩に乗って来た。



「え? ええ!?」

「なんじゃ? はよあるケ」



 小さい精霊様は耳元で疑問の声をあげるけど、え。ついてくるのきなの? なんで??



「精霊様はついてくる気なんですか?」

「ほんとうは、マリョクがないとキエルが、オヌシからでているマリョクがとてもオイシイ」

「はぁ」

「どうせホンタイはここにもいる、ほれ」



 小さい精霊様が手を叩くと。大きい精霊様が湖から浮かんで来た。やっぱり何も着ていない。僕の横にいる小さい精霊様と同時に口を動かした。



「「どうじゃ」」

「す、すごいですね」

「「ナカミはツナガッテイルからな」」



 二人の声が同時に聞こえちょっと……かなりうるさい。



「あの、何てお呼びすれば……」

「「「「セイレイAでもセイレイBでもセイレイZまでいったらセイレイAにもどるんじゃよ」」」」」



 小さい精霊たちが順番に喋っていく。



「あの、よくわかりません……あと喋るのは近くにいるほうだけで聞こえます……」



 僕がこまると精霊様は不機嫌な顔になった。



「むかしはガッショウがうまい。とよろこぶニンゲンがいて……なまえかケイオースとよばれていたノウ」

「ではケイオース様……僕もう帰りたいです……帰ってもいいですよね」

「ヨビステにしろ、ムカシのニンゲンヲおもいだす」



 何て身勝手な人だ。

 いや人じゃないから身勝手な精霊だ。

 ともあれ先ほどのつぶれた精霊の液体は小瓶に移したので任務は終わった。

 後は外にいるリバーと合流して帰るだけ……「騎士団団長とかになりたくないなぁ……」そんな事を考えていると耳を引っ張られた。



「いっ!」

「オヌシくちにだしてうるさいぞ」

「ご、ごめんなさい……」

「そんなにイヤであればヤメレバいいだろう」



 それが出来たら一番良かったのに。

 もうみんな強引で僕の話聞いてくれないし。



「ついでに言うとケイオースの言葉も聞きにくい」



 顔の横に浮いているケイオースが突然とまったので僕も立ち止まる。凄い怖い顔をしていて僕をにらんでいた。



「なんで……!?」

「ブツブツとこれでもオヌシニあわせて!」

「また口に出してた!?」



 白と黒が混ざった光の球が出てくると僕の方へ飛んで来た。

 動物的本能というか受けたら不味い! 回避するのにも僕のマナアップは既に切れている。



「オールマナアップ!!」



 やけくそで叫んで両手を胸の部分に重ねて補助魔法を発動させた。まさに紙一重でかわすと、光球は壁を溶かして突き進んでいく。まさに飴細工のようだ、実際は見た事ないけど。



「かわしたカ」

「危ない……あれ」



 立ち眩みがして膝をついた。

 もしかして魔力がきれた? いままで沢山の補助魔法を使ったけど魔力が切れたことはない。

 と、言う事はいよいよ僕の存在価値すらも無くなってきたかもしれない。

 少し休むと立ち眩みもなおったので、なんだろう……って! ケイオースが僕の肩に捕まって長いストローなものを僕の体から何かを吸ってる。



「何してるのでしょうか」

「オヌシのまりょくをすってる」

「やめてえええ…………」

「ふたりブンすったのにゲンキじゃな」



 ケイオースの見た目が妊婦みたいにおなかっぽこりだ。虫みたいに増えないよね? やだよ、ケイオースが小さいケイオースをわらわらと産んで、父親のは僕とか……。



「魔力の吸われ過ぎで死なないよね?」

「フツウはシヌがオヌシはげんきそうじゃのう」



 本当に辞めて……ダンジョンの地上を目指し帰り道を進む。魔物が出ると僕より先にケイオースが魔法を放って倒していく。

 その度に僕のまりょくをチューチューと吸われて栄養剤になった気分だ。


 ケイオースの話を聞くと、僕は魔力の原石に見えたらしく原石から魔力を吸い続けるかぎり、ケイオースが外で動いても平気だろう。と、考えたらしい。

 吸うのは確定なのか、本来であれば地底湖の魔力から離れらなくそのうちに、枯れた野菜の様になって消えるとかなんとか。


 ワシはちていこからでれないのじゃ。


 そういうケイオースの悲しそうな顔を見ると、僕としても置いていく。と強く言えなくなって、せめて周りに迷惑かけないように。と提案するしかなかったのだ。



「ニンゲンのことはよくしシラン。がだ。シッパイしたらヤメレルのでわ」

「失敗……?」



 そう。ケイオースは話してくれた。

 何か仕事を受けて失敗すれば上も見限るしクビになるだろう。と片言のイントネーションで教えてくれた。



「それだ!」



 その方法でいこう。

 僕の名誉なんて別に要らないし、僕だけが失敗すれば周りにも迷惑はかからない。

 そして辺境で芋でも育てて暮らすんだ。

 芋って畑にまくだけで割と出来るって聞いたし。


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