第三部その後のラック達

082 騎士団長(予定)ラックは補助魔法しか使えない

 どうしてこうなったんだろう。

 僕はいまダンジョンの地下層に一人でいる。

 ダンジョンといえば魔物は当然いてゴブリンオークや巨大スライムなど、あと人食いコオロギとか。


 倒す事は出来るけど極力戦闘はしたなくない。

 そもそも僕は男なんだよ? なのになぜかアスカルラ騎士団第八部隊隊長になるために精霊の涙を取ってこい。とミリアさんにされた。


 



 あの、騎士団長になんてなりたくな――……最後まで言う前に馬車に押し込まれて、リバーが御者の代わりをして、気づけばダンジョンの中に放り込まれていた。


 さすがの僕でもダンジョンの中に押し込まれたらやるしかない。と覚悟を決めて一人潜っている所だ。

 現在は体感で地下18層。


 簡単な道筋をメモ帳に書き込みながらの移動。



「疲れた……ええっとオールマナアップ全体魔力アップ



 疲労が少しだけ取れていく。

 絶対これ早死にするよね、別に長生き願望はないけど突然死だけは避けたい。

 せめて結婚して可愛い奥さんに認められながらとか希望するけど、高望みな夢で現実にもどされる。



「っと……鉄の扉だ。お、重い……また魔法を唱えるしかないのか……アームマナアップ腕力魔力アップ…………」



 もう今日は7度目の魔法を唱えて鉄の扉を開ける。

 下り階段が整備されていて地下19層への道だ。


 一人分しか通れない道をゆっくりと下っていく。

 地下というのに昼間の様な明るさが道の奥からこぼれて来た。

 慎重にゆっくりと下ると大きな地底湖が目の前に現れた、光は地底湖全体が光っているようだ。



「すごい……でもあれ……どこかで見たような景色だ。

 ああっ! パトラさんの所で見た地底湖に似ているんだ……」



 僕が独り言をいうと地底湖から光の球体が何百も浮いては消えていくのが見えた。大きさは手の平ぐらいで、よくみるとその光の中に羽の生えた人っぽいのが見え隠れする。


 最初は黙ってみていたけど、慌てて視線をそらした。

 だって羽の生えた人っぽい姿は何も着ていなく女性型ですぐわったから。



「ニンゲンだー」「ニンゲンだー!」「ニンゲンよー」「ドウテイだー」「ヤリオだー」



 僕の周りにいくつもの精霊? が飛んでくるとうるさいほど喋り掛けてくる。ってかちょっと変な事いってる個体いるけど。大丈夫かな。



「ええっと精霊だよね? 精霊の涙ってのが欲しいんだけど……何か知ってる事とか教えて貰ったり……できないかなぁ……」



 そもそも言葉が通じるのか不明なんだけど、何となく言ってる事わかるし聞いてみる。

 聞いた瞬間精霊? 達が一斉に湖へと消えていく。

 なんで……?


 湖へ近寄って覗き込むと綺麗な女の人が湖から逆に覗き込んでいた。思わず驚いて顔をあげると湖から女性が現れる。



「ふあっ!」

「ん?」



 僕は慌てて下を向く。

 先ほどの小さい精霊ではなくて等身大の女性なのだ。肌は白く耳は長い。エルフに近い姿なんだけどそれよりも何も着てない。



「ほれ? こっちをむかんカ? いやむケ? だったかのウ」

「ええっと、精霊様でしょうか?」

「いかにモ」

「それでしたらあの精霊の涙をください」

「……………………ふむ。それよりもなゼ。したをむク?」



 なぜって言われても、裸の精霊様は人と変わらないからだ。

 丁度目の高さにつるつるの見ては駄目なのがみえるんだ。

 いや、見えたんだ……。



「ええっと裸なもので……」

「はだか……はだかか! ぷっはっはっはっはニンゲンごときがセイレイにヨクジョウするとカ。セイレイがニンゲンニヨクジョウしないのと……いやレイガイはあったな……まぁいい。フクとやらをキレバいいのだろう? きたゾ」



 イントネーションがおかしい精霊様が服を着た。というので僕は前を向いた。


 水の上に僕と同じぐらいの背の女の子が立っている。服は白い布をまとっており見えそうで見えない。

 いや、見えたらダメなんだけど……これはこれで。



「おぬし、おうこくのモノカ?」

「え。一応はい。成りたくもない騎士団の隊長になるために入りたくもないダンジョンに入って、精霊の涙を探しています……」

「ナンジャソリャ」



 僕は精霊様に簡単に説明すると、精霊様はお腹の部分を押さえて笑っている。



「あいかわらず、ニンゲンはへんだのう……まぁいい涙だったなテをだセ」

「あっはい」



 手をおわん型にして差し出すと、精霊様は僕の手の上に小さい精霊をだした。


 小さくてかわいい。



「フン!」



 精霊様が気合の声とともに小さい精霊を両手で挟むように叩く。体が潰れ頭だけ残った精霊が僕の手の上にころがり液体になる。

 精霊様の手が開くと体の合った部分も液体になり僕の手に落ちて来た。



「ぐろい……」

「オヌシがほしいといったんじゃろ?」

「ええっと、これだったら要らなかったです。はい……つぶれた子ごめん……」

「キニスルナ。ゼンブわしでキオクもナニもかもつながっておるかラ。まったんはイシキしないとあやつれないがナ」



 それはそれで同一個体と言うのかは、どうなんだろう?

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